里山の色

山百合(やまゆり)

版画/たかだみつみ
2017年06月05日 月曜日

山百合(やまゆり)

「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という言葉があるように、ユリは美人を象徴する花の一つです。
ヤマユリは、日本原産のユリです。日本にしかないユリも多く、多くの園芸品種は日本のユリを原種として作られています。
キリスト教圏でも、白いユリは純潔を表し、聖母マリアの象徴とされ、また聖書にもたびたび登場する人気のある花です。

ヤマユリをヨーロッパに持ち帰ったのは、江戸時代に日本に蘭学をもたらしたシーボルトでした。ユリはキリスト教にとってなくてはならない花ですが、ヤマユリはヨーロッパのユリよりも大きく立派でした。

同じく日本産のテッポウユリは、白い花弁で、すぐにヨーロッパで人気になりましたが、ヤマユリの花弁には黄色い筋と赤い斑点があります。せっかくの大きなユリをなんとか白い花弁にしたい、ということで品種改良がかさねられ、今ではヤマユリを原種に持つ白い花弁のユリ・カサブランカが人気を博しています。

オランダでは、大航海時代に「チューリップ・バブル」と呼ばれる事件がありました。ヨーロッパにもたらされたチューリップの商取引が加熱し、投機的に扱われるようになりながら、あるとき突然価格が急落した、というものです。チューリップ・バブルの実態は、十分わかっていないこともあるようですが、一つの植物が、人々を熱狂させ、経済に影響を与えた、ということは確かです。

ではシーボルトにヤマユリを持って行かれて、日本はユリで商売ができなくなったか、といえば、そんなことはありません。開国後は、日本のユリも欧米諸国に輸出されています。
一方で、シーボルトが持ち帰ったなかには、イタドリも含まれます。当時は、繁殖力が高いイタドリは重宝がられましたが、それが今では「世界の侵略的外来種ワースト100」にも選ばれてしまう「嫌われ者」です。

「世界の侵略的外来種」には、他にも日本の植物が含まれています。それは「ワカメ」です。船のバラスト水に含まれた胞子が世界各地に拡散し、広がっています。ワカメなら食べればいいじゃない、と思うのは文化の違い。海藻を食べる国というのは、決して多くないのです。

食べるといえば、日本ではユリの根も食べますね。ヨーロッパから見れば、ユリを食べるなんてとんでもないことのようです。もっとも、各地で嫌われているセイタカアワダチソウだって、当初は萩の代用の観賞用に移入されてきたものです。

ところ変われば、だけでなく、時代が変われば人の受け取り方も変わるんですね。

山百合の宿命の斑を惜しみけり 高田風人子

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