我輩は歌丸である。

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やせっぽっちのハチワレ子猫

我が輩は歌丸である。名前はもうあるし、夏目漱石なんて知らない。我が輩はどんなときでも何が起ころうとも可愛く振る舞う。つまり「かわいい」のプロである。

私は生まれた頃から猫と暮らしてきました。実家を出て初めて猫がいない生活を経験したのです。
10年ほど実家猫や野良猫で猫欲を抑えていましたが、もう限界でした。

危ない目付きで野良猫を追いかけるようになった頃、里親募集のチラシが目に入りました。
そこには青い目をしたグレーの仔猫がいたのです。
グレーの猫を飼う事が夢だった私はすぐに連絡を取りましたが、すでに里親が決まっていました。

そのとき、長年抑えてきた猫欲が猛烈に膨れ上がり大爆発したのです。
猫!猫!猫が欲しい!今すぐ!我が手に猫を!

地団駄を踏みながら血眼になって他のチラシを睨みつけると、やせっぽっちのハチワレ仔猫がいました。
じゃあこの子で。
あっさり選んだこの仔猫こそが、冒頭に生意気なご挨拶をした歌丸なのであります。

おもちゃと共に所長の椅子を陣取る歌丸

里親になる条件は「仔猫のうちは独ぼっちでお留守番をさせないこと」でした。
つまりは、毎日職場へ連れて行かなければなりません。

当時私は父の設計事務所「N設計室」に勤めていました。
猫好きな父を言いくるめ、所員の方々にお許しを請いました。
大変わがままな言動ですが、猫欲の爆発によりテンションマックスの私は、半ば強引に話を進めたのです。

お気に入りの紐を見せ、所員を遊びに誘う歌丸

「悪さをしたら即追い出されますよ」と呪文のように、何度も歌丸に言い聞かせ出勤しました。
私の気迫が伝わったのでしょう。歌丸は完璧に可愛く振る舞い、猫アレルギーの所員Sさんの心も難なく掴んだのでした。

あっという間に事務所の王子様と化した歌丸は、傍若無人な振る舞いも許され、わがままに育ったものの立派な成猫になりました。
かつて捨て猫だった歌丸は、皆様のおかげで幸せな幼少期を過ごすことができたのです。

常に注目されているパソコンに嫉妬し、可愛さを見せつける歌丸

わがまま放題な事務所猫でしたが、彼なりのルールがあったようです。
それはまた別のお話。



永田花  ながた・はな

文化学院建築科を卒業後、ステンドグラス作家の山本幸子氏(株式会社山本・堀アーキテクツ)の下で働きながら物つくりの基本を学ぶ。その後N設計室勤務。仕事をしながらクラブイベントの会場装飾・ポスターやフライヤーデザインを手がける。現在は写真を使ったオーダー雑貨のデザイン・制作を生業としている。 http://87utamaru.wix.com/tutti-cat

連載について

永田花さんの飼い猫歌丸くんの日常について綴るエッセイ。歌丸は猫っぽくない、と花さんから聞いて、それはどういうことだろう?ととても興味を持ちました。花さんと歌丸との出会いから、これまでのこと。ほっと一息つけるようなエピーソードにあふれています。

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