「ていねいな暮らし」カタログ

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文体の妙——『PERMANENT』

先日、実家で農家をされている同僚の方から野菜を分けていただきました。ほうれん草や金時人参など季節のものをいただくことができ、言うまでもなくとても美味しいので(なんたって産地直送ですから!)、毎回とても楽しみにしています。地産地消や自給自足は、今日の暮らしのキーワードであると言っても過言ではないと思います。今回紹介する『PERMANENT』は、2011年の東日本大震災時に暮らしに危機感をもち、中でも「食べること」について特化したリトルプレスです。

『PERMANENT』は、2013年に季刊誌として創刊され、これまで7冊発行されています。A5判の32ページの冊子で、表紙は写真中心に構成され、初期『Ku:nel』を彷彿とさせるレイアウトになっています。内容を伝える文言は表紙には載せられておらず、” Independence and quality of life. ”と「つくる、たべる、かんがえる」のフレーズが毎号付されています。表紙・内容含め、動きのある写真が使われることが多いことからも、「映像」を共有するという感覚の強い冊子と言えるかもしれません1

内容は、毎号4つほどのエピソードと写真とで構成され、文体に特徴があります。例えば、No.2の冒頭記事は「それにしても、」から始まります。何の前置きもなく、「それにしても、」と言われるのは読み手としては不思議な感覚で、フッとその記事の中に放り込まれると言いますか、「筆者と共有していたかもしれない何か」があったかのような気持ちにさせられます。他にも、取材対象の方を「――さん」と呼び、「この人を紹介します!」ではなく、読み手からすると唐突に「――さんは、―――考え続けている」と話が始まり、読んでいくとその方の生業がわかっていくという構成を取っています。このような文体もまた映像を見ている感覚に近いなと思うのです。写真と文章のレイアウトも記事ごとに統一させる形をとっており、そのことでまた誌面がリズミカルに映ります。

本誌は、単なる読み物としてだけでなく、食にまつわる実践的なことにも目を向けているようです。次回はそのことについてご紹介したいと思います。

(1)『PERMANENT』のウェブサイトには、各号のイメージ映像を見ることができます。紙と映像とウェブといったメディアを食を考える窓口として使いこなしながら
http://permanentbros.com/archives/1747

著者について

阿部純

阿部純あべ・じゅん
1982年東京生まれ。福山大学人間文化学部メディア・映像学科准教授。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。専門はメディア文化史。研究対象は、墓に始まり、いまは各地のzineをあさりながらのライフスタイル研究を進める。共著に『現代メディア・イベント論―パブリック・ビューイングからゲーム実況まで』、『文化人とは何か?』など。地元尾道では『AIR zine』という小さな冊子を発行。

連載について

阿部さんは以前、メディア論の視点からお墓について研究していたそうです。そこへ、仕事の都合で東京から尾道へ引っ越した頃から、自身の暮らしぶりや、地域ごとに「ていねいな暮らし」を伝える「地域文化誌」に関心をもつようになったと言います。たしかに、巷で見かける大手の雑誌も、地方で見かける小さな冊子でも、同じようなイメージの暮らしが伝えらえています。それはなぜでしょう。そんな疑問に阿部さんは“ていねいに”向き合っています。