びおの珠玉記事

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星を眺める

星空と草原

星空を見上げる、星座を探す、ということを最後にしたのはいつですか?

都市部では特に、星空というもの自体が失われていると言ってもいいかもしれません。仕事や生活に忙殺されて、星空を眺める、という余裕がなくなっている人もいるかもしれません。
秋は、夏に比べて星の数こそ少ないものの、暑くなく寒すぎず、落ち着いた星空をゆっくりみるのにとてもいい季節です。
ちょっと夜更かしして、星を眺めてみませんか。

秋の日は釣瓶(つるべ)()とし

「秋の夜長」「秋の日は釣瓶落とし」とは、古くから言われている言葉ですが、実際に夜が一番長いのは冬至です。夏の間は陽が落ちるのが遅かったのに、秋分を過ぎて冬至に到るまで、日に日に夜が長くなっていきます。この急激な変化を釣瓶落としに例え、また冬よりも実際には短い秋の夜を「秋の夜長」と表現しているのでしょう。
夜が長くなるのも、四季があるのも、太陽の周りを回っている地球の地軸が傾いているからです。地軸の傾きによって太陽高度が変わり、昼と夜の長さに違いが出ます。温度の違いから気圧の変化が生じ、季節ごとに異なった風や雨などの現象が起こります。
風流を感じる秋の夜も、星々の関係によって生まれているわけですね。

参考:太陽の誕生日・冬至 http://www.bionet.jp/2018/12/28/touji/

基本的なおさらい

恒星

夜空に輝く星のほとんど、星座を構成している星はすべて「恒星」です。恒星は自身が光を発する星で、太陽系では太陽が唯一の恒星です(写真は太陽)。

太陽

月は自ら光を発しませんが、太陽の光を反射して輝いています。他の星に比べ、地球からの距離が圧倒的に近いため、夜空でもひときわ大きく見えます。月はおよそ1ヶ月で満ち欠けすることから、暦のなりたちに大きな影響を及ぼしました。

月

惑星

金星、火星、木星などの太陽系の惑星は、自ら光を発することはありませんが、月と同じように太陽の光を反射しているのをみることが出来ます。

2010年10月28日は、金星の内合の日。

金星

金星は地球の内側をまわっている太陽系の惑星です。「明けの明星」「宵の明星」の別名を持ち、朝夕の、漆黒ではない空にも確認できるほど明るく輝く星です。
金星も地球と同様に太陽の周りを公転しています。公転周期は地球と異なりますが、実は2010年10月28日は、金星と地球にとってはちょっと特別な日でした。
内合(ないごう)といって、地球から見て、金星と太陽が同じ方向に並びます。金星が地球に一番近くなる日でもあります。
今回の内合は太陽との方向だけが一致しますが、次回の内合は2012年6月6日で、この日は南北方向も一致して、本当に一直線にならぶ「日面通過」が起こります。「日面通過」とは、日食の金星版ですが、金星は月に比べると地球との距離が遠いために見かけの大きさが小さく、太陽の表面を小さな円(金星)通過していくために「日面通過」と呼ばれています。前回は2004年にありましたが、そうそうあるものではなく、2012年の次の日面通過は2117年です。現実的には、2012年がラストチャンスです。

星座の由来

秋の代表的な星座・ペガスス座はギリシア神話に由来するものです。ペガスス座に隣接するアンドロメダ座やカシオペヤ座、オリオン座など、星座にはギリシア神話から命名されたものが少なくありません。
現在使われている88の星座の名称は、1930年に国際天文学連合により定められました。これ以前は広くさまざまな地域で独自の星座が用いられていて、最古の星座は古代オリエント・メソポタミア地方のものといわれています。紀元前3000年〜同500年ころの出土品には、36の星座があり、なかには今日の星座の原形ともいえるものも見られます。この星座はフェニキア人を経てギリシアに伝わりました。

紀元前9世紀ごろのギリシアの詩人ホメロスが遺したといわれる「イリアス」と「オデュッセイア」にも、おおぐま座、オリオン座などの星座が登場します。
この後もギリシアの詩人は星座を扱う詩を多く遺します。

2世紀前半になると、ギリシアの天文学者・地理学者・数学者でもあるプトレマイオス(トレミー)が、48の星座を「Almagest」にまとめます。トレミーの48星座として著名なこれらの星座は、近世初頭まで用いられてきました。

プトレマイオストレミーの48星座で知られる
プトレマイオス

近世の大航海時代を迎えると、南半球にトレミーの48星座にはない星々が発見されていきます。航海上、星は重要な指針となるため、星座の設定が不可欠になりました。16世紀から19世紀にかけては、さまざまな新星座が設定されましたが、その中には消えていったものも多くあります。ハレー彗星で有名なエドマンド・ハレーも、「チャールズの樫の木座(りゅうこつ座近辺)」を設定しましたが、これは現在には残っていません。
19世紀後半にはさらに天文技術が進み、星図が正確になってくると、星座をきちんと制定する必要が出てきます。
こうしたことから、国際天文学連合が星座の制定に着手し、古代から使われているトレミーの48星座を全て残し、近世に追加されたもののうち、恣意的・政治的なものなどを除外した40を加えた88星座を定め、1930年に「科学的星座境界線」として出版し、現在に至っています。

秋の星座

秋の夜空は、古代オリエントの人々が「海」と呼び、水に関連した星座が多いのが特徴です。
みずがめ座、うお座、みなみのうお座などのわかりやすいものだけでなく、やぎ座(半獣半魚)、おうし座(下半身を水に浸している)や、海で鎖につながれたアンドロメダをおそうクジラ(アンドロメダ座とくじら座)などがあげられます。
秋の夜空の代表は、ペガスス座の「秋の大四辺形」です。ペガススは、ギリシア神話でペルセウスがメドゥーサの首を切り落としたときに溢れでた血から生まれた天馬です。

下の画像は、stellarium(http://www.stellarium.org)にて作成した、10月28日23時に設定して浜松から西の空を見上げた様子です。

ペガスス座

中央上部がペガスス座。ベガスス座の四辺形の対角線を延長していくと、右下にはくちょう座の一等星、デネブが見つかります。
ペガスス座の下辺を左下に延長すると、みなみのうお座の一等星フォーマルハウトを見つけることが出来ます。

日本の星座・中国の星座

さて、主にヨーロッパを中心としてつくられた現在の星座ですが、日本ではかつてどのような星座が使われていたのでしょうか。
日本で主に使われていたはは中国星座だったようです。

太陽暦が使われていたヨーロッパでは、12ヶ月にあわせた黄道十二星座を特別な星座としましたが、中国星座では、太陰暦にあわせておよそ28日周期の区分によって天の赤道帯をわけた二十八宿が定められました。
この28を7つずつの4区分にわけ、それぞれに青龍、白虎、朱雀、玄武といった神獣を配しています。
日本でもキトラ古墳や高松塚古墳にこの二十八宿が描かれており、古くから伝わっていたことがわかります。二十八宿以外の星座は、北極星(天帝)を頂点とした社会身分制度(ヒエラルキー)が用いられていました。三国時代には283星座の星図がつくられ、中国星座の基盤となります。

下の図は、上であげた空と同じ西(玄武)の空に、中国星座をプロットしたものです。

中国星座

ちょっと季節が違いますが、「織姫と彦星(織女と鱗牛)」や、「昴」といった馴染みのある星も、中国からの伝来によるものです。
その後、明治維新を境に日本の西洋傾倒が進み、星座も西洋の天文学に由来するようになっていきました。
でも、ペルセウスとアンドロメダ、というよりも、織姫と彦星、というほうが、しっくりくるのは洋と東西の違いということでしょうか。

星の写真を撮ってみる

せっかくの秋の夜長です。星の写真を撮ってみませんか。
銀塩カメラ時代は、星の撮影は本当に大変なものでした。星の写真は弱い光を捉えるために露光時間を長く(シャッタースピードを遅く)しますが、その結果がすぐにわからないので、現像してみて大失敗、なんていうこともありがちでした。慣れない人は、デジタルカメラで気軽に撮影してみましょう。気軽にとは言っても、三脚は必須です。

星は(地球と比較的)動いていますから、露光時間が長くなると、星の移動経路が線のように写ります。

バルブ撮影

これはバルブ撮影(シャッターを開けたままに固定)で、15分間シャッターを開けておいたものです。ほんの15分間でも、これだけ星が動いていることがわかります。
もうすこし短いシャッター速度(8〜120秒程度)で撮影すると、一応は星が止まって写りますが、シャープさに欠けてしまいます。下の写真は、ペガスス座を中央に、左に木星、右にはくちょう座のデネブ、右上にカシオペヤ座が見えます。

星空

上の写真は一眼レフで撮影したものですが、コンパクトカメラ(シャッタースピードの調整ができるものか、星空モード等があるもの)でも撮影できます。

星空

星座をシャープに捉えたい、という場合は、星の動きにあわせてカメラを動かす必要があります。ゆっくり動いていく星にぴったりあわせていくというのは、到底ニンゲンの手で出来る作業ではありませんので、機械の出番です。
赤道儀という道具があれば、同じ星を動きに合わせて追尾できます。とはいえ赤道儀は結構なお値段です。今回は用意できませんでしたが、星空撮影にハマると欲しくなるかも?

Androidは星探しに便利だよ!
きちんとした天文ファンならいざしらず、チョット星を見てみたいなと思っても、どっちにどんな星座があるのか​​さっぱりわからない、という人にオススメなのが、Android用アプリケーションGoogle Sky Map。このところNTTDocomoやauからも続々と端末が発表されているAndroid搭載のスマートフォンを使って、簡単に星が探せます。
今回はauのIS01で試してみました。GPSとジャイロセンサーによって、自分の位置と向いている方向の星座を表示してくれます。

Google Sky Mapで撮影中

上を向ければ、上の星座が表示されるのがなんだか不思議。

Google Sky Map

※本体が下を向いているので、本来見えないはずの地球の裏側にある星座が画面に表示されています。

Androidケータイがない場合は、ニンテンドーDSでも。
ニンテンドーDS®用ソフト「星空ナビ

光害

冒頭で、都市部では星空が失われたと述べました。これは、光害によるものです。
夜を通じて営まれる街の営みが、暗かったはずの夜の空を明るくしています。汚染された大気中に含まれる微粒子が、地上からの光を反射して、ますます星を見えにくくしています。

年配の人ほど、子どもの頃の星空と、いまの星空の違いに驚くのではないでしょうか。
星が見えなくなっているのは、何も視力の衰えばかりが原因ではありません。星が本当に減っているのではありません。星空が見える環境がなくなってしまっているのです。

下の画像は、NASAが2000年に作成したものです。
https://visibleearth.nasa.gov/images/55167/earths-city-lights

宇宙から見た夜の世界地図

夜にあかりのついているところを表す衛星画像です。欧米を中心に光害が世界的に広がっていることがわかりますが、もう人間が住んでいないと思われる地域については、当然真っ暗です。

日本を拡大してみると、この通り。

夜の日本を空から見る

東京近辺には、もはや夜などないのではないか、と思えます。

そういう自分も、地方都市とはいえ、今照明を点けてこの原稿を書いています。東京に比べれば、上の画像での明るさは少ないものの、それでもやっぱり星空は昔より見えなくなっています。白熱電球の製造中止や、LED照明の普及などが話題になりますが、そもそもその前に、住宅がそれほどに明るい必要はないのではないでしょうか。

「明るさ」ではなく「暗さ」に価値を発見して、あかりを消して、星空を眺めましょう。

参考文献:
星座の神話(原恵著:恒星社厚生閣)
浜松市天文台資料

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2010年10月28日の過去記事より再掲載)