色、いろいろの七十二候

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水沢腹堅・豆まき

豆まき
こよみの色
大寒
梅鼠うめねずみ #C099A0
・赤みがかった薄い鼠色。鼠色は江戸初期、火事や火葬を連想する灰色を嫌い生まれた。奢侈(しゃし)禁止令によって染色の色が茶色系統、鼠色系統、紺色系統などに制限されたなかで、微妙な色の違いを生み出し、当時の人々はそれを着物にして楽しんだそうです。梅の特産地「豊後」にちなみ『豊後鼠』といわれることもあります。

※奢侈禁止令(しゃしきんしれい)または奢侈禁止法という。贅沢(奢侈)を禁止して倹約を推奨・強制するための法令および命令の一群。
水沢腹堅
熨斗目色のしめいろ#175B66
・織物の小袖のひとつである熨斗目(のしめ)※2に用いられたやや灰みの濃い鈍い青色。熨斗目の地染めが藍染であったので、熨斗目色は藍色の系統に分類されました。また江戸時代に士分以上の者の礼服として、縞や格子を織り出したものを熨斗目模様と呼ばれました。市川團十郎の役者色である舛花色(ますはないろ)は、この色から派生したと言われています。

※2:模様が着物全体に絵のように描かれている着物を、絵羽模様と呼び、絵羽模様の一つに熨斗目柄があります。着物の裾に模様が横段につながって描かれ、元来は、武士が着用した小袖の柄で、室町時代に始まったといわれています。それ以外に、能装束では、熨斗目は男役の衣装で、武人、僧侶、に用いられます。

節分のルーツは、中国から渡来した「追儺式(ついなしき)」と言われています。
さまざまな災厄を鬼に見立てて追い払うため、「鬼やらい」とも言われます。

「妖怪ウォッチ」の流行で、最近の子どもたちの間では、寝坊するのも、ピーマンが食べられないのも、イケメンなのに振られたのも、その他いろいろ、困ったことは、みんな「妖怪のせい」です。

昔から、不可思議な出来事には「天狗じゃ、天狗の仕業じゃ」なんていう話もありましたけど、本当に不可思議なことと、言い訳に使うのとではずいぶん違います。

「鬼」も、不可思議な現象、特に災いのもととして扱われてきました。鬼の語源は「(おぬ)」であるという説があります。まさに、目に見えないものを指していたわけです。

かつては伝染病や不漁不作・飢饉などの災厄の科学的な原因解明は出来ませんでした。これらを鬼の仕業と考え、節分に鬼を祓う、というのは、言ってみれば神頼みだったわけです。

豆は「魔滅(まめ)」であり、その音で鬼を追い払うともいわれています。
節分には、柊や鰯を玄関に飾ります。柊の棘や鰯の臭いも鬼が苦手なものだ、とされています。

伝染病などの災厄の理由は、科学的には解明されてきています。だからといって、災いがなくなったわけではありません。科学技術の発達による災厄の可能性も指摘されています。

「人類が絶滅する6のシナリオ(フレッド・グテル著 夏目大翻訳 河出書房新社) 」では、人類絶滅の可能性として、「スーパーウイルス」「大絶滅」「気候変動」「生態系の崩壊」「バイオテロ」「コンピュータの暴走」をあげています。
気候変動や生態系の崩壊が人間の活動によるものだ、ということは多くの人が知っています。中国では、酸性雨のことを「空中鬼」と呼びます。pm2.5も問題になっています。これらは皆、経済活動の結果招いたものです。

西アフリカでの感染が拡大するエボラ出血熱などのウイルスや、生物兵器を用いたバイオテロなどに、現代社会はさほど有用な対抗策を持っていません。コンピュータがおかしくなれば、この文章だってみられない、どころか、社会インフラが麻痺してしまいます。

現代の鬼は、豆をまいても柊を掲げても追い払えるわけではありません。科学技術でおかしくなったものは、副作用を出しながらも科学技術で乗り越えていくことが続くのでしょう。

怖い話は嫌われます。「鬼は外」より「福は内」が好かれる時代です。

すっかり定着した感のある恵方巻は、その名の通り、「鬼は外」よりも「福は内」がテーマです。
このところ売り出し中の「節分そば」は、翌日の立春からが新しい1年ということで、「年越しそば」の本流である、という主張をしています。恵方ロールケーキ、なんていうものも売られています。節分も、だんだんバレンタインデー化していくのでしょうか。

まわりは「福」の商品で溢れ、科学技術も発達し、鬼なんかもういない、と思いがちですが、そんなことはありません。
鬼は極めて身近なところにいます(誰ですか、配偶者を想像しているのは)。

豆とりて我も心の鬼うたん  志太野坡

暦の上では冬が終わり、春がやってきます。心の鬼をうって、立春大吉といきましょう。

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2015年01月20日 の過去記事より再掲載)