「ていねいな暮らし」カタログ

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健康的で“可以”な生活とは ——
『可以』

今回は、北京の書店で発見した『可以(日本語では、よいやできるを指す言葉)』という雑誌を取り上げてみたいと思います。私は、「ていねいな暮らし」の描かれ方を気にするようになってからというもの、国内外を問わず、出先で本屋を見つけるとすぐに暮らし系雑誌を探してしまうのですが、北京で『可以』を見つけた時には思わず飛び上がりそうになりました。遠目からでも、「暮らし系雑誌だ!」とわかってしまったからです。

四川美術出版可以健康生活可以 3:健康生活 生态农庄
作者: 薛蓉 张简蓝 主编
出版社: 四川美术出版社
豆瓣读书

まずは、この表紙を見てください。初期『ku:nel』を彷彿とさせる表紙だと思いませんか。上部1/5のところに白地に黒のタイトル、それ以外は食べ物の素材を構成した写真となっています。内容を示す文字は、「健康生活/エコ農場」の2語のみ。素材そのものの写真でありますが、何かの図形を描くように規則的に素材が並べられ、真上から写真を撮られています。フラットレイ型とスプレッド型の組み合わせです。おそらくは、これらの素材は「有機農園」で作られたものたちと思われますが、素材の形や発色で絵を描くようなそんな雰囲気も感じられます。

次に内容についてですが、文字を見ればなんとなく内容がわかるとはいえ、完全にはわからないので、留学生の方に訳してもらったものをもとに、内容をご紹介したいと思います。表紙をめくると、「可以生活(よい生活)」というタイトルの文章が書かれています。

「よい」、それは態度を示す言葉であり、気持ちを表す言葉でもあるが、ここでは「生活」の修飾語として挙げたい。「よい」生活とははたしてどのような生活なのだろうか。多数の人に対して、自分の暮らしが「よい」生活だと言えないだろう。/ここでの「よい」生活は健康的でなければならない。それは、食べるものも、愛読する本も、生き方もすべてを含む。2

「よい生活」という簡潔な表現でもって本誌が伝えたいと思うことは、「健康的な生活」とは何かということだ。体の健康は、食べるものによって作られ、本を読むことによっても得られるものであると言います。『可以3』の目次には、さまざまなエコ農場の記録の特集を筆頭に、中国の独立系書店のこと、音楽、パーソナルな思い出の物についてなど、「健康的な生活」を営む上で必要不可欠とおぼしきテーマが並んでいます。来月は、これらの内容について、もう少し詳しくお伝えします。

(1) 文中の日本語訳は、劉紫儀さんによるものです。どうもありがとうございました!
(2)薛容「可以生活」『可以3』2015年6月

著者について

阿部純

阿部純あべ・じゅん
1982年東京生まれ。福山大学人間文化学部メディア・映像学科准教授。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。専門はメディア文化史。研究対象は、墓に始まり、いまは各地のzineをあさりながらのライフスタイル研究を進める。共著に『現代メディア・イベント論―パブリック・ビューイングからゲーム実況まで』、『文化人とは何か?』など。地元尾道では『AIR zine』という小さな冊子を発行。

連載について

阿部さんは以前、メディア論の視点からお墓について研究していたそうです。そこへ、仕事の都合で東京から尾道へ引っ越した頃から、自身の暮らしぶりや、地域ごとに「ていねいな暮らし」を伝える「地域文化誌」に関心をもつようになったと言います。たしかに、巷で見かける大手の雑誌も、地方で見かける小さな冊子でも、同じようなイメージの暮らしが伝えらえています。それはなぜでしょう。そんな疑問に阿部さんは“ていねいに”向き合っています。