色、いろいろの七十二候

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黄鶯睍睆・梅に鶯

梅にうぐいす
こよみの色
立春
薄香色うすこういろ #F0CFA0
・生薬や香辛料として、またかぐわしい香りのする香木の丁字を染料に用いた色の一つ。香という染色名は、香料で染めたことに由来しており、平安時代は香を大切にしたので、香色は愛用され、文学にもたびたび登場しました。香木で染めた生成り色の微かな色味は、どこからともなく漂う丁子(ちょうじ)の香りのよう。
黄鶯睍睆
卵色たまごいろ#FCD575
・玉子色とも書きます。鶏卵の黄身のような少し赤みを帯びた黄色のこと。江戸時代前期から染色の色として用いられるようになり、中期ごろに着物の色として流行した。また、鶏卵の殻の色で、やや茶色みがかった白をいう場合もあるが、それは「鳥の子色」という。

立春大吉。二十四節気は立春から新年を迎えます。
春夏秋冬、という言葉があるように、春は一年の一番最初に訪れる季節です。

二十四節気は、一年を二十四にわけ、さらにそれぞれを三つに分けることで七十二候を構成し、日々のゆるやかな、それでも確実に変化していく移ろいを表現しています。

これとは別に、一年に咲く花を元にした花暦というものがあります。
花暦では、1月から順に、松、梅、桜、藤、菖蒲、牡丹、萩、芒、菊、紅葉、柳、桐をそれぞれの月に割り当てています。

これが成立したのは江戸時代だといわれています。もともと中国から入ってきた花暦ですが、さすがに日本のそれとはずいぶん違っていて、日本独自の花による季節感が表現されるようになりました。

今では「花」というと桜を想像する人が多いのではないでしょうか。しかし、日本では、古くは「花」というと梅を指していました。冬を乗り越え百花に先駆けて咲くことから、季節の移ろいを表現する花として象徴的だったようです。
万葉集で最も多く詠まれている花は萩で、2番目に梅が続いています(萩もまた、秋を代表する花であります)。

さて、同じ万葉集で詠まれている鳥は、1番多いのが霍公鳥(ホトトギス)、ついで雁、3番目に鴬が入っています。

さて、ここまで読んで気がついた方もいらっしゃるでしょう。今出てきた植物と鳥は、すべて花札の絵柄に用いられているものです。
「梅に鶯」「藤に不如帰(ホトトギス)」「芒に雁」は、みな花札の種札です。花札の絵柄はみな花暦の花からできています。種札はこの他にも「柳に燕」「牡丹に蝶」「紅葉に鹿」「萩に猪」といったとりあわせが並びます。

鴬は藪の中に潜んでいることが多く、梅の木にとまっている小鳥を見かけて、「おっ、梅に鶯」と思っても、実際はメジロだった、ということが度々あります。この影響か、メジロと鴬はしばしば間違われるようです。でもなぜ、「梅にメジロ」ではなく「梅に鴬」なのでしょうか。花札の他の種札にそのヒントがあります。

「柳に燕」も「牡丹に蝶」も「紅葉に鹿」も、それぞれが、そのときどきを代表する花であり、生きものです。しかし、決して一対一の関係ではありません。季節をあらわす代表的なものを組み合わせてみた、というとりあわせです。「梅に鶯」も同じで、決して生態をあらわした言葉ではなく、春という季節を表現したとりあわせだということです。

「鶯宿梅」という故事があります。紀貫之の娘の屋敷の梅の木が、天皇家に召し上げられたときの話です。その枝には文が結び付けられていて、そこには「勅なればいともかしこしうぐひすの宿はと問はばいかが答へむ」という歌が記されていました。勅命ですから献上しますが、宿にしていた鴬が、梅はどこにいったと聞いてきたらなんと答えたらいいのでしょう、といったその歌を見た天皇は、梅を元の屋敷に戻したといわれています。

現代的に考えると、鴬は一般的に藪の中をナワバリにしていて、梅の木を宿にする、というならメジロかもしれない、これは間違っている、なんて指摘してしまいそうですが、春の象徴である梅と鴬を引き離すとは何事でしょうか、という訴えと、それを受けてみなが納得行く解決をはかったと考えれば、なんとも風流ではありませんか。

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2014年02月04日 の過去記事より再掲載)