「ていねいな暮らし」カタログ

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読者が『ku:nel』に求めるもの

前回は、日本の各地で発行されている暮らし系冊子、地域文化誌についてお話しました。その際に、地域文化誌の取り上げる内容やレイアウトが雑誌『ku:nel』の初期を彷彿とさせると書きました。ですので、今回はその初期『ku:nel』に焦点を当ててみたいと思います。

今や『ku:nel』について語る際には、「初期」「新装」といった言葉をつけなくてはならなくなりました。なぜなら、2016年1月に『ku:nel』が新装刊され、「ストーリーのあるモノと暮らし」から「自由に生きる大人の女性へ!」へとコピーも内容も様変わりしたからです。このリニューアルはメディアでも大きく取り上げられましたが、特に、新装『ku:nel』のAmazon商品ページに投稿されたカスタマーレビューに注目が集まりました。

投稿者Amazon カスタマー2016年1月24日
これまでのクウネルを創ってきて下さった方々、ありがとう!/あなたたちのおかげで、/たとえ国内にいたって毎日が地味だってお金がなくたって、/自分の生活を毎日大切にして生きていくことが誇りになるんだ、っていう/大事なことを教えてもらうことができました。

投稿者Amazon カスタマー2016年1月26日
創刊号から読んでいた一人です。/本当に素敵な雑誌が出たと感激し、発売日を楽しみにしていました。/色あせた写真と紡がれる言葉に想像力を掻き立てられ、こんな暮らしをしたいと望みました。

以上は、新装『ku:nel』創刊号のAmazonページに寄せられたごく一部のコメントですが1、これだけを見ても初期『ku:nel』が読者にとってどのような雑誌であったのかが伝わってきます。――毎日を大切に生きていくことで地味な毎日が誇りになる。色あせた写真と紡がれる言葉から憧れの暮らしを想像する。――このような思いを支援する雑誌として、2000年代の暮らし系雑誌の一時代を築いたのが初期『ku:nel』だったのです。

ku:nel

『ku:nel』は、雑誌『an・an』の増刊号として2002年4月にマガジンハウスから刊行されました。創刊のきっかけは、インテリア雑貨店企業から依頼されたことだったと当時の編集長、岡戸絹枝氏は回想しています2。創刊号こそ、マガジンハウス内で「(この方向性は)わからない」と言われたとの回顧談も残されていますが3、それでも読者の評判はよく、『an・an』増刊期の『ku:nel』3号が増刷になったことから、隔月刊の定期刊行物として2003年に新たに創刊されることとなりました。

2003年は、他にも『天然生活』や『Lingkaran』といった雑誌もまた独立創刊した年で、21世紀の暮らし系雑誌にとって大事な年となります。次回は、初期『ku:nel』の内容とレイアウトについて解剖してみましょう。

(1)新装『ku:nel』創刊号のAmazonページより。2016年6月20日参照
(2)「クウネル(マガジンハウス)」(生活工芸プロジェクト著、『繋ぐ力』、リトル・モアp.109)
(3)「有山達也 対話 岡戸絹枝」(『アイデア』第58巻第4号、2010年6月、p.18-19)



阿部純  あべ・じゅん

1982年東京生まれ。福山大学人間文化学部メディア・映像学科講師。東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。専門はメディア文化史。研究対象は、墓に始まり、いまは各地のzineをあさりながらのライフスタイル研究を進める。共著に『現代メディア・イベント論―パブリック・ビューイングからゲーム実況まで』、『文化人とは何か?』など。地元尾道では『AIR zine』という小さな冊子を発行。

連載について

阿部さんは以前、メディア論の視点からお墓について研究していたそうです。そこへ、仕事の都合で東京から尾道へ引っ越した頃から、自身の暮らしぶりや、地域ごとに「ていねいな暮らし」を伝える「地域文化誌」に関心をもつようになったと言います。たしかに、巷で見かける大手の雑誌も、地方で見かける小さな冊子でも、同じようなイメージの暮らしが伝えらえています。それはなぜでしょう。そんな疑問に阿部さんは“ていねいに”向き合っています。

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