「ていねいな暮らし」カタログ

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耳を澄ますように読む——
『Subsequence』

今回紹介する『Subsequence』は、2019年の3月に創刊し、今月2号の発行がお知らせされています。私は、フォローしている本屋さんのInstagram投稿で『Subsequence』のことを知りました。ウォーホルが作っていた雑誌『Interview』を彷彿とさせる大判の作りにピンク色の表紙、そしてテーマに掲げられる「Arts & Crafts for the Age of Eclectic」(意味は「”折衷”時代のアーツ&クラフツ」と公式ウェブサイトで説明されています)、しかも、編集長は井出幸亮氏ときましたから、読まないわけにはいきません。

井出氏については、この連載の中でも第4回で引用しましたように、「ライフスタイルブーム」に関する文章も発表されていまして、『Ku:nel』のような暮らし系雑誌が社会にどのように必要とされ、どのような文化を引っ張ってきたと考えられるのかについて、工芸の観点から説明されています。21世紀あたりを境に、工芸が雑貨的にも扱われていくことについて、消費や記号といった言葉で説明されます。そんな編集長が作る本誌は、「創造的な人生」や「文化的な暮らし」を営んでいる世界各地の人たちに「話を聴きに行く」スタンスをとっており、その多くは地形的な意味での「僻地」や忘れられてしまいそうな文化的記憶をテーマにしています。読んでいると、その文化に辿り着くまでのさまざまな「時間」について考えがめぐります。

ニューメキシコの陶芸文化、青竹染め、1990年代の上海写真、アイヌの木彫を継承した方の話…。それぞれの暮らしをかみ砕いていくと、その人個人のルーツであったり、その土地の風土であったりといった「空気」のようにまとわりつくものにいきつきます。大判サイズにしては細かい文字(最近のカルチャー誌の傾向でしょうか)で書き取られる文章は、目を凝らして読む=耳を澄ますことを強いられるかのようで、雑誌の構造的にも内容的にもそれぞれのページへの没入感が与えられる感じがあります。

本誌の特徴として、大判であることがまず出てくると思うのですが(260 × 372mm 164ページ!)、持ち運んでも重くならない軽くてザラザラした紙が使われており、カラーの写真もふんだんに使われているので、ページをめくったり戻ったりするのが楽しく感じられます。衣服を扱うブランドから出されているということもあってか、服飾用のミシンを使って1冊ずつ製本されているとのこと。次号も楽しみな一冊です。

(1) 井出氏による最新の「工芸」論考は、『工芸批評』に収録されています。井出幸亮「雑貨化とシュンカンシ」『工芸批評』pp.24-27 https://shop.kogei-seika.jp/products/detail.php?product_id=293

著者について

阿部純

阿部純あべ・じゅん
1982年東京生まれ。福山大学人間文化学部メディア・映像学科准教授。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。専門はメディア文化史。研究対象は、墓に始まり、いまは各地のzineをあさりながらのライフスタイル研究を進める。共著に『現代メディア・イベント論―パブリック・ビューイングからゲーム実況まで』、『文化人とは何か?』など。地元尾道では『AIR zine』という小さな冊子を発行。

連載について

阿部さんは以前、メディア論の視点からお墓について研究していたそうです。そこへ、仕事の都合で東京から尾道へ引っ越した頃から、自身の暮らしぶりや、地域ごとに「ていねいな暮らし」を伝える「地域文化誌」に関心をもつようになったと言います。たしかに、巷で見かける大手の雑誌も、地方で見かける小さな冊子でも、同じようなイメージの暮らしが伝えらえています。それはなぜでしょう。そんな疑問に阿部さんは“ていねいに”向き合っています。