びおの珠玉記事

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シシャモ・バター

ししゃも

ししゃも

本州の居酒屋で、たまに「シシャモのバター焼き」、というメニューを見かけます。
シシャモの旬を調べると、11月ごろから、とされています。けれど、居酒屋のシシャモは、大抵は、ここでいうシシャモではありません。

スーパーマーケットなどで売られているシシャモは、よくみると「カラフトシシャモ」「キャペリン(カペリン)」などと書かれています。

キャペリン

キャペリン


元々、北海道で獲れるシシャモは、アイヌ語で「シュシュハム」といいました。シュシュは柳、葉はハムで、柳葉。シシャモを漢字で書くと柳葉魚で、アイヌ語由来の当て字です。

けれど、この柳葉魚は、あまり流通していません。ちょっといい居酒屋などにいくと置いてありますが、その場合は子持ちではなくて雄であることが多くて、この点もカラフトシシャモとは違います。
カラフトシシャモの輸入が年間2万トンぐらい、対するシシャモの水揚げが2000トン以下程度ということで、出回っている量は圧倒的にカラフトシシャモのほうが多いのです。

いまは、JAS法の改訂で、原材料にはカラフトシシャモ(キャペリン)という表示が義務付けられていますから、スーパーで売られているものは確認が出来ます(そもそも、スーパーに国産シシャモはそうそう出回っていませんが)。それでも、パッケージにかかれた「カラフトシシャモ」の「カラフト」の文字だけが少し小さかったりして、キャペリンのアイデンティティはどこに…。

さて、本題もうひとつのバター。近年は、バターが品薄になることが度々ありましたが、2014年は特に状況がよくありません。

スーパーマーケットに行ってもバターの棚は空っぽです。
これまでも、バター不足による海外からの緊急輸入は行われてきましたが、これが複数回行われたのは今年が初めてです。

バターはさっぱり売られていませんが、マーガリンなど、バターっぽいものはたくさん並んでいます。マーガリンはもともとバターの代用品として生まれたものです。当初は動物性油脂と牛乳を混ぜてつくられましたが、現在のマーガリンは植物性油脂でつくられています。

マーガリン

マーガリン


日本では、バターは乳脂肪分80%以上で水分17%以下、マーガリンは油脂含有率80%以上で水分17%以下、とされています。バターは「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」で、マーガリンはJASでそれぞれ定められています。

JASの定義では、マーガリンは

食用油脂(乳脂肪を含まないもの又は乳脂肪を主原料としないものに限る。以下同じ。)に水等を加えて乳化した後、急冷練り合わせをし、又は急冷練り合わせをしないでつくられた可塑性のもの又は流動状のものであって、油脂含有率(食用油脂の製品に占める重量の割合をいう。以下同じ。)が80%以上のものをいう。

とされています。80%以上が油脂、という点ではバターに似ています。

さて、バターの品薄を差し引いても、お店に行けば、品数はマーガリンが圧倒的です。じゃあマーガリンが市場を席捲したのね、というのは早計です。
マーガリンっぽいものの名称をよくみると「ファットスプレッド」というものが、けっこうあります。

ファットスプレッドは、脂肪分が80%未満のマーガリン的なもの。バターもマーガリンも、脂肪分の量自体は似たようなものなので、カロリーも大差ありません。カロリーがより少ないものを、ということで、脂肪の少ないファットスプレッドが人気を集めているようです。

そうすると、脂肪のかわりには何が入っているんでしょうね? ファットスプレッドのJAS規格では、

次に掲げるものであつて、油脂含有率が80%未満のものをいう。

1 食用油脂に水等を加えて乳化した後、急冷練り合わせをし、又は急冷練り合わせをしないでつくられた可塑性のもの又は流動状のもの。

2 食用油脂に水等を加えて乳化した後、果実及び果実の加工品、チョコレート、ナッツ類のペースト等の風味原料を加えて急冷練り合わせをしてつくられた可塑性のものであって、風味原料の原材料に占める重量の割合が油脂含有率を下回るもの。ただし、チョコレートを加えたものにあっては、カカオ分が2.5%未満であって、かつ、ココアバターが2%未満のものに限る。

ようするに、アブラ少なめ、いろいろ混ぜて良い、と。

実際に売り場で売られているものは、マーガリンよりも、ファットスプレッドが大勢を占めています。

カロリーで比較すると、有塩バター100gあたり745kcalに対して、マーガリンは758kcal、ファットスプレッドは631kcalとされています(日本食品標準成分表2010)。

バターは高カロリー、マーガリンは低カロリー、と思い込んでいた人にはショックな数値かもしれませんが、脂肪分の割合がどちらも80%以上ですから、同じようなものです。カロリー控えめ、ということでファットスプレッドが人気を集めているわけですが、このぐらいの差だったら、使用量を少し減らせばバターもマーガリンも大差はありません。

ファットスプレッドの中には、「バター」という言葉がパッケージに踊っているものも見られます。まるで「カラフト」の文字が小さいシシャモのように。パッケージの表面から「ファットスプレッド」の言葉を探すのは困難です。

味も違うし嗜好も違います。もともとは代用品だったとしても、いまはそれぞれのポジションがあります。バターがよくてファットスプレッドがダメ、と決め付けはしません。
ただ、結局それでも、代用品のモトネタに見せかけるようなやり方は、あまり気持ちのいいやり方ではありません。

バターには360%の関税がかけられています。重要5品目に含まれているバターですが、TPPの行方によっては酪農家は死活問題で、すでにそれを見越して転業する人が出ていることも、バター不足の一因といわれています。

関税がなくなったバターに国産バターが駆逐される、という声もあります。業務用ではその可能性は大きいですが、食卓に目を向けると、安い外国産バターよりもさらに安い、謎の加工食品が生まれてくるのでは、という予想も出来ます。

くりかえしますが、それ自体も決して悪いことではありません。問題は、オリジナルのように見せかけてニセモノである、ということです。

すでに片方が代用品になっている「シシャモのバター焼き」が、シシャモもバターも代用品、なんて、どうにも笑えません。
生活と軍事になぞらえて「バターか大砲か」なんていう言葉もあります。ますます笑えません。
バター

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2014年11月17日の過去記事より再掲載)