「ていねいな暮らし」カタログ

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「ザ・雑誌」な暮らし系雑誌
——『天然生活』

今回は、暮らし系雑誌にとって記念すべき(?)年となった2003年に誕生した『天然生活』を見てみましょう。『天然生活』では、「小さなこだわり 小さな暮らし」をテーマに、料理や収納術といった暮らしのノウハウが紹介されます。創刊号の終わりには、「記事を参考にあなたの「小さなこだわり」を探していただけたらうれしいです。」1とあるように、読者の実践へと繋げたい思いが込められているようです。

創刊号を見てみたところ、料理レシピのページでは調理過程の写真は非常に小さく、場合によっては掲載されないこともあり、その代わりにページの7割近くを使って完成品の写真をドンと載せていることが意外でした。『天然生活』は初期の表紙もそうですが、ミニチュア世界のような愛らしい小物とともに演出された写真が多いことも特徴であると思います。その意味では、いわゆる「ナチュラル」な写真ではなく、とてもカラフルな印象です。「暮らし」をメインにする雑誌は、ものづくりのプロセスの伝え方にこだわることが多いように思っていましたが、『天然生活』においてはできあがったものの見せ方へのこだわりが優先されているようです。毎号、料理、掃除・収納、服の選び方といった決まった項目が掲載されることや、「料理上手の1週間」や暮らしに関するイベントカレンダーなどの情報のまとめ方などを見ると、商品カタログ的な「ザ・雑誌」と言わんばかりのスタイルが踏襲されているようにも思います。

このことは誌面のつくりにも表れていて、『天然生活』には雅姫氏や、根本きこ氏といった今となっては暮らし系雑誌の常連の人たちが毎号のように出てきて、自分たちの暮らし方やこだわり、モットーを箇条書きで紹介する形をとっています。このようなセレクターは初期の『ku:nel』でも大きな存在感がありましたが、『天然生活』ではその創刊号からセレクターが唐突に出てくるので、何も知らない人にとっては置いていかれるような気持ちにはならないかといらぬ心配もしてみたり。「小さな暮らし」も大きな理想を持ってこそ、ということなのかもしれません。

(1)『天然生活』1号 2003年11月 最終ページ

著者について

阿部純

阿部純あべ・じゅん
1982年東京生まれ。福山大学人間文化学部メディア・映像学科講師。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。専門はメディア文化史。研究対象は、墓に始まり、いまは各地のzineをあさりながらのライフスタイル研究を進める。共著に『現代メディア・イベント論―パブリック・ビューイングからゲーム実況まで』、『文化人とは何か?』など。地元尾道では『AIR zine』という小さな冊子を発行。

連載について

阿部さんは以前、メディア論の視点からお墓について研究していたそうです。そこへ、仕事の都合で東京から尾道へ引っ越した頃から、自身の暮らしぶりや、地域ごとに「ていねいな暮らし」を伝える「地域文化誌」に関心をもつようになったと言います。たしかに、巷で見かける大手の雑誌も、地方で見かける小さな冊子でも、同じようなイメージの暮らしが伝えらえています。それはなぜでしょう。そんな疑問に阿部さんは“ていねいに”向き合っています。