びおの珠玉記事

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活き車海老、届きました!

車海老・豆知識

さて、おいしくいただいた車海老について、少し調べてみました。
クルマエビはクルマエビ科の大型種で、エビ類の水産上、最も重要な種とされます。
多くは体長20cm以下ですが、大きいものは25cm〜30cmにも達します。
体が左右にやや平たく、泳ぐのに適した遊泳型の体形をしています。
日本で食用とされるエビの大部分がクルマエビ科で、その中でも代表的なのがクルマエビです。
甘みが濃くて身がやわらかいクルマエビは、どんな調理法にも向きます。
エビの中で味、値段ともに最上クラスの高級品とされます。

<名前の由来>

クルマエビは、淡い褐色か青灰色の地に、茶褐色か青褐色の縞模様があります。(多くは淡い褐色の地色に茶褐色の太い縞模様)縞は頭胸甲では斜めに、腹部では横に走っています。
腹部を丸めた時にこの縞模様が車輪のように見えることが、「クルマエビ」の名前の由来です。

「ホンエビ」、「マエビ」、「マダラエビ」の別名もあります。
また、重さ20g以下、体長7〜8cmまでのものを「サイマキ」、重さ20〜25gのものを「中マキ」、重さ40gまでのものを「マキ」と呼びます。

<クルマエビの美味しさ>

クルマエビはエビ類の中で最も美味だといわれます。
エビ類の旨みは、筋肉エキスの中のアミノ酸組成と関係があります。
エビの甘味は、遊離アミノ酸であるグリシンに由来します。
クルマエビのアミノ酸組成を調べると、グリシンとアルギニンの量が他のエビよりも多いのだそうで、味のよさを立証しているといえます。

<生活・生態>

クルマエビは夜行性で、昼間は砂泥中に浅く潜っています。夜になると餌を求めて動き出し、ゴカイや貝類などを捕食します。
繁殖期は夏(6〜9月)で、交尾・産卵は水深15〜20mの深みで行われます。
体長20cmの雌で70万〜80万粒の卵を、泳ぎながら海中に産み放ちます。卵は直径0.2mmほど。
13〜14時間後に、卵から「ノープリウス幼生」が孵化します。
幼生期は、成体とはほど遠い姿で浮遊生活を送ります。
ノープリウス幼生は35〜36時間の間に6回脱皮して体長0.8〜0.9mmの「ゾエア幼生」になり、5〜12日間で3回脱皮して体長3mmほどの「ミシス幼生」に成長します。
さらに6日間で3回脱皮して、ようやく最小の成体形=クルマエビの形になります。
稚エビは海底での生活に移ります。
成長は早く1年で成熟し、繁殖後に死にます。ごく少数、満2年近く生きるものもあります。

<分布>

日本では東北地方以南の各地の内湾、河口近くから水深100mくらいまでの砂泥底にすんでいます。
また、日本から東南アジア、オーストラリアにかけての太平洋、インド洋の沿岸域に広く分布しています。近年では紅海、スエズ運河を経て地中海にも侵入し、現地でも重要種となっています。

<漁獲・養殖>

養殖が盛んで、国内生産は天然、養殖の割合が半々くらいです。生きたまま出回っているのは養殖物が多いとされます。
1960年代から幼生を大量に養殖する技術が確立されました。
各地で完全養殖が行われている一方、地方自治体などが中心となって種苗生産、中間育成および放流を行い、天然資源を補っています。
そして最近では天然・養殖を問わず輸入物のエビが非常に多く、1年を通して出回っています。

車エビ

知っていますか? エビの養殖・輸入が抱える問題

<世界でも有数のエビの消費国、日本>

日本人は大変なエビ好きで、日本は世界でも有数のエビの消費国です。
エビは和洋中のいろいろな料理に使われて、食生活になくてはならない食材になっています。
日本のエビの輸入は、1957年に1,482トンが輸入されたことに始まりました。
当初は中国や韓国から輸入されていましたが、1961年に輸入自由化政策がとられると、東南アジアを主とする世界各国からエビが輸入されるようになりました。
そして輸入量も年々増加していきました。
日本はかつて世界一のエビ輸入国でした。1998年にアメリカ合衆国に追い抜かれました(1998年のアメリカの輸入量は27.2万トン、日本は23.9万トン)が、日本のエビ輸入世界一は1970年代から20年以上も続きました。
なお、エビの1人当たりの消費量は、現在でも日本がアメリカを上回っています。
日本のエビ輸入量のピークは1994年で、30万トンの大台を突破しました(30.5万トン)。
このとき、1日に1000万ドル(10億円)以上、プール一杯(50×25×1mの容積)のエビが買われ、日本人は、大きなエビで年に100尾近く食べていた計算になるそうです。
しかし、1991年から92年にかけての日本経済のバブル崩壊後、エビのバブルも一足遅れではじけました。輸入量は減少し、98年以降は23〜24万トンの範囲で推移しています。
それでも、エビの輸入量は世界第2位。
日本が世界でも有数のエビ輸入国・消費国であることに変わりはありません。
日本のエビ類の自給率はたったの5%しかなく、ほとんどは他国からの輸入品です。
主に、ベトナム、インドネシア、インド、中国、タイ、ロシア、ミャンマー、カナダ、グリーンランド(デンマーク)、フィリピンなどから輸入しています。

<エビ養殖の隆盛>

さて、この20年ほどの間にエビ生産に関して起きた最も大きな変化は、養殖エビの大隆盛だとされます。
大きく分けて、次のような養殖が行われています。
・粗放養殖
意図的に稚エビを採集して汽水池に放養・収穫する方法です。エサや薬品を与えずに、エビの成育をほぼ自然に任せます。集約型養殖に比べると広い池が必要になります。
・集約型養殖
人工的につくった池でエビを養殖する方法です。人工的なエサや薬品を与え、水車を使って水中に酸素を送り込むなどの工夫をし、狭い池で多くのエビを育てることができます。

<エビ養殖の抱える問題>

しかし、エビ養殖はいろいろな問題を抱えています。
1つは、地域資源の濫用と環境破壊により、地域住民の暮らしを脅かしていること。
エビ養殖場の建設・操業は土地や水などの資源を占有し、地域における慣行的利用に比べ、自然環境に短期間に多大な影響を与えます。
具体的には、土地の囲い込み、マングローブ林の破壊、周辺水系・土壌の汚染が主な問題になっています。

・土地の囲い込み
エビ養殖池は主に沿岸に建設されます。養殖池建設が決まるとその土地は鉄条網で囲いこまれ、地域住民は自給食料であった魚介類の採集、水路の運行などの昔からの慣行的利用ができなくなります。
海岸の囲い込みは、特に零細な沿岸漁民にとって、深刻な問題です。

・マングローブ林の破壊
従来、熱帯アジア沿岸のマングローブ林消失の主な原因は、沿岸住民による燃料確保のための過度の伐採と、水田への転換であると考えられていましたが、80年代に始まったエビ養殖ブーム以降、エビ養殖場の建設がマングローブ林消失の最大の原因だとされています。
マングローブ林の減少は特に80年代に著しく、この時期のエビ生産量の急増と時をほぼ同じくしています。
現在、東南アジア諸国はマングローブの伐採を厳しく制限していますが、その規制が全体に有効に機能しているとは考えにくい状況なのだそうです。
マングローブは無料の共有財で、枝・幹は薪や木炭の燃料、住宅用建材として、葉はその屋根やタバコに、実は食料に、と多様に利用されており、マングローブ林の消失は、周辺住民の暮らしに大きな影響を及ぼします。
また、最も重要なのは、防風林・土留めとして熱帯のサイクロンがもたらす高潮から住民の家屋、生命と財産を守る役割だとされます。
2004年12月26日、スマトラ島沖地震・津波が起き、二十数万の人が一瞬のうちに命を失いました。
マレーシアのペナン島などいくつかの地域は、マングローブのおかげで津波被害が最小限に済んだといいます。
大津波後、マレーシアのアブドゥラ・バダウィ首相は、マングローブ林が津波被害の防止に役立ったとして、マングローブ林の保全と、再植林を指示しました。
ここで、日本はマングローブ木炭を大量に輸入している、ということにも触れておきたいと思います。

・周辺水系・土壌の汚染
集約的エビ養殖場の水の利用量は大きいので、養殖場の取水・滞留水・排水は地域の暮らしに甚大な被害を与え得るのです。
集約型養殖では高栄養な人工飼料が大量に投与されます。
また、バクテリアの数・生産量も著しく増加するため、エビの病気の発生を防ぎ、同時に成長を促すために、さまざまな薬品が投入されることになります。
これらを含む水が周辺水系に排出され、排水は河川・運河を経て、最終的には沿岸海へと放流されます。
化学薬品の拡散に関しては抗生物質に対する耐性菌の出現が、バクテリアについては自然生態系に及ぼす影響も危惧されていますが、こうしたことを明らかにしようとする調査はほとんど行われていないそうです。
一般に、生産性の低下と病気による死滅のために、集約養殖池は5年、準集約養殖池(集約池ほど管理が強くない)は10年で廃棄されます。

また、社会経済学者の村井吉敬さんは、著書『エビと日本人Ⅱ―暮らしのなかのグローバル化』の中で、「エビは、やはり食べ過ぎであると言わざるを得ない」として、次の要因を挙げています。
以下、抜粋します。

●養殖エビは環境にやさしくない。
多くの養殖池は、マングローブ林を破壊して成り立っている。養殖のプロセスで使われる人工飼料は、ほかの魚を成分にしており、これも環境上あるいは資源上よろしいとは言えない。
●エビは安全な食べものかどうかということに対してはっきりと「イエス」とは言えない面がある。
抗生物質やその他の薬品について、残念ながらはっきりした答えが出せていない。日本の検疫でも食品衛生法違反の事例が多数あげられている。
●輸入に依存しすぎる。
エビの場合は極端と言えるほどの輸入依存である。
日本の食料自給率は40%を割り込んでいる。もっと身近な食糧生産を心がけていく必要がありはしないか。
魚介類は有限な資源に近い。獲りすぎれば資源再生にならなくなる。養殖も必ずしもサスティナブル(持続可能な)産業と言い切ることはできない。
●背ワタを朝から晩まで取り続ける労働者のこと、あるいは池でその日その日に雇われ、最低賃金水準すら稼げない人びとのこと。労働疎外や貧困に関わること。
何もエビに限ったことではなく、南北構造に関わるだけの問題でもない。労働疎外ということで言えば、それは世界中にあふれているが…
北の言わば豊かな側が、南の貧しい側との間の経済格差や技術格差を利用して、ひたすらおいしいものにありつける構造は、やはり人間として気にかけなければならない問題なのではないだろうか。
エビを食べながら、南の貧しい人たちのことを気にかけよ、というようなことを言っても実に無力であるばかりか、反感すら買いかねない。
バナナ、エビ、コーヒー、チョコレートなど、おいしいものを、南の人とともにおいしくできる世界の仕組みを考え、その実現に向かっていこう、ということくらいしか言えないのである。
●グローバル化の進展。その中でのアジア、特に中国、インド、ベトナムなどの台頭。ここでいうグローバル化は主としてモノの移動(貿易)の飛躍的な拡大である。
流動性の高いカネが短期利益を求めアジアに集中、それがアジア通貨金融危機を招いたようなモノの移動やその生産技術の移動の激しさが21世紀の特徴になってきているとさえ思える。
カネは機を見るに敏かもしれない。しかしモノの移動やそれを支える技術の移動までこのようなグローバル化の波に呑み込まれて大丈夫なのだろうか。
モノを支えるのは技術、技術を支えるのは人間、その人間は究極のところカネだけで支えられるわけではないだろう。自然あっての人間であり、環境に生かされての人間であろう。

大量のエビを輸入・消費している日本。
これらの問題は、現在、我々に与えられた課題である、といえます。

静岡県浜松市のとあるスーパーマーケットにて、どんなエビが売られているか、調べてみました。(2010年07月23日 金曜日当時)
●ベトナム産 ブラックタイガー海老(養殖・解凍) 1尾58円(バラ売り)
●ベトナム産 海老大・養殖・解凍 ブラックタイガー
大きいもの 5尾 580円
上のものより小さめのもの 10尾 580円
●タイ産 バナメイ海老(養殖・解凍) 100g当り78円

●カナダ産 有頭甘海老(刺身用)解凍 100g当り98円

●カナダ産 甘海老お造り 7尾(大根のツマや紫蘇なども入っている) 350円
記者は最近エビを買っておらず、意識もしていなかったため、価格の相場を知らないままにスーパーへ行ったのですが、特にバナメイ海老と有頭甘海老の安さにかなり驚きました。
そして、やはり輸入のものばかり。
売られていたのはベトナム、タイ、カナダから輸入されたもの。
記者が海老をしげしげと見つめている横で、お母さんと中学生と思われる娘さんが、「今日は海老フライにする?」「じゃあ200円台のものを3パックくらい」という会話を交わしながら、バナメイ海老を買い物かごに入れていきました。
記者(30代後半)が子どもの頃は、海老フライというとちょっと特別な日の「ごちそう」で、「海老は高いもの」というイメージが強かったです。
エビ事情は、その頃とはかなり変わっているのですね。

車海老購入先
マツスイ活魚センター
http://item.rakuten.co.jp/matsusui/c/0000000131/(リンク消滅)

参考資料
・エビと日本人Ⅱ―暮らしのなかのグローバル化(岩波新書)(村井吉敬 著、岩波書店、2007年)
・アジアのエビ養殖と貿易(多屋勝雄 編著、成山堂書店、2003年)
・モノから知る日本と世界の結びつき①―食べるモノから見る、日本と世界―(保岡孝之 監修、学習研究社、2006年)
・食材魚貝大百科 第1巻 エビ・カニ類+魚類(多紀保彦・武田正倫・近江卓 監修・執筆、中村庸夫 企画・写真、平凡社、1999年)
・旬の食材 夏の魚(講談社 編、講談社、2004年)

(2010/07/23の過去記事より再掲載)