「ていねいな暮らし」カタログ

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「古い家」と暮らしの「まんなか」
——『天然生活』ムック

多くの暮らし系雑誌と同様に、『天然生活』もまた、住まいの空間に特化したムックや「天然生活ブックス」といった出版レーベルを作っています。今回は、『天然生活』が独立創刊してから1年後の2005年に刊行されたムック『「暮らしのまんなか」からはじめるインテリア』(以下、『暮しのまんなか』と略します)を見てみましょう。創刊号の「はじめに」には、次のように書かれています。

『天然生活』のインテリア取材で/いろんなお宅に伺って気づいたことがあります。//心地よい部屋の住人はみんな、/自分たちの生活で大切にしたいこと、/つまり「暮らしのまんなか」を/ちゃんとわかっていました。//だから、ものを選ぶときも迷わないし、無理や無駄が少なくて、でも/部屋のどこを見ても/「その人らしさ」がある。1

「暮らしのまんなか」とは、「自分たちの生活で大切にしたいこと」を指し、「まんなか」を知る人たちのインタビューと住まいの空間からそのヒントを探ることが本誌のコンセプトとなっています。ここで紹介される家はリノベーションされた家が多く、「古い家に住む」ことがベースとなっているようです2。暮らしの知恵は時間をかけて受け継がれてきたものであり、住まいの空間もまたそのような思いを受け取るメディアとしてある。この時に見直したいこととして挙げられるのが、都会での働き方(必ずしも都会の生活がきゅうきゅうとしたものではないと思いますが)や子育てに適した場所についてです。住まいの空間を自らの手で再生しながら、都会で失ったとされる「時間」を取り戻すことに語りの重きが置かれています。2011年3月以降は、ここにエネルギーの問題が大きく入り込み、インフラさえも見直すべき対象として注目されるようになりました。

天然生活表紙

その一方で、本誌内のものづくりを紹介する記事は「乙女DIY」と名付けられた小物作りとなっていて、インタビューで語られることと、本誌が紹介するものづくりとの間にギャップがあるようにも感じられますが……。

「暮らし」とはすでにここにあるものというだけではなく、「まんなか」と言われるようないつの時代にも通用する芯のあるもので、ともすると見えにくくなってしまうものとして考えられているようです。「らしさ」や「古さ」、ここまでの連載を通じて暮らし系雑誌の基本となる言葉が見えてきたように思います。

(1)『「暮らしのまんなか」からはじめるインテリア』(地球丸) 2005年11月 「はじめに」より。 「/」は改行を、「//」は段落替えを意味します。
(2)「いま、古い家にひかれる人が/増えています。/それは、そこに/私たちが忘れてしまった何かが/残されているからかもしれません。/(略)「古さ」の中にあるものは、/人も住まいも自然の一部という、/ずっと変わらない真実なのです」『「暮らしのまんなか」からはじめるインテリア』(地球丸)2007年8月 特集:「古い」を、楽しむリード文章より

阿部純  あべ・じゅん

1982年東京生まれ。福山大学人間文化学部メディア・映像学科講師。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。専門はメディア文化史。研究対象は、墓に始まり、いまは各地のzineをあさりながらのライフスタイル研究を進める。共著に『現代メディア・イベント論―パブリック・ビューイングからゲーム実況まで』、『文化人とは何か?』など。地元尾道では『AIR zine』という小さな冊子を発行。

連載について

阿部さんは以前、メディア論の視点からお墓について研究していたそうです。そこへ、仕事の都合で東京から尾道へ引っ越した頃から、自身の暮らしぶりや、地域ごとに「ていねいな暮らし」を伝える「地域文化誌」に関心をもつようになったと言います。たしかに、巷で見かける大手の雑誌も、地方で見かける小さな冊子でも、同じようなイメージの暮らしが伝えらえています。それはなぜでしょう。そんな疑問に阿部さんは“ていねいに”向き合っています。