色彩のフィールドワーク:もてなす緑

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カラフルなしめ飾り
––生地屋さん店の店先にて

クリスマスが過ぎるとあっという間に年末モードがやってきます。華やかなイルミネーションと正月飾りが混在する光景にも、すっかり慣れてしまったように感じます。
何かと慌ただしい師走ですが、仕事納めの頃(多くの会社は、12月28日や29日あたりでしょうか)になると、通勤電車の車内が空いてきて、年内の営業を終えるお店も目立ち始めます。大掃除を終えた店先が・まちが何だかきれいになった感じがして、キンとした冬の空気と相まって、歩きなれた道でもいつもとは違った表情だなと思うことがあります。年末の慌ただしさから静けさへと移り変わる境目を行き来しながら、あれこれ買い物をしたり、今年の出来事に思いを馳せてみたり。大みそかから三が日にかけての人気の少なくなったまちが好き、という方も少なくないのではないでしょうか。

今日(※12月28日にこの文章を書いています)白くてつやつやとしたマンションのエントランスに、立派な門松が置かれている場面を見かけました。都心の大規模な商業施設などにも見られる光景ですが、見慣れてしまったせいかさほどミスマッチな印象は感じなくなり、むしろ「ああ、いよいよお正月だなあ」と思わせてくれる季節の彩りとなっています。また、住宅や店舗の玄関先に飾られるしめ飾りは、随分とカラフルなもの・華やかなものを見かけるようになりました。縄を編んだものでも金色の水引や紅白の花が入ると、ぐっと華やかさが増し、現代の住宅によく似合っているな、と感じます。

このお店のものは、毛糸でつくったぽんぽんが付けられていました。飾りに橙やマツボックリを使いますから、そのモチーフを丸い毛糸玉で見立てたようにも見えます。ごく小さな色合いながら、店内のカラフルなファブリックと共に、ぱっと人目を惹く設えでした。ちょっとした工夫でそのお店らしさを表わしている様子が楽しく、つい店内へと足を踏み入れてしまいました。

色彩のフィールドワーク:もてなす緑加藤幸枝カラフルなしめ飾り——生地屋さん店の店先にて

店舗の正面は白、側面の壁が深みのある赤系で、そのコントラストが落ち着きのある印象を与えています。

色彩のフィールドワーク:もてなす緑加藤幸枝カラフルなしめ飾り——生地屋さん店の店先にて

測色の様子。

その帰り道、私も「色彩計画事務所らしい」しめ飾りが欲しくなってしまい、良く尋ねるお花屋さんに行き初めてカラフルなものを購入してみました。スタッフもとても喜んでくれ、午後の大掃除がおおいにはかどりました。でも本当はこうしたもののデザインをゆっくり考え、手作りする地時間と気持ちの余裕が必要だな…と、少し反省もしています。

色彩のフィールドワーク:もてなす緑加藤幸枝カラフルなしめ飾り——生地屋さん店の店先にて

事務所用に購入したしめ飾り。気持ちよく新年を迎えられそうです。

現代は様々なモノに溢れ、豊富な(いささか、豊富過ぎる)選択肢に満ちています。それなのに自身は、玄関先のしめ飾りを「自分たちの仕事に似合うもの」という観点で選んでいなかったのだ、ということに気付かされました。2018年はより丁寧に「ふさわしさ」ということについて、考えて参りたいと思います。

ウエルカム感   ★★★★
ボリューム感   ★★
全体のカラフル感 ★★★★

※ごく個人的な判定ですが、この3つの指標に記録をして行きます。必ずしも★が多いことが良いという訳ではなく、シンプルでもカラフル度が高くて楽しいなど、演出のポイントや効果の発見に繋がると面白いなと考えています。



加藤幸枝

加藤幸枝  かとう・ゆきえ色彩計画家

1968年生まれ。カラープランニングコーポレーションクリマ・取締役。武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒後、クリマ入社。トータルな色彩調和の取れた空間・環境づくりを目標に、建築の内外装を始め、ランドスケープ・土木・照明デザインをつなぐ環境色彩デザインを専門としている。自著「色彩の手帳-50のヒント」ニューショップ浜松にて販売中。

連載について

色彩計画家の加藤幸枝さんが綴る、「まちの緑」に着目したフィールドノートです。加藤さんは、店先の緑は看板より人の心を動かすうえで効果的であると言います。店先にプランターを置いたり、外装を植物で覆ったりするなど、店と歩道や道路との間で、緑を生かした空間づくりが少しずつ目立つようになっているそうです。それは、街ゆく人と店とのコミュニケーションの架け橋になっているとも言えるかもしれません。加藤さんがふだんの生活の中から見つける緑のあり方から、まちへ開く住まいづくりのヒントが見つかるでしょう。