里山の色

更紗満天星(さらさどうだん)

版画/たかだみつみ
2017年06月21日 水曜日

今日は夏至、一年で一番日が長い日ですが、ほぼ全国的に雨模様、和歌山では観測史上1位となる1時間雨量を計測したところもあります。まだ引き続き激しい雨が振っている地域があり、引き続き警戒を怠らないように…。

さて、今回の版画、「サラサドウダン」は日本原産のドウダンツツジの仲間です。
ドウダンツツジは漢字では「灯台躑躅」と書きます。

「躑躅」とはまた、画数も多いし、花の名前とは思えない風体の文字ですね。
実は「ツツジ」の他に、「てきちょく」とも読み、足踏みすること、ためらうことを意味します。
ツツジにどうしてそんな文字があてられているのでしょう。見る人の足を止める美しさ、という説もある一方で、「羊躑躅(ようてきちょく)」、葉を食べた羊が躑躅して死ぬ、なる物騒な説もあります。

ドウダンツツジの名は、枝分かれした様子が、灯台(といっても、船を導く灯台ではなくて、三本の棒を結んで立てて、その上に火を灯す照明のほう)に似ているから、といわれていて、こちらは納得出来る名前です。

ところが、ドウダンツツジにはもうひとつ、「満天星」という漢字もあてられています。これまたどう見ても当て字なわけですが、中国の故事に由来しています。
封神演義や西遊記にも登場する太上老君(老子が神格化された姿)が、霊薬を練る際に、誤って、この木にこぼした玉盤の霊水が、まるで満天の星のように輝いたから、というお話です。

さらに、サラサドウダンになると、「更紗灯台」や「更紗満天星」と、これもまた、植物の名前とはちょっと思えないような漢字があてられています。

サラサドウダンの「更紗」は、花冠にある模様が更紗染めのようだ、ということから来ています。更紗はインド起源の木綿染めですから、「更紗満天星」となると、インドと中国が命名の由来ということになりますね。でもサラサドウダンは日本の固有種です。おあとがよろしいようで(?)

さて、満天星(Doudantsutsuji)と名がついた小惑星が有ります。1991年に日本で発見され、ドウダンツツジにちなんで名付けられました。満天の星のようだと名付けられた満天星を、一つの惑星の名前にしてしまうのもすごい話ですが、とにかく何が語源だったのか、だんだんわからなくなってきますね。

かの牧野富太郎博士は、『植物一日一題』の中で、

いったい植物の日本名すなわち和名はいっさい仮名で書くのが便利かつ合理的である。漢名を用いそれに仮名を振って書くのは手数が掛り、全くいらん仕業だ。例えばソラマメはソラマメでよろしく、なにも煩わしく蚕豆と併記する必要はない。キュウリはキュウリ、ナスはナス、トウモロコシはトウモロコシ等々で結構だ。胡瓜、茄、玉蜀黍等はいらない。

と述べています。たしかにそのほうが合理的、ではありますが、けれどやっぱり、動植物の名前がどうしてその漢字なのか、その背景にはどんなことがあるのか、そういう興味を持っておくことって、楽しいじゃないですか。牧野博士がこの話を述べた背景には、「馬鈴薯」とジャガイモは違うもので、完全に間違っているので、ジャガイモを馬鈴薯などと書く必要はない、という話がそもそもありました。

モノの名前が、どうしてそうなっているのか。それを知ったところで、そのモノ自体には変化がありませんが、モノと自分の関係性は変わってきます。知らないより知っている方が楽しいし、知っているより考えてみるほうがもっと楽しい。だから、この連載でもタイトルの植物の名前は、出来る限り漢字名を併記しています。植物に限らず、モノの名前を掘り下げていくのって、面白いですよ。

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