まちづくりで住宅を選ぶ

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街を知ろう!

AgitÁgueda

前回は、豊かな生活を送るためには良い住宅だけでは不十分で、優れた街で生活することが重要であると述べました。しかし、「優れた街」とはどんな街でしょうか。それは、言い換えれば「魅力的な街」ということになるかと思います。ただし、ある街を魅力的に感じるかどうかは、これも人によって異なると思います。

たとえば、東京に下北沢という若者を中心に人気のある街があります。しかし、私が大学で教える学生には、下北沢が好きな学生と嫌いな学生とがいます。下北沢が好きな学生は、ギターとかも上手で女の子にもちょっと気が利いて、要領がよいシティ・ボーイのようなタイプです。高校が下北沢の近くにあったこともあり、よくビリヤード屋などに遊びに行ったり、ジャズ喫茶で珈琲を飲んだりしていたそうです。逆に下北沢が嫌いな学生は、下北沢が好きな学生と同じ高校に通っていましたが、彼は下北沢という街が自分のことを馬鹿にしているようで嫌な気分になったそうです。この彼はいつも笑顔で、テニスが趣味の好青年だったのですが、音楽とかファッションのセンスが大衆的であることを自覚していたので、個性的なことを重要視する下北沢の街の雰囲気が好きになれなかったそうです。私は、下北沢の好きな学生の気持ちも、嫌いな学生の気持ちもよく分かります。

下北沢の街並み

マスコミとかでは大人気の下北沢であるが、その街が万人向けかというとそうでもない。自分が心地よくなれるかどうかが、マスコミとかの評価よりずっと重要だ。

この二人の学生の話が示唆するのは、自分との相性がよい街を探すことが極めて重要だということです。ただ、自分との相性がよい街というのを理解している人はあまりいないと思います。というか、自分がどういうものを街に望んでいるのか、ということを理解していないからです。それを知るうえでは、街を体験することが何より重要です。どんどんと街を知って、そして、街との相性を図ることで自分自身のことも理解していくことが、優れた「街使い」になるためには求められます。それは、街の豊かさを享受し、豊かな生活を送るための重要なステップになるでしょう。


服部圭郎  はっとり・けいろう龍谷大学政策学部教授

1963年東京都生まれ。東京大学工学部卒業、カリフォルニア大学環境デザイン学部で修士号取得。某民間シンクタンク勤務、明治学院大学経済学部教授を経て、現職。 専門は都市計画、地域研究、コミュニティ・デザイン、フィールドスタディ。 主な著書に『若者のためのまちづくり』『人間都市クリチバ』『衰退を克服したアメリカ中小都市のまちづくり』『ドイツ・縮小時代の都市デザイン』など。技術士(都市・地方計画)、博士(総合政策学)。