まちづくりで住宅を選ぶ

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豊かな生活は、良い住宅+優れた街で実現する

AgitÁgueda

豊かな生活とはどんな生活でしょうか。それは人によって異なるでしょう。その人の価値観、ライフスタイルそして家族構成やライフステージによっても異なります。そして、同じ人であっても、年齢や家族構成が変化することによって、豊かな生活のあり方も変わってくるでしょう。
さて、このように豊かな生活に対しての考えは多様性を持つかもしれませんが、豊かな生活をどのように具体化するのか、その方法論を考えた場合、良い住宅が極めて重要な役割を果たすことは明らかでしょう。快適なベッドのある落ち着いた寝室。居間には家族が団欒しやすいソファが置かれ、大好きな本やCDが並んでいる本棚とピアノ。居間の窓からは庭の樹木が見え、そして窓から差す日の光が居間の絨毯につくる陽だまり。自我を形成するうえで大きな影響を与える子ども部屋は、子どもに独立性と責任感を醸成するうえで大きな役割を果たすでしょう。
食事をつくりながらも子どもと話し、親子のコミュニケーションを円滑化させるダイニング・キッチン。自分の好きなものに囲まれた書斎は、世界で唯一の自分の博物館のようなものかもしれません。お風呂場は心身リラックスできる再生の空間、そして清潔なトイレに機能的な洗面台。理想の住宅の姿は異なるかもしれませんが、豊かな生活を具体化させるうえで「住宅」の果たす役割が大きいことは多くの人が納得すると思います。

Hafnarfjörður

上写真/アイスランドのハナルフィヨルズゥルの住宅地にある公園。この公園には妖精がいると住民達の多くは信じている。
このような公園のそばで生活をしていたら、子ども達の自然観はとても豊かなものになるであろう。
表題写真/ポルトガルのアゲダの写真

しかし、住宅が優れていれば、それだけで豊かな生活はできるのでしょうか。どんなに自分が愛でる花が庭に咲いていても、そこでテニスやバスケはもちろんのこと、サッカーやキャッチボールはできないでしょう。長男が好きなスケートボードや、長女が好きなキックボードなどを庭ですることはできませんし、まだ補助輪付きの自転車に乗れない次男がその練習をする空間を確保することさえ難しいでしょう。
さらに、豊かな生活を具体化するための食材や日用品を日常的に確保するためには、それらを売っているお店が近くになければなりません。アマゾンがあれば大丈夫? 豆腐や焙煎したばかりのコーヒー豆はアマゾンでは買えません。



服部圭郎  はっとり・けいろう明治学院大学経済学部教授

1963年東京都生まれ。東京大学工学部卒業、カリフォルニア大学環境デザイン学部で修士号取得。某民間シンクタンクを経て、現職。 専門は都市計画、地域研究、コミュニティ・デザイン、フィールドスタディ。 主な著書に『若者のためのまちづくり』『人間都市クリチバ』『衰退を克服したアメリカ中小都市のまちづくり』『ドイツ・縮小時代の都市デザイン』など。技術士(都市・地方計画)、博士(総合政策学)。