色、いろいろの七十二候

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霎時施・ニンジン

にんじんがおいしくなってきました
こよみの色
霜降
鶸色ひわいろ #D7CF3A
・鶸の羽毛の色を模した、緑みの黄色を代表する色名。このやや強い緑が、鶸萌黄(ひわもえぎ)
霎時施
濃紫こむらさき #3E214C
・濃い紫色。コムラサキの実の色に似ていることから、いつからか「小紫」という名に変化し定着するようになった。

ニンジンは、もともと中央アジアの原産で、西廻りにヨーロッパを経由して渡来した西洋ニンジンと、中国経由の東洋ニンジンがあります。

通年市場に出回っていて、よく見かけるのは西洋ニンジンです。
おせち料理につかう金時ニンジンは東洋ニンジンで、西洋は太めで短いもの、東洋は細長いのが特徴です。

おせちの時期になると見かけるようになる東洋ニンジンに対して、西洋ニンジンは一年中いつでも売られています。

いつでも手に入るニンジンですが、秋から冬にかけてがおいしくなるといわれています。
どうしてこの時期においしさが増すのでしょうか。

野菜は、その多くが水分で構成されています。ニンジンは水分が少なそうに思えるかもしれませんが、それでも89.5%が水分です。水分は冬場に気温が下がると、凍結のおそれがあります。

凍結を防ぐために、糖分を増やして、結果甘味が増すようです。ニンジンに限らず、ハクサイやダイコン、ホウレンソウといった野菜も、寒い時期には甘味が増すことが知られています。

そういう点では、冬ニンジンのほうが甘味がある、ということになりそうですが、秋ニンジンは主に北海道産のものが出まわり、冬ニンジンは本州産が出回る、というように、産地によって旬が違います。秋から冬がニンジンの旬、といっていいでしょう。

果物や木の実は、美味しくなることで、鳥や獣、人間に食べられて種子をあちこちに運んでもらう、という繁殖戦略を持っています。

これがニンジンのような根菜となると、どうでしょうか。
ニンジンはセリ科の植物で、収穫しないでおくと(いわゆる(とう)が立つ、という状態ですが)、かわいい白い花が咲きます。この花に虫を集めて繁殖する虫媒花です。

花がつくまえに、根を食べられてしまう、というのではたまったものではありません。けれど、ニンジンは絶滅することなく、世界中に分布を広げています。人間という媒介者を通して。

人は植物を支配しているようでいて、実は世界に植物が広がる手伝いをしてきたことになります。
人が農耕をはじめることも、植物の生存戦略に入っていたとしたら驚きです。

園芸作物とはいえ、旬の野菜がおいしい、というのは自然の恵みに他ならず、旬を通じて、私たち人間自身も、やっぱり自然の一部であると実感します。

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2014年10月23日の過去記事より再掲載)