ちいきのたより

Vol.42  西三河に暮らす・西の家(にしのいえ) 
愛知県西尾市 イシハラスタイル

ちいきのたより第42回西三河に暮らす・西の家(にしのいえ) 愛知県西尾市 イシハラスタイル

 

ちいきのたより第42回西三河に暮らす・西の家(にしのいえ) 愛知県西尾市 イシハラスタイル

記者である私が生まれ育った愛知県西尾市では、先祖代々住み継いだ土地に、跡取りが家を継ぎ、新たに居を構えるのがごくごく自然なことと考える人が多いと感じます。

このあたりでは母屋の隣に「西の家」をよく見ることができます。
広い敷地に南向きに建てられた仏間のある立派な母屋をもち、一世代がそこで暮らし、子供が成長し跡を取り、一緒に住むために敷地の西側に20坪程度の平屋を建てるのです。
西に建てる理由は、東~南の太陽光や南の風を取り込む意味や、家相風水を気にする家も少なくない為、東側からのアプローチを好み、逆に住みかは西になったものと考えられます。

よく、こんな景色をみることができます。整えられた庭のある大きな敷地です。

西の家がある家

広い敷地に右側の母屋と左側の西の家がある、三河で良く見る家の配置

西の家

西の家1before

母屋と西の家の配置

大きな母屋と大きな西の家があることも、よくある


離れには水回りを持たないことが多いので、台所、風呂など、寝ること以外は家族みんなで共有し、三世代ぐらいが共に生活するスタイル。

この地方ではよく耳にする「西の家」について他の地域の方とお話していたら、「何ですか、西の家というのは?」となりました!
都会や住宅街で敷地にゆとりがない場合だと、そもそも敷地に空きなどなく、同居する場合は3階建などの考えはあるが、別棟である西の家を設け、しかも光と風を取り込む配置を考える余裕はないということでしょうか。

しかしながら、地価は高くはない地域だけれど、敷地内の西側に家を建てる概念はないよというお話を聞くと、なんだかかえって理解に苦しむ自分がいました(汗)。

その地域に馴染んでいると、そのほかのことが不思議に思うことってあるんですね。
そんなこともあり、今回、地域ならではの住まい方を紹介してみようと思い立ったわけです。

戦後からの高度成長や、少子化、後継ぎ問題などの理由で、土地を離れる若者も少なくはありませんが、そもそも、同居という考え方が、生活時間帯の違いや、住み方の好みの違いなどもあり、自分のスタイルを大切に考える若い世代にとっては「離れ家」とはいえ、母屋と廊下で繋がった生活はハードルになったりすることもあるでしょう。

そんな中、イシハラスタイルでもご相談が増えていると感じるのが、住まいについて考える時の希望の中に「地元に暮らす」、「実家近くに居を構えたい」、「敷地内に使っていない離れがある」というもの。
若い世代にとって、子育てを分担してもらえる、高齢になっていく親の様子がうかがえる、土地を購入せずにすむので予算的な負担を減らせる、という点をメリットとして捉え、見直されているというものです。

最近では、「西の家」スタイルは一般的にSNS上で「#敷地内同居」というタグでも多くみられ、期待と不安をあわせもちつつ(笑)、議論がされていますね。時代の流れで核家族化が進みつつも、脈々と続いてきた生活に立ち戻っていくものなのかもしれません。
赤ちゃんを抱っこして夕涼みするおじいちゃん
打ち合わせに行くと、夕涼みにお孫さんをつれて、近所をお散歩するおじいちゃん、おばあちゃんの姿を目にします。何かと忙しい若夫婦のために喜んで手伝いをかって出てくれる様子を目にすると、今後の生活におきかえて考えても、昼間仕事をしているお母さんも少なくないので、急ぎ夕食の支度をしなくてはいけない時などに、手助けしてもらえることは本当にたすかりますよね。

せっかく、こういう風習のある地域に生まれ育ったのだから、こうした考え方がこれからの世代にも、もっと浸透するとよいと思ってしまいます。

西の家のあるお宅をみていると、外観のイメージ的には母屋は二階建てや平屋の場合や丈三建(高い屋根裏を持つ平屋)など様々ですが、西の家は平屋が多いです。
離れはあくまでも、敷地や隣地(隣家にしてみれば西の家は東の光を遮断するおそれがある)に対して配慮し建てられることが多いです。
母屋より背の高い建物は建ててはいけない、などローカル・ルールも時々耳にします。

お家づくりの相談にいらした若夫婦に、お父さんにそう言われませんでしたか? と聞いても、「特に何も言ってなかったけど……」となり、後日確認したところ、「それはやってはだめだね」ときたりします。
なぜ? と聞くと特に理由がないようにも思えますが、日当たりを考えれば当然配慮すべきことだとわかりますし、母屋より目だたせるものではないでしょう。


そして、西隣の隣家の方にしてみれば、東からの光を遮る建物が低く抑えられれば日当たり良く、風通しの良いお庭が守られる、ご近所づきあいも良好に保たれるというものです。みんなそうやって気遣いながら暮らしてきたんだと感じることができます。

西の家

西の家1:建て替え後

西の家2

西の家2:建て替え後

ところが私の地元でも、最近では空き家になっている西の家が多くみられると感じています。
築年数はそれほど経ってはいないけれど、そのまま住むのには断熱などの性能に不安があったり、リフォームしても面積が小さいため夢のマイホームを実現するのが難しいと感じるからかもしれません。
廊下で繋がった母屋で水回りの共有をして生活することに抵抗があったり、生活時間の相違や、外観や内装でも素材の好みの違いだけでなく、実際古い母屋との接続は建築に関する法律がクリアできないこともあるので、簡単ではないのでしょう。

そんな中、なんとか自分たちの思いを実現しようと努力し、実現できている方もたくさんいらっしゃいます。イシハラスタイルの実例をみても、「西の家スタイル」の敷地内同居は増えつつあります。もう、西の家じゃなくて東の家や、北の家にも広がっていますが(笑)。

お引っ越し後の話を聞くと、子供が小さいうちは忙しい時間に祖父母に見てもらったり、休日は食事を一緒にしたり、逆に祖父母の世話をしたり、出来る時に、出来る分だけお手伝いするような関係でいるようです。

まさに、親とは付かず離れず。三河の西の家スタイルはこうして受け継がれており、そしていつか母屋もその役割を終え次世代に引き継がれ、さらに新しい建物に変わったときには、この西の家に住む住人が祖父母となり、おなじ敷地内に住む孫たちの面倒を見ながら暮らすのでしょうか。

変化しつつも「西の家」という暮らし方が、もっともっと見直されると素晴らしいと思います。

北の家

北の家(右側が南で大きな母屋と、一回り小さい北の家)

西の家

西の家3(西側に土地を購入し母屋への通路をわざわざ設けた)

石原智葉
ちいきの記者
石原智葉いしはら・ともよ
愛知県西尾市生まれ。釣りが好き。月を見るのが好き。地元食材や、地元で作られたものが好き。
シンプルな暮らしにあこがれる。これは、まだ実戦途中。
設計の仕事では、お客様のプライベートにぐっと入り込んでお話しします。たくさん考えて出した答えは後悔することが少ないので、満足できる家づくりに繋がります。お互いに信頼しあい、人間関係を築くことも家づくりに携わる上で大事な使命だと考えています。

 

愛知県西尾市イシハラスタイル施工事例
(株)イシハラスタイルいしはらすたいる
愛知県西尾市寺津町亀井22
TEL:0563-58-1231
URL:http://www.ist-a.com
イシハラスタイルは棟梁の志を持ち、地元の豊かさを大切にする工務店でありたいと考えています。
住まい手としっかり繋がって、設計、デザイン、現場、暮らし、建物、庭、環境が一体になった家づくりをめざしています。
建築は繋がりから生まれるものだというのが、わたしたちの考えです。いい家を建てるのは誰かと問えば、それはいいお客様が建てるのです。わたしたちがいい工務店になるには、いいお客様と出逢い、いい繋がりを持ちながら一緒に取り組むことが不可欠なのです。そして、設計士と大工と職人、家具デザイナー、メーカー、作庭師たちがいい関係で繋がったプロ集団としてお客様のための家づくりに向かう。そんな繋がりを大切にして、この一棟と真摯に向き合い、丁寧に丁寧に考え抜き、これでもかこれでもかとより良いものを探る。
お客様との対話にも、設計にも、工事にも、そして引き渡してからのおつきあいにも、
すべてにおいて匠の精神を注ぎ、家づくりに取り組みたいと考えています。

ちいきのびお参加工務店さん全国図

ちいきのびお