色、いろいろの七十二候

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蒙霧升降・つるっとそうめん

つるっとそうめん
画/いざわ直子
こよみの色
立秋
露草色つゆくさいろ #38A1DB
・露草の花のような青色のこと。万葉人は、露草の花を擦った汁を、衣を染める他、染色の下絵を描く際に用いた。
蒙霧升降
花浅葱はなあさぎ #2A83A2
・鴨頭草 つきくさ(露草)の青い花の汁を用いて染色した浅葱色。「花色がかった浅葱色」の意味で、少し緑がかった鮮やかな青色のこと。

浅葱色は江戸時代に流行り多くの派生色が生まれた。水色がからせた『水浅葱(みずあさぎ)』、くすんだ『錆浅葱(さびあさぎ)』、花色がからせ鮮やかな『花浅葱(はなあさぎ)』など。

もっとも暑い時期の「大暑」が過ぎて、「立秋」の末候「蒙霧升降ふかききりまとう」を迎えました。ここから、秋の気配が少しづつ歩んできます。

立秋の初候は「涼風至すずかぜいたる」ではありますが、日本各地に吹く風はまだ「涼風」とはいかず、当分の間、何かに涼を求める日々が続きそうです。

そうめんは、「素麺」あるいは「索麺」と書き、奈良時代に中国から伝来した「索餅さくべい」が原形になっていると言われています。中国では、古来「餅」という言葉は、日本でいう餅ではなく、麺をふくむ粉料理のことを指していました。この索餅は、菓子という説もありますが、やはりそうめんの先祖である、麺類だったのかもしれません。

8月頭には、仙台七夕まつりがありました。
七夕は、旧暦では雨の少ないこの立秋の時期あたりに相当しますが、新暦によって、梅雨の真っ只中に移動してしまい、織姫と彦星が会えない年が多いようです。それを哀れに思って、というわけではないでしょうけれど、七夕やお盆は、地域によって、7月と8月(月遅れ)に分かれています。

七夕やお盆には、そうめんを食す風習も、各地に伝わっています。七夕のそうめんは、糸に見立てて、機織りが上手になるよう祈願するものでもあり、お盆のそうめんは、長い麺を先祖との縁が長くつながるようにとの祈りが込められています。滋賀県・湖北地方では、おもてなしのハレの日の料理としての鯖素麺が有名です。

こうした民俗的背景や、見た目の涼やかさもあって夏の食べ物のイメージが強いそうめんですが、仕込みの最盛期は冬、乾燥して気温が下がる時期です。他の麺類のように「打つ」のではなく、「延ばし」、寒風でさらして乾燥するのがそうめんの特徴です。

こうしてつくられたそうめんは、梅雨を越すことで熟成します。これを「厄を越す」といい、コシが強い麺になります。

さらに、翌年になり、もう一度梅雨を越すと、「古物ひねもの」、もう1年寝かすと「大古物おおひねもの」として珍重されます。
ただ古いものに価値がある、というわけではなく、よい時間を重ねて熟成したものに価値があるのでしょう。

あっという間に茹で上がり、ツルッと食べられてしまうそうめんですが、こうした時間が詰まっているのです。

でも、そうめんにはあまり教訓めいた話は似合いませんね。
そうめんを食べると脳からα波が計測され、リラックスするという研究もあるようです。暑さで疲れやストレスがたまりがちですが、そうめんでリフレッシュして、残暑を乗り切りましょう。

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2012年08月07日の過去記事より再掲載)