色、いろいろの七十二候

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菖蒲華・ホタル

こっちの水は甘いぞ
こよみの色
夏至
鴇色ときいろ #F4B3C2
・鴇が飛ぶ姿に見える風切羽根の美しいピンク色から名付けられた。江戸時代から使われてきた色。
菖蒲華
桔梗色ききょういろ #5654A2
・桔梗の花のような青みを帯びた紫色。平安時代から愛されていた色名ですが、平安時代は織色や襲(かさね)の色目のみであり、染め色として使われるようになったのは江戸時代から。『宇津保物語 うつほものがたり』や『栄花物語 えいがものがたり』などの王朝文学にも名前が見られ、秋を代表する色。
一の橋二の橋ほたるふぶきけり   黒田杏子

各地で「ホタルまつり」が開催されています。ホタルが集団で舞う様は圧巻で、まさに吹雪のようです。

最近は「蛍の光」が卒業式などでも歌われなくなってきていて、閉店のテーマソングのようになってきているようですが、もともとは勉学の詞です。歌詞の「蛍の光 窓の雪」は、夏は蛍の光を、冬は窓の雪の反射する光を頼りに勉強をした、という、中国の故事が元になっています。

随の二代皇帝・煬帝が作らせた庭園に、ホタルがいたらなおよいだろうと、ホタルを集めさせました。大量のホタルが集められ、あたりはホタルの光であふれたといわれています。

同じようなことは今も行われています。

先に挙げた「ホタルまつり」もさまざまで、ホタルが自生しているところに出かけて行って、そっとホタルを見てきましょう、というものばかりではありません。養殖したホタルを見せるところもあります。

ホタルは、イベント用に販売もされていて、通販で全国何処でもお取り寄せが可能です。

イベントで放たれたホタルはどうなるのでしょうか。その場で死に絶えるのか、あるいはその場で殖え続けるのか。

例えば、日本のゲンジボタルの場合は、遺伝子型が東北、関東、中部、西日本、北九州、南九州の6つにわけられるといいます。
これらをまたいでホタルを移動させ、そこで交雑があれば、いわゆる遺伝子攪乱が起こってしまいます。

遺伝子攪乱があったからといって、ホタルが全然別の生き物に変わってしまう、というわけではありません。けれど、イベントの、商売の結果、本来そこにはいないであろう種が交じり合ってしまう、と考えると、とうていどんどんやれ、といえるものではありません。

ホタルの最大の魅力、それはホタルが棲み、増えることが出来る環境そのものではないでしょうか。ホタルは清流に棲み、カワニナなどを食べて生きます。当然のことながら、ホタルを食べる生物もいます。そうした環境の中で、成虫まで生き残ったホタルが光を放ち、僅かな寿命を全うします。ホタル以外のたくさんの生き物がいて、はじめてホタルが飛んで光るのです。

けれど、どうしても「飛んで光る」が目立ちます。そこだけを切り取ってしまいがちです。

蛍獲て少年の指みどりなり  山口誓子

そういう事情はわかっていても、ホタルの光は美しいもので、見てみたい、という情動に駆られます。煬帝は暴君として有名でしたが、一方で詩人でもありました。
ホタルが手の中で緑に光る

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから再掲載しました。
(2015年6月22日の過去記事より再掲載)