農と食をダイレクトに繋ぐことで生まれる
ノーティス(気づき)の取り組み
今津亮 いまづ・りょう

新東名高速道路NEOPASA浜松スマートインターからほど近いところに農園が経営しているレストランがあります。「農+」と書いて「ノーティス」と読ませる店名には、多くの人に美味しい食事を通して、農と食に関する新たな気づきが生まれてほしいという願いが込められています。農園とレストランを経営している今津亮さんにその思いを伺ってきました。

Vol.2  野菜をつくることは、環境をいただくということ

浜松市農園レストランノーティスの外観

農家に生まれなかった人が農業をはじめるのはそう簡単ではありません。農地を手に入れるには法律的な手続きのほか、各自治体によってさまざまな手続きが必要で、一般の不動産物件のようには扱われていません。何より、最寄りの市町村の農業委員会に相談し、既存の農家さんに認めてもらわなければ農地は手に入らないのです。


農+の畑

農+の畑では120種類以上の野菜を季節に合わせて栽培している。


もちろん、新規就農を自治体が支援していたりすると、そのハードルはグンと低くなりますが、技術を取得し経営できるようになるには、さらに年月を必要とします。一般的には農家や農業法人に就職するという形で就農したり、技術を持っていれば個人事業主としてスタートすることは可能で、今津さんは後者の方法で農+を立ち上げました。

浜松市浜北区四大地ノーティス野菜づくりは場所選びからはじまっている。

「耕作放棄地がこれほど問題になっているにも関わらず、農業が簡単にはじめられないというのは意外に思われるかもしれませんが、耕作放棄地になってしまう大きな理由としてインフラの問題が絡んでいることが多いのです」
例えば、田んぼだけでなく畑でも水は不可欠です。今津さんが農園をはじめたときも水を確保することの大変さが身に沁みたといいます。
「はじめた頃の農園では1日に多い時には12トンの水をトラックで運んでいました。運ぶだけでなく、散水するにもガソリンを使いますから、水を撒いているのか、ガソリンを撒いているのか分からなくなるほどでした(笑)」
農業に適した土地であるか見極めることが大事で、野菜づくりは場所選びからはじまっていると語ります。

トマトとシシトウとズッキーニ野菜も販売。野菜目当てのお客様も多い。

「最初に農園をつくったのは借地でした。しかし、しばらくして隣に工場ができたので場所を変えました。それがレストランの隣にあるこの農園です。農業はできれば自然豊かな空気の美味しい場所で行いたいものです。自動車の交通量が多い道路沿いとか、工場の隣というのはできれば避けたい。借地だったのが幸いしました」
作物によっても適地があり、同じ作物でも生食用と加工する用で場所や施肥、収穫のスケジュールなど、栽培プランを変えることもあるのだそう。

農園レストランノーティスの料理

天然真鯛と四葉胡瓜の梅胡麻だれ。


「野菜づくりにはさまざまな要素が複雑に絡み合っています。よく“農薬を使わない”ということだけがピックアップされていますが、私たちからすると、使わないための管理こそ重要なんです。“無農薬”とか、“有機栽培”という言葉に踊らされず、場所や時期、土のことや肥料のことをここにきて知ってもらい、それぞれの味の違いを体感していただき、本当の野菜の味を味わっていただきたいですね」

ノーティスイベントチラシいぶきさらさ食育イベントやミニコンサートを開催することも。

農+ではレストランの休店日を利用して食育のイベント等も開催しています。農は環境そのものであることを実感せずにいられません。

つづく