「ていねいな暮らし」カタログ

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“ホリスティック”に暮らしを考える——『murmur magazine』

今回は、読者のみなさんもおそらく一度は手に取ったことがあるのではないかと思われるリトルプレス『murmur magazine』を取り上げます。本誌は2008年に創刊していますが、創刊当初はアパレル・ブランドである「FRAMeWORK」が発行者となっていました。本誌編集長の服部みれい氏が企画を持ち込み、実現したとのことです

アパレル・ブランドが発行者として入っていることからもわかるように、暮らしの中でも衣服への関心が本誌の軸となっています。当時はまだ耳慣れない言葉であった「エシカル・ファッション(ethical fashion)」を切り口に、衣服が誰によってどのように作られ、自分たちの手元に届き、それを着ることは自分たちにどのような「幸せ」を届けることになるのか、つまり「環境と人間の生き方を考える」きっかけにしたいという気持ちがあったようです。

そこで、キーワードとなるのが「ホリスティック(holistic)」でした。「ホリスティック」とは、「全体性」を表す言葉の形容詞です。私(たち)の暮らしは私(たち)自身の一つ一つの営みの蓄積であるわけですが、これらを個別に捉えるだけでは本質的に暮らしを捉えることにはならない、私(たち)は私(たち)を取り巻く環境(≒全体)とともにあるのだという視点を取ります。

そのような理由から、本誌は、衣食住に関することを環境に配慮したものへと少しずつ変えていくために、実践者インタビューや座談会、編集者たちによる実体験レビューで構成されています。個人的には、「シャンプー問題(no.10)」や「睡眠について(no.11)」など、自然志向の強い人たちとそうでもない人とが一緒になって、自分が何を試してみているか、使い心地はどうなのかといったことをおしゃべりする座談会企画をおもしろく読みました。暮らしに関わることについて、他者の考え方を知るだけでなく、自分自身がどのように考えているのかを知ることは、普通に暮らしているとなかなかないことでもあるので。

そして、本誌の最大の特徴はなんといっても、からだやスピリチュアルに関する記事が多いことです。第11回の内容を読み返しながら、次回に持ち越したいと思います。

(1)「フレームワークとマーマーマガジンからあたらしいおしらせ」『murmur magazine』第14号 2011 WINTER, p.47
(2)「Change 変わるメディア murmur magazine」 『環境会議』2009 秋号, p.122

著者について

阿部純

阿部純あべ・じゅん
1982年東京生まれ。福山大学人間文化学部メディア・映像学科講師。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。専門はメディア文化史。研究対象は、墓に始まり、いまは各地のzineをあさりながらのライフスタイル研究を進める。共著に『現代メディア・イベント論―パブリック・ビューイングからゲーム実況まで』、『文化人とは何か?』など。地元尾道では『AIR zine』という小さな冊子を発行。

連載について

阿部さんは以前、メディア論の視点からお墓について研究していたそうです。そこへ、仕事の都合で東京から尾道へ引っ越した頃から、自身の暮らしぶりや、地域ごとに「ていねいな暮らし」を伝える「地域文化誌」に関心をもつようになったと言います。たしかに、巷で見かける大手の雑誌も、地方で見かける小さな冊子でも、同じようなイメージの暮らしが伝えらえています。それはなぜでしょう。そんな疑問に阿部さんは“ていねいに”向き合っています。