色彩のフィールドワーク:もてなす緑

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適度な目隠しとなる緑
––ケア用品店の店先にて

年が明け、厳しい冷え込みが続いています。関東も何十年ぶりかの低気温とのことで、この寒さを体験したことのない世代も多いのでは、等ということを考えています。

よく買い物をするまちを歩いていたら、通りのコーナーに面したお店が洋品店からスキン・ヘア・ボディ関連のケア用品を扱うお店に変わっていました。真っ白な外観と、小路に面した大きな開口部が目を惹きます。周囲をぐるりと歩いてみると、植栽により店内の様子が適度に目隠しされていることに気が付きました。店内と舗道には高低差があるため、店舗の正面まで来ないと店内全体の様子は伺えません。お店ですから、店内の人の動きも賑わいの一部となりますが、カウンセリングを受けながら買い物をするお客様の気持ちも考慮されているのでしょうか、特にコーナーのシンボルツリーがちょうど良い目隠しとなっているように感じました。

色彩のフィールドワーク:もてなす緑 加藤幸枝aesopイソップ店舗 スキンケアヘアケアボディケア製品ボタニカルスキンケアブランド

木製の建具がアクセントとなっている店舗入口。

緑のスクリーンまで行かなくとも、こうした見せ方のコントルールは可能なのだなと感じます。ガラスが反射してしまうので上手く写真が取れませんでしたが、店内にもグリーンがあって、外との緩やかな連続性も感じられました。
このお店は全国にいくつもの店舗があり、いずれも大変潔く、余分な装飾や情報が排除された環境となっています。写真の店舗ができた場所も周囲はドラッグストア等が集積し、大変カラフルなのですが、店内に入るとまちの喧騒から逃れるような、ほっとひと息つける感覚を味わうことが出来ます。

色彩のフィールドワーク:もてなす緑 加藤幸枝aesopイソップ東京自由が丘店フランスの建築家集団 シグー(Ciguë)

左下、柱の前にあるのは犬のための水が入ったボウルでした。
もう少し暖かくなったら、ここにベンチが欲しくなりますね。

インターネットの普及により、特に重いもの・かさ張るものは宅配してもらった方が圧倒的に便利になりつつあります。自身は生活用品の中ではお米を筆頭に、店舗に行かなくなる割合も徐々に増えていますが、一方では実店舗で「環境や空間の体験」をすること、そして「その場所で・その人から買う」という行為が自身の心持を大きく変化させることもあります。
ちょっとした緑の高さやボリューム、配置などから読み取れることがこんなにも多くあるのだな、というのがこのコラムを書き始めての実感です。日々、膨大な情報を浴びせられつつも、まちを使う・使いこなすための視点や視座のようなものを持つことができると、まちの微細な変化に気付けるようになるかしら……と考えています。

ちなみに、自身がこの店舗を利用するようになったのは、松浦弥太郎さんのエッセイがきっかけでした。毎日、仕事前にここのハンドクリームでマッサージをすることが、リラックスしつつも仕事モードへと切り替えるという“儀式”なのだとか。自身は毎朝続けてはいませんが、まだまだ厳しい冷え込みが続きそうな2月、こまめに自分のメンテナンスをしながら寒さを乗り切りたいと思います。

色彩のフィールドワーク:もてなす緑 加藤幸枝測色日本塗料工業会(JPMA) J版 塗料用標準色見本帳 ポケット版

測色の様子。濁りのない、高明度のホワイトです。

ウエルカム感   ★★★★
ボリューム感   ★★★★
全体のカラフル感 ★★

※ごく個人的な判定ですが、この3つの指標に記録をして行きます。必ずしも★が多いことが良いという訳ではなく、シンプルでもカラフル度が高くて楽しいなど、演出のポイントや効果の発見に繋がると面白いなと考えています。


加藤幸枝

加藤幸枝  かとう・ゆきえ色彩計画家

1968年生まれ。カラープランニングコーポレーションクリマ・取締役。武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒後、クリマ入社。トータルな色彩調和の取れた空間・環境づくりを目標に、建築の内外装を始め、ランドスケープ・土木・照明デザインをつなぐ環境色彩デザインを専門としている。自著「色彩の手帳-50のヒント」ニューショップ浜松にて販売中。

連載について

色彩計画家の加藤幸枝さんが綴る、「まちの緑」に着目したフィールドノートです。加藤さんは、店先の緑は看板より人の心を動かすうえで効果的であると言います。店先にプランターを置いたり、外装を植物で覆ったりするなど、店と歩道や道路との間で、緑を生かした空間づくりが少しずつ目立つようになっているそうです。それは、街ゆく人と店とのコミュニケーションの架け橋になっているとも言えるかもしれません。加藤さんがふだんの生活の中から見つける緑のあり方から、まちへ開く住まいづくりのヒントが見つかるでしょう。