「風びより」内観

町の工務店探訪①

全国には、特徴的な取り組みをしている工務店がたくさんあります。あの工務店、面白そうだけど、他の工務店と何が違うのだろう。そんな素朴な疑問に対して、それぞれの工務店の特徴を丁寧に調べて伝えたい。そこでびおでは、取材クルー(編集・ライター・カメラマン)を結成し、全国の工務店を訪ね回ることにしました。住まいづくりの現場、イベント、施主へのインタビューなどを通して見えてきたのは、地域の風土に呼応したその土地らしい工務店の姿でした。

Vol.2  材木倉庫の隣にできた「風びより」で、木と緑の空間を体験
長崎・浜松建設

「風の森」から車でおよそ1時間、雲仙普賢岳の麓を時計回りに移動して「風びより」に到着した。「風の森」がある諫早と「風びより」がある南島原は、首都圏でいえば新宿から八王子くらいの距離がある。それだけ離れた場所に新たな施設をつくったのはなぜなのか。それは浜松建設のルーツにあたる場所だからだ。

「風びより」の幹線道路を挟んで向かいにある材木倉庫群。「まるは木材」時代からの施設で、浜松建設の建材がここから供給されているほか、他社への卸売も行っている。

 

ここは社長、濵松和夫さんの父・武久さんが開業した、南島原市を拠点とする材木店「まるは木材」の創業の地。今でも材木倉庫が9棟ほど、現役で使われている。

 

材木店のルーツを受け継ぐ「風びより」

「風びより」は、幹線道路沿いの材木倉庫1棟を解体した跡地に2008年に誕生した。建物のすき間や庭を路地が縫うように走る小さな町のような複合施設だ。店舗・スペース群の一部をのぞかせていただいた。

浜松建設直営の生活雑貨店「Quercus」。

◆生活雑貨店「Quercus」
国内外のテーブルウェアや服飾雑貨などをセレクト。南島原の食材や地元作家による小物なども販売されている。店内からは「風びより」の庭がよく見え、一体感が生まれている。

 

3000坪ある「風の森」には、
実験的なお店やモデルハウスが13棟

「風の森」にある建物は13棟。その一部を社長の濵松和夫さんと、広報やプロモーションなどを担当する村上比子さんに案内してもらった。

 


café cozy。庭を眺めながらゆっくりできる。スイーツ
メニューは多彩で、ショーケースから選べる。

 

 

◆カフェ「COZY」
身体にやさしいメニューにこだわったカフェ。ケーキや焼き菓子などのスイーツ、各種プレートやパスタなど料理も提供している。

 

MOKUMOKU。風びよりの向かい、木材倉庫をリノベーションした。

◆木製家具のショールーム兼ショップ「MOKUMOKU」
「風びより」に隣接しており、オリジナルの家具や小物を販売するほか、造作家具に使う素材やデザインの打ち合わせ、木工のワークショップなども行われる。

 

ゲストハウス「居里」。窓を開けるとデッキとひと連なりになる居間。

◆ゲストハウス「居里いり
「風びより」の並びにはモデルハウスもある。窓を開くとデッキ越しに庭とつながる開放的な住宅で、離れ小屋やピザ窯もある。日常的に自然とふれあい、時には大人数で食事を囲むこともできる、家を開く暮らしを提案しているモデルハウスだ。大黒柱はケヤキ、梁はスギ、床は厚さ30mmの無垢のスギ板が使われているなど、多様な木材が室内外に。2階から3階の吹き抜けには、銘木の床柱を活かした “木登り”ができる柱がある。そんな材木倉庫のストックを活かした仕掛けも面白い。

村上さんが描いた、風びよりの案内図。小さな建物群と庭や路地が混ざり合う。

 


「路地も撮っちょってください!」と濵松社長より推薦された、路地の風景。
暗がりの向こうに明るい庭が開ける、奥行きのある空間構成だ。

 

 

「ここに来ると、別世界という感じになるでしょう。建物で囲んでいるからね」と濵松社長。複数の建物が寄り集まりながら庭や路地を取り囲む構成で、ヨーロッパの田舎町の路地、あるいは茶室の露地を思わせる変化に富んだアプローチを進むと、いつの間にか外界と切断されてしまう。幹線道路に面しているとは思えない、落ち着いた環境ができあがっている。

おだやかな時間が流れる複合施設「風びより」。ここが生まれた背景には、ここまでを案内してくれている濵松社長と村上比子さんおふたりの出会いがあったという。

 

「町をつくれば人が集まると、風びよりを企画しました」

村上比子(ともこ)さん。浜松建設に関わりはじめて約10年。広報物の制作やメディア対応、「風の森」「風びより」の運営やイベント企画、企画開発・戦略立案など、幅広い業務の担い手だ。

濵松社長は元々家業である材木店の仕事に携わっていたが、25年ほど前、エンドユーザーの顔が見えない材木商の仕事に限界を感じ、南島原から35kmほど離れた諫早市に拠点を移し、工務店をはじめた。その後、事業を順調に拡大させ、「風の森」も軌道に乗せた濵松さんは2000年代半ば、再び南島原にも拠点を置くことを考えた。その企画の相談相手が村上さん。当時は別の会社に勤めていた。

 

——なぜ浜松建設で働くことになったのですか?

村上 最初は取引先だったんです。以前在籍していたコンサルティング会社の業務の一環で、濵松から南島原の材木倉庫の一画を、人が集まる場所にしたいと相談を受けました。そこで、「風びより」の企画を提案しました。

——どんな提案をされたのでしょうか。

村上 空間だけではなく、そこに置かれる生活雑貨もあわせて紹介し、浜松建設が提案する暮らしそのものの魅力が実感できる“町”をつくるというものです。参考事例としてどうしても見てほしくて、奈良県の「くるみの木」にもはるばる連れていって、口説きました。そうしたら、倉庫を取り壊して更地にしたから、うちに入って一緒にやろうと言われて(笑)

——大胆な引き抜きですね。

村上 得意先だったので、辞めるなら前職の会社に筋を通さないとなりませんよね。そこは社長同士で話をつけてもらって、無事入社することになりました。それからはすごく大変でした。建物のディレクションを急ピッチで進め、テナント探しも2ヶ月でやりました。直営の雑貨店も企画しましたし、アイテムのセレクトも監修しました。

——担当業務の幅の広さに驚きます。

村上 「風びより」が開業してからも、地元の方を巻き込んでイベントスペースでヨガ教室や大人向けの公文教室をしてもらうなど、運営やイベントの企画にも携わってきました。今も社内の何でも屋ですが、天職だと感じています。

 

カフェ、雑貨店、といった小さな店が集まる“町”を通じて、暮らしの魅力を発信する「風びより」。特徴は、家づくりの素材やプロセスを体感できることだ。広大な材木倉庫に隣接し、さらに素材に触れられる施設もある。そして建物そのものの力が感じられる場所でもあるので、浜松建設との家づくりがイメージしやすい気もする。

 

それでは浜松建設は実際に、どんなふうに家をつくるのだろう。次回は、家づくりを支える仕組みを紹介していく。


構成・文=平塚桂、写真=近藤泰岳、企画・編集=尾内志帆 

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