森里海から「あののぉ」

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仁尾のサクラマス

渓流の川魚ヤマメ。ヤマメは通常「陸封型」と呼ばれ一生涯、川(淡水域)だけで生息します。しかし、時々「降海型」と呼ばれる海に下るヤマメがいます。これがサクラマスと呼ばれる魚で、ヤマメ共々環境省RDB(レッドデータブック)では準絶滅危惧種に指定されている希少な種の魚です。ヤマメは体長30センチ程にしか成長しませんが、サクラマスは50センチを越えるまでに成長します。私自身これまで、サクラマスは北の地方に生息しているもので、瀬戸内海では馴染みがないと思っていました。しかし、なんと地元仁尾漁港で年に数匹サクラマスが揚がるという情報を最近になって知ったのです。

仁尾漁港

朝獲れ朝市

仁尾漁港で時々開催される「朝獲れ朝市」。ここでは一般の人も、仁尾の沖でその朝獲れたばかりの魚が格安で手に入ります。プロのように魚を競り落とせる「せり」にも参加できます。去る4月15日(日)の「朝獲れ朝市」で友人から「サクラマスがせりに出た」という情報が入りました。そのときは時既に遅く、残念ながら他の人が競り落としてしまいましたが、「次回出たら落としておいて」とお願いしておいたところ、幸運にも5月5日の朝市でまたしてもサクラマスがせりにかけられたのです。友人が見事せり落としてくれて、生まれてはじめてサクラマスをいただくことができたのです。

お造りでいただきましたが、以前に紹介した「ビワマス」に良く似た上品な、脂がのった「中トロ」といった風情でとても美味しかったのです。

桜鱒の刺身

サクラマスの刺身(右はアジ)

穏やかな瀬戸内海の中でも特別静かな海と言われる「燧灘ひうちなだ」。なかでも仁尾の蔦島周辺は平安時代「御厨みくりや1」として時の天皇が指定した海域だけのことはあり、豊富な魚介類に恵まれています。美味しい魚をいただくことは、生物多様性の恵みをありがたく実感できるひとときでもあります。この豊かな生物多様性を育む海が、いつまでも維持されることを願わずにはいられません。

(1) 寛治四年(1090)に堀河天皇が瀬戸内沿岸に9個所の御厨を定めて京都賀茂社の神領として寄進された。その御厨の一つが当地・讃岐の国内海津多島供祭所(現蔦島周辺)である。

※ 本連載は、菅組が発行する季刊誌『あののぉ』で著者が連載している内容を転載しています。


菅徹夫

菅徹夫  すが・てつお

1961年香川県仁尾町生まれ。神戸大学工学部建築学科を卒業後、同大学院修士課程にて西洋建築史専攻(向井正也研究室)。5年間、東京の中堅ゼネコン設計部で勤務したのち1990年に香川にUターン。現在は株式会社菅組 代表取締役社長。仕事の傍ら「ベーハ小屋研究会」を立ち上げるなど、地域資源の発掘などのユニークな活動も行う。
一級建築士、ビオトープ管理士