「ていねいな暮らし」カタログ

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「ましかく写真」の魅力とは——『カメラ日和』

今回もまた、『カメラ日和』を取り上げます。なぜかといえば、本誌のバックナンバーに「I LOVE ましかく写真」特集号(2006年9月号vol.8)を発見してしまったからです。写真については第5回でも触れましたが、Instagramができる前の2006年につくられた「ましかく写真」特集ということで、日常写真への注目の仕方が気になるところです。

本号では、「ましかく」性と日常とのつながりとして、ポラロイドカメラに焦点があてられていました。というのも、ポラロイドカメラが「その場で」撮った写真を見て楽しめるカメラの代表格としてあったからです。カッチリとした記録写真を撮るというよりも、「何気ない瞬間1」を撮るもの、「色合いが独特2」なものとして紹介され、日常を均一なフレームに落とし込む質感が強調されています。

Jun Abeさん(@jun_abe)がシェアした投稿

そのほかにも、「ましかく写真」を撮ることができるカメラの歴史や、ハーフカメラを改造して正方形の写真を撮る方法などが紹介された後に、理論編としてデザイナーの松田行正氏へのインタビュー記事が掲載されていました。松田氏が言うには、「正方形というカタチそのものが、均衡がとれていて、そもそもが美しい形態です。ですから、どんなイメージにも正方形のフォーマットをあえてはめてみると、不思議なことに、美しく見えてしまいます3」とのこと。同号に載っている写真家masacova!氏も、正方形写真について「すごく美しい」「他のフィルムサイズに比べて、シンプルでいさぎよい4」と言い、ここでも正方形フレームによる「美」という話につなげられています。なかなか確定的なことが言えずにもどかしいですが、日々の風景を「美しく」「潔く」見せようとすることと正方形フレームは、とても相性が良いということが言えそうです5

おもしろいのは、この松田氏インタビューページの締めくくりのところで、「デジカメでも正方形フォーマットが搭載されたカメラが開発されると、ちょっとしたブームになるかもしれませんね」(編集者)と結ばれていたことです。まさに今を写すかのようですね。

(1)『カメラ日和』vol.8 2006/9月号p.18
(2)同号p.35
(3)同号pp.40-41。松田氏は正方形の安定感に加えて、サイコロのように右にも左にも転がっていきそうな不安定感が同居していることも、正方形の魅力の一つではないかと述べています。
(4)同号p.57
(5)『カメラ日和』vol.47 2013/3月号では、光や絞りといった撮影の基本の”き”について説明されていて、その中のフレーミングの項目でも「ましかく」が取り上げられています。この号もまた、いろんな写真家の撮影時の工夫が垣間見られる素晴らしい号になっていますので、どこかでご紹介できたらと思っています。



阿部純  あべ・じゅん

1982年東京生まれ。福山大学人間文化学部メディア・映像学科講師。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。専門はメディア文化史。研究対象は、墓に始まり、いまは各地のzineをあさりながらのライフスタイル研究を進める。共著に『現代メディア・イベント論―パブリック・ビューイングからゲーム実況まで』、『文化人とは何か?』など。地元尾道では『AIR zine』という小さな冊子を発行。

連載について

阿部さんは以前、メディア論の視点からお墓について研究していたそうです。そこへ、仕事の都合で東京から尾道へ引っ越した頃から、自身の暮らしぶりや、地域ごとに「ていねいな暮らし」を伝える「地域文化誌」に関心をもつようになったと言います。たしかに、巷で見かける大手の雑誌も、地方で見かける小さな冊子でも、同じようなイメージの暮らしが伝えらえています。それはなぜでしょう。そんな疑問に阿部さんは“ていねいに”向き合っています。