ぐるり雑考

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歩いていると、たくさんの人に会う

西村佳哲

PCの中に「木の足元」というフォルダーがある。街を歩いて気になったそれを撮り貯めた、さして目的のないコレクションだ。

木は成長にともなって根を張る。枝葉がのびるのは、根を広げることが出来ているから。でないと倒れてしまうし、必要な水分も集めきれない。なので大きくしたくない木は鉢植えで育てられる。けど、地植えの木は環境に合えば着実に大きくなって、たとえばこんな具合になる。

カラーコーン

この木の足元は小さなブロックで路面を舗装。インターロッキング(道路や歩道で使われる舗装材)は、もう少し大きくレンガ的な形状のものが一般的だけど、ここでは六角形という選択。地面が多少隆起しても凸凹を吸収しやすいと考えたか。でも、あまりうまくいっていない。

こちらはもう少し広場的な空間のそれで、足元にも余裕が感じられる。幹の近くは地肌。少し間をとってサークル状の石畳。そして舗装と三段階にわかれていて、きれいだし、隆起も吸収しやすそう。
と思うけど、実は歩行者が多い場所なので踏みつけられることが多く、木の根は不本意かも。こんなふうにちゃんと縁をつくってもらえたら……と羨ましく思っているかも(下写真、右奥にいる)。

擬人化の轍に入ってしまいましたが、人間界に戻って。

日々なにげなく通っている街の細部が、たとえばこんなふうに、結構つくり込まれている。ただ道に沿って木が生えているわけじゃない。デザインを学んでいちばん良かったなと思うのは、隅々を満たしているこうした小さな仕事や、その向こう側にいる働き手のことを想像する回路が育ってしまったことだ。

これは上野・東京文化会館前。会館同様、前川國男さんが設計した可能性が高いか。あるいは外構の造園会社さんが提案したか。いずれにしても、ああでもないこうでもないと考えた痕跡が見えて、楽しくない?


根元

この世界は、誰かが手がけた無数の仕事で構成されている。まだ自分が小さかった頃あるいは生まれてもいなかった頃に、その時代を生きていた人たちが、彼らなりに考えて手を動かした結果が累積している。長く残っているものの大半はまずよく出来ているし、感嘆させられることもある。

その目線で生きていると、人生は「ここまでしてもらっちゃって……」という経験の連続になり、そして働く基本姿勢は「恩返し」になる。いやそれは格好良すぎるか。でも、払った額以上のものをもらっていることの方が多いなと、本当に思うんですよ。

街中でも山里でも歩いていて面白いのは、施された細部の向こうにいる誰かと会えるからですね。その大半はもう亡くなっているわけだけど、この世界にいるのは、いま生きている人だけじゃないんだよなあ。

著者について

西村佳哲

西村佳哲にしむら・よしあき
プランニング・ディレクター、働き方研究家
1964年東京都生まれ。リビングワールド代表。武蔵野美術大学卒。つくる・書く・教える、三種類の仕事をしている。建築分野を経て、ウェブサイトやミュージアム展示物、公共空間のメディアづくりなど、各種デザインプロジェクトの企画・制作ディレクションを重ねる。現在は、徳島県神山町で地域創生事業に関わる。多摩美術大学、京都工芸繊維大学 非常勤講師。

連載について

西村さんは、デザインの仕事をしながら、著書『自分の仕事をつくる』(晶文社)をはじめ多分野の方へのインタビューを通して、私たちが新しい世界と出会うチャンスを届けてくれています。それらから気づきをもらい、影響された方も多いと思います。西村さんは毎日どんな風景を見て、どんなことを考えているのだろう。そんな素朴な疑問を投げてみたところ、フォトエッセイの連載が始まりました。