流しの洋裁人の旅日記

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五城目町:「GOJOME NARIWAI CREATIVE」ツアー

11月は渋谷の国連大学前で行われている「RAW TOKYO」、豊島区の要町にあるカフェ「ごはんとおまつりアホウドリ」、池袋東口のグリーン大通りから雑司ヶ谷までを結ぶ豊島区の大イベント「IKEBUKURO LIVING LOOP」への参加、早稲田大学の建築学科で「流しの洋裁人」として講演をさせていただくなど、都内で流し続けた1ヶ月でした。

11月のことを綴りたい気持ちもありますが、10月の秋田県五城目町での流しがあまりに色濃く長引いているので、今号はそちらについて書きます。

まず五城目で流したきっかけですが、昨冬、私が勤務していた大学へ、師(松井利夫先生)を同じくする兄弟子(小熊隆博さん)が、「地元の五城目町に『ものかたり』というアートスペースを開きます」と師を訪ねてきて、そこで引き合わせていただいたのが発端でした。その後私は春から東京に拠点を移したのですが、流しの洋裁人をいかに生業として成立させていくかと考えていた夏に、小熊さんが参画している「GOJOME NARIWAI CREATIVE」ツアーへお誘いいただき、ツアー中に開催される朝市にも流しちゃおうということで流してきたのでした。

五城目町の朝市

ふだんの朝市の様子 (五城目町役場のホームページより)

このツアーは秋田県が主催となり、五城目町の移住や起業を促進するドチャベンジャーズという民間団体が運営するものでした。五城目町は秋田市から30キロほど北にあり、男鹿半島のすぐ東、かつて琵琶湖に次ぐ大きさの湖を干拓してできた土地の隣町です。人口は1万人弱、高齢化率は40%強あり、先進諸国の抱える高齢化&人口減社会という問題の最先端を走っている街だそうです。ここ数年でIターン、Uターン、Jターン者、地域おこし協力隊が中心となり、「BABAME BASE」という小学校跡地を利用した五城目町地域活性化支援センターへ全国各地の会社が入居し、地域活性や創業支援などの盛り上がりがあります。また、「シェアビレッジ」という「年貢」として年会費3,000円を払えばいつでも誰でも村民になれるという面白い試みもあります。

五城目町はもともと中世に市と座が設けられた関係で醸造や呉服業などの商工業も集住し、かつては他市より多種な職があったようです。現代でも林業から派生して木工や建具が、林業や木工の為の道具作りから派生して鍛冶屋さん、鉄工へと発展し職人の多い町でもあります。

朝市、木の実ポポー

下見した本番の2日前の朝市ではコブナを発泡スチロールの容器に活魚のまま入れ金魚すくいのように販売するおばあちゃんや、ポポーという木の実を売るおじいちゃんや、とれたてのきのこ屋さんがいて、魚も野菜も果物も売られているので、冷蔵庫やスーパーは必要なさそうです。(撮影=筆者)

今回のイベントではまちに興味のある人を募り、街の職人さんの仕事や空家を活用して街を活性化する事例を見て回り、参加者自身が自分の能力を照合して生業について考え、移住のきっかけをつくるイベントでした。そしてそのツアーの一環で、この町で500年以上続いている朝市にも流してきたのです。この市は0・2・5・7のつく日に行われています。2~3日ごとに市があるので、ほぼ毎日じゃないか! と言いたいくらいでした。

著者について

原田陽子

原田陽子はらだ・ようこ
1984年晴れの国岡山生まれ。武庫川女子大学生活環境学科卒業後、岐阜のアパレルメーカーへ営業として就職。「服は機械で自動生産されると思っていた」を耳にしたことをきっかけに、全国各地へミシンや裁縫道具を持参し、その場にいる人を巻き込みながら洋裁の光景をつくる活動を、2014年9月から開始。現在、計40カ所を巡る。洋裁という行為を媒介に、人や場、文化の廻船的役割を担うことを目指している。

連載について

ある日、東京・新宿にある百貨店で買い物をしていたところ、見慣れない光景が目に飛び込んできました。色とりどりの生地がかかるディスプレイの奥で、ミシンにひたすら向かう人がいました。売り場に特設されたブースには、ミシン一台と「流しの洋裁人」と大きく張り出された布の垂れ幕がかかっていました。聞けば、全国各地に赴き、その土地でつくられた生地を用いて即席でパジャマのようなふだん着を製作する活動をしているのだとか。食事については、ずいぶんと生産地や生産者を気にするようになりましたが、衣服のことはまだまだ流行や価格に目を奪われてしまいます。原田さんの全国を股に掛ける活動記録から、衣服に対する見方が少しずつ変わるかもしれません。