びおの珠玉記事

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ところてんの涼を楽しむ

ゴマをかけたところてん

ところてんは、テングサ(天草)などの海藻を煮て溶かし、寒天質を抽出して、それをして型に流し入れ、冷やして固めたものです。「ところてん突き」という専用の器具に入れて押し出し、細い線状にして食べるのが一般的です。ところてんを凍らせて乾燥させるのを繰り返すと、寒天になります。

ところてんの歴史は古く、最初は中国でつくられ、日本に仏教が伝来した頃、ところてんの製法も伝わったと考えられています。

万葉仮名が使われ始めた時代から平安時代、ところてんの原料であるテングサは「凝海藻」と書かれ、「コルモハ」と読まれていました。平安時代の「延喜式えんぎしき1には「上総より凝海藻、阿波より凝海菜を貢献す」という記録があります。
「凝海藻」の俗称として「心太」の字を当てて、「ココロフト」とも呼びました。701年に制定された「大宝律令」の「賦役令ぶやくりょう」に、貢納品として「心太」の名が記されています。このココロフトがココロタイ→ココロテイ→ココロテンとなり、さらにトコロテンに転化したとされています。そのようなわけで、現在でも「ところてん」は「心太」とも書きます。

ところてんの効能

ところてんは身体にいいと言われますが、どのような効能があるのでしょうか。
ところてんには豊富な食物繊維とミネラルが含まれています。
食物繊維には整腸作用があり、便通改善に効きます。腸の中で、水分や食物に含まれている余分な脂肪や老廃物と絡み合って、便を形成します。腸壁を刺激し、ぜん動運動を活発にして、便をスムーズに排出します。
また、腸内の糖質をからめとり、体内への吸収を抑える働きもあります。このため、血糖値の急激な上昇を抑えたり、コレステロールを低下させる効果があります。
そして、ところてんには適度な満腹感があって、ノンカロリーですので、肥満防止やダイエットに役立ちます。最近の研究では、がん抑制効果も期待されているようです。
ただし、食物繊維は栄養素を吸着して吸収を阻害しますので、食物繊維を摂り過ぎると、微量栄養素の無機質やビタミンの吸収率を低下させてしまいます。過剰な摂取は避けましょう。

各地域にあるところてん文化

ところてんには、実にいろいろな食べ方があります。
「全国ところてんマップ」を掲載しました。
全国のところてんの味付けマップ
ところてんの食べ方について、都道府県ごとに色分けしてみました。酢醤油・二杯酢・三杯酢・黒蜜・ぽん酢・めんつゆ・だし・酢味噌などの食べ方があります。ただ、多数派の意見で色分けをしましたので、異論や反論がある方もいらっしゃるかもしれません。その場合は、ぜひコメントをいただければと思います。
関東以北は酢醤油、関西は黒蜜で食べるようです。鹿児島の酢味噌など、特徴的ですね。薬味も、からし・ごま・青海苔・七味唐辛子など、いろいろあります。各地域にところてん文化があると言えるでしょう。
ところてんは淡白な味わいで、他のものと合わせやすいからでしょうか、上記の他にも全国には様々な食べ方をしている方がいらっしゃるようです。砂糖を振りかける、サラダや冷やし中華や酢の物などの料理に入れる、なんていうのは序の口。さいの目に切って、あんみつのようにあんこや果物を添えて。かき氷のシロップで。練乳と生クリームをかけて。ヨーグルトに入れて。あたたかくして食べる。納豆と醤油で。キムチと和えて。ホワイトソースとチーズで。――こうなってくると、自由自在な食べ方ができる、と言えるかもしれません。おもしろいです。

ところてんを作ってみました。

ところてんは店で買ってくるもの、と思っていました。ところが、家庭で作っているというブログの記事を見つけ、自分でも作れるものなんだ、ということを知りました。

◆「ハナの娘に伝えたいレシピ」より  心太(トコロテン)
http://hana25r.exblog.jp/2243502/

◆「Soleil Cafe」より  あわてて天草クッキング
http://soleil-m.blog.so-net.ne.jp/2008-09-25

そこで、ところてん作りに挑戦してみたくなり、天草を探したのですが、近くのスーパー、乾物屋さん、デパートでは扱っていませんでした。手に入りにくいものなのかもしれません。その後も探していたところ、ある海産物を扱うお店で見つけることができました。ネットで注文するのが、手っ取り早いかもしれません。

精製前の天草

購入した天草。精製しておらず、きれいな赤紫色をしています

紫色した煮る前の天草

外側に向けて細かく枝分かれしていて、絡み合っています

こちらが購入した天草です。伊豆稲取産の天草100g、価格は840円でした。きれいな赤紫色をしています。赤じその色のようです。さわってみると、少しやわらかめのタワシのような感触でした。毛細血管のように外側に向けて細かく枝分かれしていて、絡み合っています。
お店の人が言うには「うちの天草は精製していません」とのこと。この天草は赤紫色をしていますが、天草はさらして(精製して)販売されるのが一般的なようです。採れた天草を水洗いして、天日干しをします。そして乾いたら水をかけ、また天日干しをします。これを繰り返すとだんだん色が抜けていき、白っぽい茶色になります。同時に強い磯のにおいも抜けるそうです。
上記のブログでところてんを作るのに使われている天草も、晒したもののようです。

さて、ようやく見つけた天草を使って、ところてん作りに挑戦です。
まずは、購入した天草についていた、ところてんの作り方をご紹介します。

(1) 1回分(50g)の天草をよく水洗いし、2~3 Lの水と小さじ2~3杯の酢を加え、天草がどろどろになるまで40~50分程煮ます。

(2) 煮汁を熱い間に手早くふきんでこし、こし汁を角型の容器に入れて冷ますと、固まった風味のあるところてんになります。

ざるにあげた天草

水洗いした天草


はじめに、50gの天草を量り、水洗いします。水で洗うと途端にやわらかくなり、かさが増します。そして磯の香りが漂います。
カニの甲羅のかけらと思われるものや、わかめのような別の海藻が絡まっていたりして、海の中から採ったんだということを実感しました。
鍋に入れた天草と調味料

洗った天草・水・酢を鍋に入れて煮ます


次に、洗った天草・水・酢を鍋に入れて、40~50分程煮ます。今回は水を2.5ℓ、酢を小さじ3、入れました。水の量によって出来上がるところてんの固さが変わってきますので、お好みで加減していただくとよいと思います。
煮ていたら多少のアクが出てきましたので、アクを取りながら煮ました。磯の香りが部屋いっぱいに広がります。
煮ているうちに天草の色が抜けていき、赤紫色から茶色へ、そして最後には深緑色になりました。
煮てきれいな緑になった天草

煮終わったら、ふきんで濾します


40~50分程煮て天草がどろどろになったら火を止め、熱いうちにふきんで濾します。煮汁にはかなりのとろみがあり、ぬるぬるしています。
バットに入れた天草の煮汁

赤紫色の煮汁


濾した煮汁を型に入れて冷まします。はじめは室温で冷ましました。冷めて、ある程度固まってきてから、冷蔵庫に入れました。
天草が赤紫色でしたので、その色が煮汁に出ています。一般に売られているところてんは、晒した天草から作られることが多く、白い半透明・黄色っぽい半透明・茶色っぽい半透明、といった色であることが多いのではないでしょうか。
スーパーで1つ、ところてんを買ってきてみました。このような色をしています。「純天草使用」で、天草・食酢が原材料のところてんです。
薄い黄土色のところてん

スーパーで買ってきたところてん


冷蔵庫で冷やして、ところてんが出来上がりました!
薄い赤紫色をしています。天草の香りがします。さわってみると、けっこう固めで、かなり弾力があり、プルプルしています。
薄い赤紫色をした手作りところてん

出来上がったところてん(写真を撮る前に食べてしまいました)


出来上がったところてんを適当な大きさに切って、「ところてん突き」に入れて押し出し、線状にします。実は、このところてんを押し出す作業がなかなか楽しいのです。人が集まった時などにみんなでやると、なお楽しそうです。
ところてんを押し出している所

「ところてん突き」に入れて押し出します


ところてん突きは、できれば木製のものが風情があっていいですね。手軽に楽しみたい場合は、このようなプラスチック製のものもあります。130円で購入できました。
ところてん用の突き棒と長い容器

手軽なプラスチック製のところてん突き


ところてんにつけるタレは、迷った結果、今回は三杯酢と黒蜜を作ってみることにしました。

三杯酢

三杯酢は、

・[米酢] 大さじ1
・[薄口醤油] 大さじ1
・[水] 大さじ1
・[てんさい糖] 小さじ1

の分量で作りました。
市販のところてんに添付されているタレは、どうも食品添加物が入っているものが多いようなので、タレを自分で作るのもおすすめです。自分が気に入っている調味料を使えることも嬉しいです。今回は砂糖ではなく、てんさい糖を使ってみました。

左から杉樽しょうゆと千鳥酢とてんさい糖

自分が気に入っている調味料でタレが作れます


三杯酢と、すりごまをかけて食べてみました。さっぱりしていて美味しかったです。夏の暑い日にはぴったりではないでしょうか。
器に盛った涼しげなところてん

三杯酢とすりごまで、さっぱりと

もう1つは、上記ブログに載っていて美味しそうだったので、黒蜜と抹茶きな粉にしました。
黒蜜は、

・[黒砂糖] 100g
・[水] 100cc

の分量で、黒砂糖と水を鍋に入れて火にかけ、とろみが出るまで弱火でじっくり煮詰めて作りました。好みで蜂蜜を加えてもよいようです。
抹茶きな粉は、抹茶ときな粉とてんさい糖を適量、混ぜて作りました。
黒蜜はかなり甘く出来上がったのですが、ところてんにかけるとそれほど甘すぎず、きな粉の香ばしさと抹茶のほのかな苦みもあいまって、美味しかったです。こちらはおやつ、「甘味」「和スイーツ」として楽しめそうです。

薄青の器に抹茶きな粉と黒蜜をまぶしたところてん

黒蜜と抹茶きな粉で、おやつに


そして、今回作ったところてんと、買ってきたところてんを比較してみました。
まず色ですが、両方並べてみると、薄い色ではありますが、色の違いが分かります。左が今回作ったもの、右が買ってきたものです。材料の天草の色の違いからきています。
左は薄い赤紫色の手作りところてん、右は透明に近い買ってきたところてん

左が今回作ったところてん、右が買ってきたところてん


味は、何もタレをつけない時点では、どちらも天草の香りがするし、特に違いを感じなかったのですが、タレをつけてみたら、明らかに味が違っていて、びっくりしました。
今回作ったところてんは晒していない天草が材料、買ってきたところてんは晒した天草が材料、ということから考えると意外な結果なのですが、今回作ったところてんの方が、クセがなく、あっさりしていて食べやすいのです。かけたタレとも味が調和して、まろやかで美味しいのです。これに対して、買ってきたところてんの方は雑味があり、タレと味が調和している感じがなく、天草の味がやけに主張するというか、味がとんがっているのです。
人によって好みは違うかもしれませんが、食べ比べは、作ったところてんの方が美味しい、という結果になりました。

さて、最後に後片付けをしたのですが、ここでも1つびっくりすることがありました。天草を煮た鍋やアク取りをしていたお玉に、わずかに煮汁が残っていたのですが、それがしっかり固まって、薄いところてんが出来上がっていました。天草の寒天質の凝固力、恐るべしです。

これから夏本番に向かって、だんだんと暑くなっていきます。いろいろな食べ方を試したりなど楽しみながら、ところてんで涼をとってみませんか。

※1:平安時代中期に編纂された格式(律令の施行細則)で、三代格式の一つ。

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2009年5月21日の過去記事より再掲載)