保育器

[びお考] 赤ちゃんにやさしい家

ネットには、あまりにも多くの情報が溢れています。住まいのことも例外にあらず。膨大な情報の波にまぎれて、大切なことを見失っていないだろうか。そんな疑問から、「びお」のもつ、住まいと生活の視点からいろんな人に聞いてみます。

 

「家を建てる理由ランキング」で、常に上位にあるのが「子どもができる(できた)」という理由です。それって、今の住まいが赤ちゃんにとって良くないってこと? 狭いから? 暑いから? 寒いから?
せっかく赤ちゃんのために住まいを考えるのなら、どんな家がいいんだろう。
赤ちゃんが感じる快適は、私たち大人と同じなんだろうか?
そんな疑問をいだいて向かったのは、北海道・札幌市立大学。この大学では、デザイン学部と看護学部が併設されているため、赤ちゃんにとっての住まいを「建築環境デザイン」と「助産」という両テーマから同時に考えることができる環境にあります。ここなら問いを解くヒントが得られるのではないか。そんな予感を持って、三人の先生を訪ねました。(企画=手の物語)

Vol.6  赤ちゃんを低体温から守れ!

一定の環境下にあるよりも、適度な変動や刺激が、赤ちゃんにとても大切だということがわかりました。そうはいっても、産まれたばかりの赤ちゃんは、熱の産生が十分できないので低体温になりがちです。熱はどう奪われ、どう与えられるのかを知って、赤ちゃんを低体温から守りましょう。

 

斉藤 いま、病院に入院されている患者さんにとっての温熱環境と快適性の調査に取り組んでいるんですけど、患者さんの多くは基本的には寝てる、横になっている時間が長い。そうすると、「室温」じゃないな、と思って。毛布の内側の温度だったり、寝巻や寝具の熱性能の影響が大きいな、と思って。
そういう意味では、赤ちゃんにとっては、接触面からの熱伝導は大きいですよ。個体が小さいしさ、寝てたら身体の三分の一以上は接触面だし。保育器に入っていれば、保育器の内側の表面温度が重要じゃないかな。

保温器

渡邉 赤ちゃんって、頭が大きくて、頭から熱が奪われるんですよ。だから産まれたばかりの赤ちゃんには帽子をかぶせるんです。
出生直後は羊水に濡れていて蒸散で体温が下がってしまいます。そうするとエネルギー産生をして疲れてしまうので、体温を下げないように、インファントウォーマーという機械で温めてあげます。

斉藤 それは空気で?

渡邉 ヒーターがついています。私たちも入って赤ちゃんを観察したりして、汗だくになるんですよ。

斉藤 それは対流ではなく放射だね。オランウータンと同じで、放射でやるのが大事なんだ。

大友 あとは、母子早期接触の、肌と肌の触れ合いとか。

斉藤 それは伝導だ(笑)

渡邉 産まれた後は体温が下がると低血糖になってしまうんです。産まれた直後は糖しか使えないから、とにかく体温を下げないことが大事で。どの程度調整できるか、個人差があってそういうことがわからないから、衣服で調整できる子もいれば、同じ環境下でもサーッと熱が下がってしまう子もいます。

斉藤 じゃあ、とにかく直後が大事だ。

佐塚 昔は、産婆さんが「お湯を沸かせ!」と父親を蹴り飛ばすようなシーンがあったようですが。これも産まれてすぐに温める、ということなんですか。

渡邉 いや、今はお湯にはつけませんよ。

佐塚 ひと昔、ふた昔まえだと、放射で温めるということがなかなか出来なかったので、それでお湯につけて温めていたのかなと思っていました。

斉藤 僕もお湯につけているんだと思ってた。

渡邉 今は、逆に熱が下るから、お風呂には入れない、というのが定説ですね。

大友 病院によっては、赤ちゃんにストレスがかかるから、出産後の入院中はまったくお風呂なし、ということもありますね。

佐塚 新生児の出産から一ヶ月ぐらいまでって、思っていた以上に空気温度以外の熱環境のことを意識しているんですね。なんで大人になると空気温度ばかりになっちゃうんだろう。

まとめ
産湯って、入浴用じゃなかったんだ…イクメンのフリをしていたのがバレてしまいました。それにしても、赤ちゃんを冷やさないためのとりくみ、頭が下がります。今回は、熱の伝わり方の勉強になるので、復習しておいてくださいね。

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