「ていねいな暮らし」カタログ

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意識される「まんなか」
——『KINFOLK』

前回に引き続き、『KINFOLK』を取り上げます。『KINFOLK』は2015年のvol.14からデザインを刷新しています1。今回は刷新前の初期『KINFOLK』のレイアウトにおける特徴について考えてみたいと思います。

『KINFOLK』のページをめくりながらまず感じられるのは、かなりまんなかが意識されているなということです。写真でもテキストでも、そのページの中央を中心に配置されていて、そのことにブレがありません。テキストが長かろうが短ろうが、写真を全面に使おうが2枚配置しようが、ページの中央が意識されています。フォントも片手で足りるくらいの数しか使われておらず、一つの記事に写真も数点、大きく飾り立てるような装飾もないので「シンプル」という印象を受けるのですが、全体的に統制されていることを考えるとかなり手の込んだ誌面になっているという印象を受けました。

誌面に用いられている写真も、まとめの回で取り上げた「露光は多め、かつ背景をぼんやりとさせ」た写真が使われるのですが2、『クウネル』よりも日常を切り取った感が少なく見えます。実際に、さまざまな状態を演出して写した写真が多いということもありますが、上下左右が均等に配分される写真が多く、ここでも写真のまんなかが意識されていると言えるのかなと思います。あえて言うならば、スナップ写真的にも見える『クウネル』より『天然生活』っぽい写真が使われているといった感じでしょうか。「シンプルさ」のスペクトラムとも言えるここの違いが見えたことは今回の収穫でした。

2018年に邦訳が出たことで、日本国内でもにわかに活気づいているレフ・マノヴィッチによるインスタグラム研究ですが3、この中でも『KINFOLK』的なインスタグラム写真が軸となる箇所があります。次回は、本書の中で問われている視覚イメージの分類についても触れつつ、『KINFOLK』の「シンプルさ」がどのように説明されうるのかについて考えてみたいと思います。

(1) We discuss Kinfolk’s redesign with creative director Charlotte Heal | It’s Nice That
https://www.itsnicethat.com/articles/kinfolk-redesign-charlotte-heal 2019年5月18日参照。

(2) 暮らし系雑誌における「暮らし」の描き方-ここまでのまとめ|第14回「ていねいな暮らしカタログ」 http://www.bionet.jp/2018/05/19/teineina-matome/

(3) 2018年6月に、BNN新社より『インスタグラムと現代視覚文化論 レフ・マノヴィッチのカルチュラル・アナリティクスをめぐって』(レフ・マノヴィッチ著、共訳・編著:久保田晃弘、きりとりめでる)が刊行されました。http://www.bnn.co.jp/books/9316/

著者について

阿部純

阿部純あべ・じゅん
1982年東京生まれ。福山大学人間文化学部メディア・映像学科准教授。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。専門はメディア文化史。研究対象は、墓に始まり、いまは各地のzineをあさりながらのライフスタイル研究を進める。共著に『現代メディア・イベント論―パブリック・ビューイングからゲーム実況まで』、『文化人とは何か?』など。地元尾道では『AIR zine』という小さな冊子を発行。

連載について

阿部さんは以前、メディア論の視点からお墓について研究していたそうです。そこへ、仕事の都合で東京から尾道へ引っ越した頃から、自身の暮らしぶりや、地域ごとに「ていねいな暮らし」を伝える「地域文化誌」に関心をもつようになったと言います。たしかに、巷で見かける大手の雑誌も、地方で見かける小さな冊子でも、同じようなイメージの暮らしが伝えらえています。それはなぜでしょう。そんな疑問に阿部さんは“ていねいに”向き合っています。