色、いろいろの七十二候

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東風解凍・梅東風

梅東風
こよみの色
立春
薄香色うすこういろ #F0CFA0
・生薬や香辛料として、またかぐわしい香りのする香木の丁字を染料に用いた色の一つ。香という染色名は、香料で染めたことに由来しており、平安時代は香を大切にしたので、香色は愛用され、文学にもたびたび登場しました。香木で染めた生成り色の微かな色味は、どこからともなく漂う丁子(ちょうじ)の香りのよう。
東風解凍
菜の花色なのはないろ#FFEC47
・油菜(あぶらな)の花色のような、明るく鮮やかな黄色のこと。別に『菜種色(なたねいろ)』とも呼ばれましたが、菜種油の色にちなんだ『菜種油色(なたねあぶらいろ)』も『菜種色』と呼ばれていたため、混乱を避けて『菜の花色』と呼ばれるようになったようです。

立春といわれても、まだ冬の寒さ。けれど、日脚を見ると一日一日伸びていて、木々を見ると芽吹いていて、なるほど立春なのだ、春は立っているのだと思います。
『暦便覧』によると、「春の気立つを以って也」と記されています。中国の立春とは異なりますが、立春は、八十八夜、二百十日、二百二十日など、日本独自の雑節の起算日になっていて、その意味では日本的といえるのかも知れません。

春立つや誰も人より先に起き  鬼貫(おにつら)
ちぐはぐの下駄から春は立ちにけり  一茶
さざ波は立春の譜をひろげたり  渡辺水巴(すいは)

立春の前日は節分で、豆撒きを行います。「節分」も「豆撒き」も冬の季語です。
豆撒きでは、撒いた豆を自分の年齢(数え年)の数だけ食べました。年取豆です。豆を鬼にぶつけるのは「魔滅」に通じ、邪気を追い払う意味合いがあるそうですが、「鬼は外、福は内」という掛け声は、地域によっては「鬼も内(鬼は内)」というところもあるそうです。「鬼塚」、「鬼頭」など、「鬼」の付く苗字の家とか、鬼が付く地名の地域では「鬼は内」というそうです。

年かくすやりてが豆を奪ひけり  几菫(きとう)
あたたかく炒られて嬉し年の豆  虚子(きょし)


立春と並んで「寒明」という季語があります。寒明は立春そのものですが、耐えてきた寒さを振り返るとき、この安堵の季語を用いたくなるのでしょう。

川波の手がひらひらと寒明くる  飯田蛇笏(だこつ)

立春が明けると、「早春」と「春浅し」という季語が出てきます。立春といいながら、すぐに早春といい、春浅しと詠むのです。早春は、どちらかというと明るく響きますが、春浅しという季語には、どこか屈託の感情があるように思います。

病牀(びょうしょう)の匂袋や浅き春  正岡子規
それ以来誰にも逢はず春浅し  鈴木花蓑(はなみの)
文/小池一三

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2012年02月04日 の過去記事より再掲載)