色、いろいろの七十二候

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半夏生・夏越の祓

夏越の祓でリフレッシュ
画/いざわ直子
こよみの色
夏至
鴇色ときいろ #F4B3C2
・鴇が飛ぶ姿に見える風切羽根の美しいピンク色から名付けられた。江戸時代から使われてきた色。
半夏生
露草色つゆくさいろ #38A1DB
・露草の花のような明るい薄青色のこと。花や葉の汁を布にすりつけて染めたことから、古名は『着き草』『月草』『鴨頭草』とも。簡単に脱色できる特性から、現在でも友禅や紋染の下絵に用いられます。色が落ちやすい特性から、露草は「うつろう」「消える」などに掛かる枕詞(まくらことば)となりました。

夏越なごしはらえは、半年分の穢れを落とすための行事です。
かやで作った大きな輪をくぐり、厄除けを祈願する、というものです。
大祓おおはらいの儀として宮中行事としても行われています。

夏越の祓

茅の輪

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この時期は疫病が起きやすい時期で、茅の旺盛な生命力にあやかろう、ということもあったようです。
の輪をくぐるときには「水無月の夏越の祓する人は、千歳の命延ぶというなり」などと唱え、無病息災を願います。

その由来は日本神話の時代までさかのぼります。
スサノオノミコトが、かつて旅先で世話になった一族に対して茅の輪を渡し、それを身につけた一族の子孫であれば疫病から逃れられる、とした「備後国風土記びんごのくにふどき」に由来します。このとき世話になったのが「蘇民将来そみんしょうらい」という人で、この名は茅の輪くぐりの時に唱えられたり、「蘇民将来子孫家門」などの護符にも見られます。

ヤマタノオロチ退治で知られるスサノオノミコトは、悪行を繰り返し高天原たかあまのはらから追放される、というダークヒーロー的な魅力に人気があります。その一方で、茅の輪の逸話のような優しさを見せるような描かれ方もしています。もっとも、この逸話でも、世話をしてくれなかったほうの一族を滅ぼしたのではないか、という面も見られるのですが…

けがれのことを、気枯れ、である、という説があります。気が枯れてしまった状態に、改めて気を注入するのが、ケガレを祓う、ということなのかもしれません。夏越の祓などの行事には、そうした枯れた気を、身体に取り戻すための役割があるのでしょう。
「お年玉」の由来が、新年の新しい魂である、ということは有名です。日本には、こうした行事で、ケガレをリセットしよう、というものが多く見られます。神社の遷宮も、そうした行為のあらわれです。

スサノオは高天原を追放され、出雲に降りたとされています。出雲大社の祭神オオクニヌシはスサノオの息子です。出雲大社は2013年、60年ぶりの遷宮を迎えました。その5年前にオオクニヌシを仮殿に遷座せんざ※1し、檜皮葺きの屋根の葺き替えなどの改修を経て、2013年5月に本殿への遷座が終わりました。

そして2013年はもうひとつ、伊勢神宮の式年遷宮が行われました。
伊勢神宮は、20年毎に、社殿を新しく建て替えます。
建て替えといっても、以前のものを解体してから新しいものを建てるのではなく、同じ社殿を新たに建築し、新しい正殿に神体を遷御せんぎょします。この遷御が同10月に行われました。

遷宮は、建物の修復と、社殿を清めるため、という目的で行われますが、結果として建築技術の伝承や、木材確保のための森林整備、そして信仰の継続など、さまざまな効果をもたらしています。

生物学者の本川もとかわ達雄さんは、著書「生物学的文明論」で、式年遷宮は生物の自己複製に似ている、と述べています。生物は、子というコピーをつくります。それは自分自身がずっと受け継がれていくことだといいます。時間を止めることが永遠ではなく、また新たにゼロから永遠を作っていく。それが生命の本質であり、式年遷宮は、それを表した行為なのではないか、と。

日本の住宅の平均寿命は、30年に満たないと言われています。
元来木造建築の耐久率は、決して低いものではありません。いまでも築100年を超える古民家は残っていますし、法隆寺は現存する世界最古の木造建築です。木材は適切に使えば長持ちする材料ですし、建物もしかりです。

近年の住宅寿命の短さは、住宅内のブラックボックスが増え、見えないところが傷んでいくのに適切なメンテナンスをしないこと、家族構成の変化に応えきれなくなったこと、などが原因として考えられます。
まさか、式年遷宮にならってケガレを祓うため、ということは、ないとは思いますが…。

木は何十年も、時には100年をも超えて育てられ、建築の材料に用いられます。そんな材料を、成長サイクルより早く廃棄してよいはずがありません。

伊勢神宮の本殿には200年生のひのきが必要です。解体された木材は廃棄されず、すべて再利用されます。本殿を解体した木材は、鳥居等に用いられ、また全国の神社で使われていきます。現在は、神宮の宮域林きゅういきりん※3で木材調達が間に合わず、木曾にある神宮備林からも木材を調達しています。しかし将来は宮域林で主要な材を調達しようと、200年後の式年遷宮もにらんでの植林が行われています。

神宮林だけでなく、各地にも、100年先に木材を供給するために森を作っている人たちがいます。インスタントな世の中にあって、背筋が伸びるような話です。

※1遷座:神殿の改修造営に際して神霊を移すこと
※2遷御:遷御(せんぎょ)または遷御の儀(せんぎょのぎ)は、旧殿から新殿へ神体を移し奉る神事。式年遷宮において最も重要な祭典
※3宮域林:式年遷宮に必要な御造営用材(ヒノキ)を伐り出す森林

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2013年06月21日の過去記事より再掲載)