色、いろいろの七十二候

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草露白・つゆ草

つゆ草
こよみの色
白露
素色(そしょく) #EAE5E3
・晒さない未漂白の繊維そのものの色。フランス名でベージュ・エクルーと同じ意味。
草露白
人参色にんじんいろ #EC6800
・人参のような鮮やかな橙色。英名のキャロット・オレンジの訳語から。

朝咲いていたかと思うと昼には花がしぼんでしまうことから、まるで朝露のよう、ということで名付けられたと言われます。英名のDayflowerは、「その日のうちにしぼむ花」という意味です。

「その日のうちにしぼむ花」といえば、蓮の花もその一つです。
過日、越中高田に行くことがあって、城址公園の蓮の花を見てきました。夕方だったので、閉じている花が多く、蓮の花は、やはり朝早く見るべきだと思いましたが、翌日は早暁に高田を発ったため、見ることが出来ませんでした。
それでも高田の蓮は、東洋一といわれていて、外堀を埋め尽くす規模の大きさといい、花の見事さといい、暮色の中の花々は、幽玄を感じさせるものがありました。

ツユクサは古くは“つきくさ”と呼ばれていました。「万葉集」に親しんだ人は、「月草」または「着草」などの言葉がひんぱんに用いられていることをご存知かと思います。人の心の「移ろいやすさ」を表す常套語ですが、この“つきくさ”が転じてツユクサになった、という説もあります。
花のかたちから蛍草や帽子花、花の色が鮮やかな青色なので青花などの異名もあります。漢方薬の生薬名で鴨跖草おうせきそうというのも、このツユクサです。

ツユクサの花は、青花という異名があるほどなので、古くから染め物の下絵を描くための絵具として用いられてきました。この花の青い色素は、アントシアニン系の化合物で、着いても容易に退色する性質を持っています。
ただ、ツユクサの花は小さいので、染め物の下絵を描くものは、栽培変種である大型のオオボウシバナ(アオバナ)が用いられるようになっています。
前世紀初頭、ドイツ人の科学者が赤い薔薇と青いヤグルマギクの花の色素が、同じアントシアニンであることをつきとめ、花の色の違いは、細胞内の水素イオンの濃度(pH)によるという「pH説」を唱えました。
この「pH説」に異を唱えたのが、日本の植物生理学者の柴田桂太でした。彼は、青色の花はアントシアニンの金属錯体によるものと結論づけましたが、欧米の科学者からは無視されたそうです。前世紀末になって、この柴田説を裏付ける実証がなされて、ツユクサの青色色素の金属錯体には、アントシアニン、フラボン、マグネシウムイオンが含まれていることが分かったそうで、今では、X線結晶構造解析によって、ツユクサの青色色素のコンメリニン分子全体の構造が明らかになっているそうです。この違いがいかほどのものか、化学に弱いわたしには不明でありますが・・・。
「早起きは三文の得」と申します。朝露を光らせながら青く咲く、ツユクサをどうぞ楽しんでください。

露草を面影にして恋ふるかな 高浜虚子きょし
露草の露ひかりいづまことかな 石田波郷はきょう
月草の色見えそめて雨寒し 加藤暁台きょうたい
露草ほのとうなだれてあり海鳴る夕べ 山頭火
老人とあそぶ子のゐて蛍草 片山由美子
文/小池一三

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2010年09月08日の過去記事より再掲載)