色、いろいろの七十二候

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地始凍・子どもは風の子

寒くても暗くなってきても遊びたい子供
こよみの色
立冬
黄蘗色きはだいろ #FEF263
・ミカン科のキハダの樹皮で染めた、鮮やかな黄色。その歴史は奈良時代に遡る色。
地始凍
藁色わらいろ #D5C752
・乾燥させた稲わらのやさしいくすんだ黄色。似た色に英名のストローイエローから明治以降に訳された麦藁色がある。

立冬です。暦の上では冬を迎えました。
「冬の気立ち始めて、いよいよ冷ゆれば也」と暦便覧にあります。冬の訪れを告げる木枯し一号が吹くのもちょうどこの頃で、ああ、なんと今年の秋も短かったことでしょうか。

「子どもは風の子」という言葉があります。
寒くても、子どもは元気に遊ぶものだ、ということわざです。
子どもの頃は、こういって家から追い出されることがままあったように思います。

この言葉、後に「大人は火の子」と続きます。
大人は火の子だから火にあたるのだ、子どもは風の子だから風にあたってこい、ということでしょうか。

子どもと大人、どっちが寒さに強い?

実際のところは、子どもと大人でどちらが寒さに強いのでしょうか。単純に、体積(≒体重)と表面積(≒皮膚の面積)の関係だけをみると、子どもは大人よりも体積あたりの表面積が大きくなります。
熱は表面から周囲へ逃げていきます。このため、子どものほうが外部に熱を奪われやすい、ということになりますから、これだけを見ると、子どものほうが寒さに弱い、という結果になってしまいます。

ところで、人と太陽を、それぞれ重さ1kgあたりの発熱量で比べると、人のほうがずっと大きい、という計算があります。

成人男性の基礎代謝量は1日あたり1500kcal程度です。幼児〜小学校低学年あたりだと、個人差は大きいですが1000kcal程度になります。基礎代謝量自体は子どものほうが小さくなりますが、体重は成人男性を65kgとすると、このぐらいの子どもはせいぜい20数kgと、半分にも満たない体重です。
そうなると、1kgあたりの代謝量(≒発熱量)は、子どものほうがずっと大きいことになります。

基礎代謝量は、運動などをせずにじっとしていても使われるエネルギーの量です。子どもは、成長のために体内の反応が活発になりますから、どうしても基礎代謝量が増えるのでしょう。
体重あたりの基礎代謝量は、若いほど大きく、年齢を重ねるに連れて減っていきます。

子どもの基礎代謝量は大きいが、表面積からの熱損失も多い。家に例えると、暖房のために火をどんどん炊いているけど、外皮面積が多くて熱が逃げやすい、つまり燃費が悪い、ということになってしまいます。
そう考えると、子どもは寒さに弱そうですよね。

しかし、代謝は基礎代謝だけではありません。
そう、体を動かせば、それに応じて代謝量が増えるのです。子どもは風の子元気な子、とばかりにはしゃいで遊ぶことが、熱を生み出して寒さを吹き飛ばすことになるのでしょう。

当の子どもがそんなことを考えている由もなく、結局のところ、冬でも外でいつまでも遊ぶのは、やっぱり楽しいから、ということに尽きるでしょう。大人だって、楽しいことがあれば寝食を忘れることもあるじゃありませんか。

子どもは個室に閉じ込められている

一方で、最近の子どもは本当に風の子か? というお話。

第一生命が2008年に行った全国調査では、小学生の放課後の過ごし方として一番頻度が高いのが「自宅で勉強をする」でした。
公園や広場などで外遊びをする、という項目に「まったくない」との回答が15%。
ほとんど毎日外遊びをする、という回答は11.8%でした。

回答を見ると、一人でテレビやビデオ、ゲームや読書をして過ごす、という言葉が上位に来ています。「勉強」もあわせて、子どもは家の中で一人で過ごしている、という状況が浮き彫りです。

建築家の郡裕美さんは、書籍『リンゴのような家』で、「子どもを個室に閉じこめない提案」をうたっています。

日本建築は、もともと可動式の建具や土間、縁側といったものを介して、外と内とが柔らかくつながる仕組みになっていました。そもそも家自体が、可変的なつながり方をもっていたのです。
ところが現代の家は、内と外が明確に仕切られた上に、さらに子ども室さえも、壁とドアに囲まれ、外界から縁を切られています。子ども室には「勉強する」「遊ぶ」「寝る」というたくさんの機能が押し込められていることで、子どもたちを個室に引きこもることを強いているのでは、というのです。

「子どもは風の子」という言葉は、江戸時代には使われていた記録が残っています。江戸時代の家には子ども室などありません。
かつて一世を風靡したミサワホームのO型プラン(1976年発売)は、中玄関で空間は分断され、子どもは親と顔を合わすことなく玄関から自室へ入ることが出来るプランでした。日本の家は、ながらくそうした状況がつづくことになります。

「リンゴのような家」のご案内

書籍「リンゴのような家」は、こうした家を「ブドウの家」と呼び、そしてリンゴのようにみずみずしい家をつくりましょう、と呼びかけています。
ここで取り上げた郡さんの話の他、O型プランとブドウの家のこと、暑さ、寒さの感じ方など、おいしい家のヒントが詰まっています。

本の編集にあたったのは、町の工務店ネット+チームおひさま。発行は新建新聞社です。

この連載を担当してくださっている祖父江ヒロコさんのイラストが、表紙をはじめ各所に配され、ビジュアルも豊かでありながら、住まいの論を語りあげた本です。

リンゴのような家

書籍『リンゴのような家』

帯には、環境ジャーナリストの枝廣淳子さんの推薦文と祖父江さんのイラスト。
リンゴのような家帯

ぜひ「目からウロコ。ワクワクする本。」をご体験ください!

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2013年11月07日の過去記事より再掲載)