「ていねいな暮らし」カタログ

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「長い」ものに巻かれてみる
——『d long life design』

今回は、D&Dの『d long life design』における「ロングライフデザイン」の探り方について、解剖してみたいと思います。

まずは、表紙を見ます。『d long life design』の表紙は、上部が白地に大きくタイトル「d」を出した部分、下部にはその号の内容が載っているのですが、下部の下地には誰もが見たことのあるブランド(伊勢丹やTOPSなど)の包装紙の象徴的な部分が使われています。包装紙自体も大事な「ロングライフデザイン」の一つであり、それを表紙の素材として取り上げるというのは新しい試みだと思います1

d long life design

本誌の内容は、土田真理子氏による「日本デザインコミッティー物語」、川上典李子氏が世界中のデザイナーに会う「取材ノート」、深澤直人氏によるその名も「ふつう」という連載物がおなじみのコンテンツとなっていました。端的にまとめれば、歴史、横の広がり、当たり前の観点からデザインの輪郭を探るということになるでしょうか。他には、各ブランドの1号店を訪ねる「一号店をたずねて」というシリーズもありました。どんなブランドにもはじまりがあります。今や有名となったブランドの開店当時の写真と300字程度の文章がセットで紹介されています。

そして、今の『d design travel』の系譜に連なるシリーズとして外してならないのが、2007年のvol.15から始まった「NIPPON VISION」の連載です。北から順に1県ずつ取り上げ、その県で長く使われている一つの物について、その土地のデザインに関わる人が紹介するというもので2、その土地にそれぞれのものづくりがどのように根づいたかという歴史物語が発掘されます。語り手がつくり手ではないことも特徴的で、機能性よりも物の背景の方に文量が割かれています。

ナガオカ氏は、「本当にいいデザイン」(vol.10)という言い方もしています。「本当に」と強調するということは、「いいデザイン」の基準が既にあるとも言え——それはどうやら「東京」的な基準となるようなのですが——それに「歴史」=ロングを付け加えることで「本当」らしさを意味づけるという形をとっています。このような語り方は、今や「ていねいな暮らし」を語る主要な方法論となりました。しかし、このような「ロング」にもさまざまな語りがありうるはずです。物の歴史を見ていくのか、使い心地を語るのか。今後はこのような語りの違いにも注意しながら考えてみたいと思います。

(1)D&Dでは、お店で何かを買った際に渡される紙袋も他ブランドの紙袋をリサイクルして使用しています。初めてそれを手にした時にはびっくりしましたが。(笑)
(2)例えば、北海道の回ではジンギスカン鍋、宮城では竹細工が紹介されていました。

著者について

阿部純

阿部純あべ・じゅん
1982年東京生まれ。福山大学人間文化学部メディア・映像学科講師。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。専門はメディア文化史。研究対象は、墓に始まり、いまは各地のzineをあさりながらのライフスタイル研究を進める。共著に『現代メディア・イベント論―パブリック・ビューイングからゲーム実況まで』、『文化人とは何か?』など。地元尾道では『AIR zine』という小さな冊子を発行。

連載について

阿部さんは以前、メディア論の視点からお墓について研究していたそうです。そこへ、仕事の都合で東京から尾道へ引っ越した頃から、自身の暮らしぶりや、地域ごとに「ていねいな暮らし」を伝える「地域文化誌」に関心をもつようになったと言います。たしかに、巷で見かける大手の雑誌も、地方で見かける小さな冊子でも、同じようなイメージの暮らしが伝えらえています。それはなぜでしょう。そんな疑問に阿部さんは“ていねいに”向き合っています。