まちづくりで住宅を選ぶ

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なぜ、スイーツ店は個店の方が優れているのか

AgitÁgueda

我々が購入する商品にはいろいろな分類の仕方があります。よく知られているのは買回品と最寄り品。買回品とは一般的には滅多に買わなかったり、高級であったりすることで、消費者がいくつかの店舗を「買い回り」比較するような商品で、高級スーツであったり、楽器などです。最寄り品は、それに対して比較購買をほとんどしない普通生活雑貨のようなものです。

また、ある人にとっては日用品的なものであっても、それに拘る人にとっては特別な「買回品」的な商品もあります。スイーツなどはまさにその典型的商品だと思います。スイーツは砂糖という魔法のような原材料を使っているため、コンビニエンス・ストアやスーパーマーケットで販売しているような商品でもそこそこ美味しいかと思います。しかし、美食を追求するようなスイーツに拘るタイプの人にとっては、それでは不十分なのでしょう。さらに美味しいスイーツを求めることになります。なぜなら、スイーツはしっかりと丁寧につくればつくるほど、そして技術がしっかりしていればしているほど美味しくすることができるからです。

さて、しかし、美味しいスイーツを手がける独立店のパティシエたちは、手作りを基本とするので量産が難しい。しかも、味に拘って生クリームや生チョコレートなどを用いると日持ちはしない。そうすると、美味しいスイーツは地元の個店で購入するのがベストな選択肢ということになります。逆にいえば、近くに美味しいスイーツ店がないと、なかなか美味しいスイーツにはありつけないことになる。したがって、美味しいスイーツを自分へのご褒美にたまに食べたいな、と思う方は、それを前提として住む街を選ぶことをお勧めします。

服部圭郎まちづくりで住宅を選ぶ第4話自由が丘の商店街

スイーツの街自由が丘は、お菓子の街のような雰囲気がにじみ出ていてる。

さて、それでは話題を先週にまで戻して、なぜ自由が丘にそんなにスイーツが集まったのか、を解説したいと思います。これに関しては、『自由が丘スイーツ物語:ケーキで人を幸せにする街』(阿古真理著)という素晴らしいネタ本があります。その本で書かれている内容を私的に整理させてもらうと、大きな理由の一つは歴史。日本で最初にシュークリーム、モンブランを出したお店が自由が丘であったこと。ダロワイヨも日本一号店は自由が丘。そして、前回もちょっと話をしましたが、そのステータスをさらに浮揚させたのが「スイーツ鉄人」の辻口博啓氏。辻口氏は最初の店舗を自由が丘に出すことに拘るのですが、それは「駅が小さく」て、「お菓子の街みたいな雰囲気がにじみ出ていて、いい街だな」という印象を持ち、気に入ったからだそうです。そして、辻口氏の「モンサンクレール」でスイーツの知名度がさらにアップした自由が丘には、良質な店が以前よりも集まるようになってきました。都市の経済学で言う「地域特化の経済」という利益が、自由が丘においては顕在化されたのです。

自由が丘がいかにスイーツの街として優れているかを、近くのライバルである二子玉川と比較してみましょう。


服部圭郎  はっとり・けいろう龍谷大学政策学部教授

1963年東京都生まれ。東京大学工学部卒業、カリフォルニア大学環境デザイン学部で修士号取得。某民間シンクタンク勤務、明治学院大学経済学部教授を経て、現職。 専門は都市計画、地域研究、コミュニティ・デザイン、フィールドスタディ。 主な著書に『若者のためのまちづくり』『人間都市クリチバ』『衰退を克服したアメリカ中小都市のまちづくり』『ドイツ・縮小時代の都市デザイン』など。技術士(都市・地方計画)、博士(総合政策学)。