色、いろいろの七十二候

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菊花開・柿とスズメ

柿とスズメ
こよみの色
寒露
コスモス色  #F85CA2
・秋桜の字が当てられ、花弁は紫がかったピンク。明治20年頃渡来したといわれる。
菊花開
二藍ふたあい #915C8B
・藍に紅花を染め重ねた明るく渋い青紫色。もともと紅のことを『紅藍(くれない)』と言い、紅藍と藍の二色の藍で染めたという意味から名付いた。若年ほど藍を淡く、壮年ほど紅を淡くし、二藍は使用者の年齢によって各種存在した。『源氏物語』で光源氏が息子の夕霧に「紅みの強い二藍では軽く見られる」というシーンもある。

雀蛤(すずめはまぐり)となる」という秋の季語があります。

聞いただけではなんのことかわからない言葉ですが、実は二十四節気・寒露の次候にヒントがあります。

日本の七十二候では、寒露の次候は「菊花開きくのはなひらく」とされていますが、本家となった中国版は「雀入大水為蛤すずめたいすいにいりはまぐりとなる」とされています。

ちょうどこの頃、スズメが海に集まってきて、それが海に入ってハマグリになる、ということです。

言われてみればスズメとハマグリの模様は似ていなくもありませんけれど…。まあ、ちょっとブッ飛んだ話ではあります。
(立冬の末候も、中国では「野鶏入水為蜃やけいみずにいりおおはまぐりとなる」という、やはり鳥が貝になる、というものですが、これも日本では用いられていません)

この言葉は、今では季節を伝えるというよりも、物事が変化する、という例えとして使われるようです。

スズメは米を食べるので害鳥とされたり、害虫を食べるので益鳥とされたりしながら、人間とずいぶんながいことおつきあいをしてきました。昔はよく食料にもされ、かなりの数が獲られたようですが、いくら獲っても減らない、という、本当にたくさんいる鳥でした。

けれど、以前にも「びお」で取り上げたことがあるように、スズメは随分減ってしまっているようです。

近頃スズメを見かけなくなった。何故だろう?
http://www.bionet.jp/2018/02/13/suzume/

スズメは人里に巣を作ります。ヘビや猛禽類などの天敵が近寄りにくくなるため、と考えられています。

野生動物の減少は、開発に伴う場合が多いのですが、スズメの場合は人里、民家の近くに巣を作りますから、乱開発が必ずしも減少の要因にはなりません。

けれど、スズメの食料になる米などのイネ科種子類は身の回りから減っています。巣を作るための枯れ草なども、昔に比べれば随分見かけることが少なくなりました。

そして、住まいの高気密化、工業化が進み、また軒下がなくなったり、平坦になったりと、スズメが巣を作るのに適さない構造になっています。

もちろんスズメのために家を建てるわけではありませんが、スズメも暮らせない環境、と考えると、果たしてそこはよい住環境なのか、と手が止まってしまいます。

先にあげた特集でも触れたスズメの減少を調査した三上修さんの本、「スズメ つかず・はなれず・二千年」には、現代社会の中でのスズメの巣の見つけ方、スズメと人の関わりの歴史や、スズメの減少調査についても触れられています。

蛤とならざるをいたみ菊の露  夏目漱石

ハマグリになることなく死んでしまったスズメを弔う句です。
普通にいるスズメが死んでいた、それだけのことかもしれませんが、シェルターの中に篭っていたら決して生まれ得ない感覚です。

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2014年10月08日の過去記事より再掲載)