びおの珠玉記事

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牡蠣の旬は本当に冬?

牡蠣

「海のミルク」

生牡蠣100グラム中に、1日に必要なタンパク質の3分の2が、カルシウムは3分の1が、そしてリンは全量が含まれています。鉄やヨードにいたっては、必要量の4倍も含まれています。
また、牡蠣の独特ともいえる旨みは、グリコーゲンやグリシンなどの物質によるものです。一粒300メートルで有名な「グリコ」の名は、創業者の江崎利一が、牡蠣からグリコーゲンを抽出してキャラメルを作ったところから来ているのだそうです。

江崎グリコ:グリコーゲンと栄養菓子グリコ
http://www.glico.co.jp/kinenkan/sogyo/sogyo2.htm(リンク消滅)

牡蠣にはビタミンA、B、Cも多く、栄養が豊富なことから、「海のミルク」ともいわれています。

牡蠣の歴史

アルプス越えのナポレオン

ナポレオンも牡蠣を好み、領土を広げようとしたのは牡蠣を確保するためという説もあるほどです。
牡蠣は古くからヨーロッパでも健康食品として愛されていました。ジュリアス・シーザーがイギリスに攻め入ったのも、ナポレオンが遠征をしたのも、牡蠣を我が物にしたかったからではないかという説があるほどです。

牡蠣は紀元前1世紀にはすでにイタリアで養殖されていたという記録があり、また日本でも元禄時代に広島で養殖が始まっています。
イギリスには「Rのつかない月に牡蠣を食べるな」ということわざがあります。
英語でRのつかない月は、5月(May)、June(6月)、Jury(7月)、August(8月)。この頃は、牡蠣の産卵期にあたり、味が落ちることと、食中毒を起こしやすいことから、このようなことわざが生まれたのでしょう。
日本でも、牡蠣の旬は冬とされ、一般に流通するのも冬場が中心です。
(この記事も、それにあわせています)
ところが、単純に冬が旬、というわけでもないようですよ。

牡蠣を美味しくするには、森の手入れから

森は海の恋人、という運動があります。

NPO法人 森は海の恋人
http://www.mori-umi.org/

牡蠣養殖業の畠山重篤さんがはじめた運動で、豊かな海を取り戻すために、漁民による広葉樹の植林や講演、環境教育などの活動をされています。
牡蠣をおいしくするのは、山から川を伝わって海に流れ込んでくる水です。その水の良し悪しで、牡蠣の餌となる植物プランクトンや海藻の生育に影響が出ます。山が荒廃すれば、水もわるくなり、牡蠣もおいしくならないのです。
牡蠣のために山の木を植えるというのは、一見無関係なようで、実は密接な関係のあることなのです。
町の工務店ネットでも、森里海連環学・実践塾を開催しています。
森と、里と、海を、バラバラに考えず、なくしてしまった森・里・海のつながりを取り戻そう、という学問です。
森里海連環学については、以下の特集に詳しいため、ご一読ください。
http://bio.lan/2009/07/morisatoumi06/(リンクされません)

良い牡蠣をつくるためには、良い森から。

牡蠣の旬はいつ?

さて、山がよくなると牡蠣がおいしくなるなら、冬よりも、春や夏のほうが牡蠣がおいしいのでは? という疑問がわいてきます。
作家の島田雅彦は、
Rのつかない月に牡蠣を食うな、と俗にいわれているが、それはウソである。夏の牡蠣の旨さを秘密にし、他人に食べさせまいとしたものの陰謀に違いない(「ひなびたごちそう」)。
と述べています。陰謀かどうかはわかりませんが、冬でなくてもおいしい牡蠣があるのは確かです。
養殖の牡蠣は「真牡蠣(マガキ)」が中心で、これらは一斉に放精、産卵するため味の落ちる時期も集中しているのですが、初夏においしくなる岩牡蠣は、少しづつ放精、産卵し、また真牡蠣よりも放精産卵後の回復が早く、真牡蠣ほど集中的に味が落ちることはないといわれています。
旬ナビマップにあるように、牡蠣は広島・岡山で多く消費されています。全国的に流通しているのもこの両県のものが多いのですが、夏に出回る三陸や鳥取の岩牡蠣もまた美味なのです。

牡蠣消費量

旬ナビなのに、季節外れの話題になってしまいました。夏においしい岩牡蠣もありますが、入手しやすい真牡蠣は冬の食べ物といっていいでしょう。

生食の可否は鮮度ではない

スーパーマーケットにいくと、生食用牡蠣、加熱用牡蠣がわけて売られています。
加熱用は古くなったもの、というわけではありません。
食品衛生法で、生食用牡蠣の基準が定められています。
この基準では、生食用牡蠣は、

・細菌数は、検体1グラムにつき50,000以下でなければならない。
・E.coli(大腸菌)最確数は、検体100グラムにつき230以下でなければならない。
・むき身にした生食用かきの腸炎ビブリオ最確数は、検体1グラムにつき100以下でなければならない。
原料用かきは、海水100ml当たり大腸菌群最確数が70以下の海域で採取されたものであるか、又はそれ以外の海域で採取されたものであって100ml当たり大腸菌群最確数が70以下の海水又は塩分濃度3%の人工塩水を用い、かつ、当該海水若しくは人工塩水を随時換え、又は殺菌しながら浄化したものでなければならない。

とあります。この基準が満たせなければ生食用としては出荷出来ないのです。
生食用であっても時間がたてば細菌は増殖しますので、鮮度のよいうちに食べた方がいいのはもちろんです。
加熱用として売られている牡蠣は、生食用のように浄化・殺菌処理などをしていないため、鮮度に関わらず加熱が必要です。
現在の生食用牡蠣は、その処理工程で味が落ちてしまうという意見もあります。シーザーやナポレオンのほうが、我々よりも、おいしい生牡蠣を食べていたのかもしれませんね。
日本ではこのような規制がありますが、ヨーロッパでは自己責任で、という風潮が強いそうです。


連載について

住まいマガジンびおが2017年10月1日にリニューアルする前の、住まい新聞びお時代の珠玉記事を再掲載します。