「ていねいな暮らし」カタログ

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「変わらぬ」姿で復刊——
『天然生活』

最近は、海外の暮らし系雑誌を紹介してきており、今回は韓国の冊子を紹介しようと考えていたのですが、解読にはもう少し時間が必要ですので、この夏休み中に起こった暮らし系雑誌の大きな出来事についてご紹介したいと思います。本連載の第12回でも触れた『天然生活』についてです。

『天然生活』は、2003年に地球丸から創刊され、三大暮らし系雑誌に勝手に位置づけていた雑誌だったのですが、2019年2月発売号をもって突然の休刊となり、インターネット上でも話題になりました。本連載ではこれまで『天然生活』も合わせて13誌紹介してきましたが、その中の半分は既に廃刊・休刊、ないしはそれに近い状態のままとなっています。今回のことは出版元の事情ということでしたし、このまま読めなくなってしまうのか…と思っておりましたが、4月には譲渡先が扶桑社に決まり、この8月に満を持して『天然生活』の復刊、発売前に重版が決まるなど、あれよあれよという間に『天然生活』が戻ってきた、というのが私の実感です。

復刊の反響から、全国的に『天然生活』が品薄状態になっているとの噂が流れる中、私も近所の本屋で最後の一冊をゲットしまして、さっそく読み始めましたところ、全体的な構成、レイアウト、色づかい(表紙のテキストの組み方など)、暮らし方に関するゆるやかな啓蒙等々、変わることなく復刊という形になったようです。半年という短い休刊期間であったという意味では、当然と言えば当然のことかもしれないですが。

『天然生活』が大切にしていることは、/ 無理をせず、手を動かしながら、暮らしを育むこと。/ 自分らしく、おしゃれに自然体に、日常を楽しむこと。/ 暮らしを整えることから、/ 家庭や社会を、平和的に、居心地のよいものにしていくこと。/ これまで大切にしてきた軸を変えることなく/ これからもていねいに、一冊一冊を、ともに重ねていければと思います。

復刊号の冒頭で改めて確認されるように、「暮らしを整えること」は、「家庭や社会」で「平和」に暮らしていくことにつながり、このことが「これまで大切にしてきた軸」であると語られています。2003年の創刊から一時の休刊を経て復刊した現在まで、「暮らしの整え」方こそ「変わらず」にあるものかもしれないですが、それが求められる背景はさまざま変化してきていると考えられます。今回の復刊から、読者と直接つながるための「天然生活web」も開設されたとのことなので、暮らし方をめぐるモチベーションはどこに起点があるのかなどに留意して、注視してみたいと思います。

(1) 『天然生活』1復刊号(10月号)、発売前の重版が決定!―天然生活ウェブ https://tennenseikatsu.jp/_ct/17295842 2019年9月19日参照
(2) 「読者の皆さまへ」『天然生活』2019年10月号、1(1)、pp.4-5

著者について

阿部純

阿部純あべ・じゅん
1982年東京生まれ。福山大学人間文化学部メディア・映像学科准教授。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。専門はメディア文化史。研究対象は、墓に始まり、いまは各地のzineをあさりながらのライフスタイル研究を進める。共著に『現代メディア・イベント論―パブリック・ビューイングからゲーム実況まで』、『文化人とは何か?』など。地元尾道では『AIR zine』という小さな冊子を発行。

連載について

阿部さんは以前、メディア論の視点からお墓について研究していたそうです。そこへ、仕事の都合で東京から尾道へ引っ越した頃から、自身の暮らしぶりや、地域ごとに「ていねいな暮らし」を伝える「地域文化誌」に関心をもつようになったと言います。たしかに、巷で見かける大手の雑誌も、地方で見かける小さな冊子でも、同じようなイメージの暮らしが伝えらえています。それはなぜでしょう。そんな疑問に阿部さんは“ていねいに”向き合っています。