里山の色

定家葛(ていかかずら)

版画/たかだみつみ
2017年05月05日 金曜日

来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに
 焼くや藻塩の 身もこがれつつ

小倉百人一首の中でも有名な、藤原定家の歌です。

当時の和歌は恋を伝える役割も持っていたとはいえ、ずいぶんと情熱的な内容ですね。

藤原定家は、「家聖」の二つ名で知られ、小倉百人一首のほか、新古今和歌集の選者としても知られ、和歌の世界だけでなく、文芸に幅広く才能を発揮した、いわば天才です。その功績はいまもなお讃えられている一方で、天才肌故か、直情的な性格でトラブルメーカーとしてもその名を馳せました。

小倉百人一首には、式子内親王の

玉の緒よ 絶えなば絶えね 長らえば
 忍ぶることの 弱りもぞする

という歌も選ばれています。当時の和歌は恋がテーマでしたから、これはたしなみとして詠んだ、ということも考えられますが、どうも、内親王は定家と恋愛関係にあったのでは、というのが定説です。

当時の内親王は自由恋愛どころか結婚も自由にできない身分で、当然定家との恋も実りません。

実らぬ恋を焦がしたまま死んだ定家が、死後も内親王を忘れられず、彼女の墓に絡みついた、ということから名付けられたのが、この「テイカカズラ」です。

なんだか美しい話のように聞こえますが、この命名のもとになった能『定家』では、内親王の霊が、死後も自分を縛るこの想いに、成仏したい、と定家の呪縛を断ち切ろうとします。
ところが、結局のところ、その呪縛から逃れるチャンスを得ながらも、内親王はまた、テイカカズラに絡まれた墓に戻ってしまう、つまり成仏せずに、再び定家にとらわれることを選ぶのです。男女っていうのは、ほんとうにわからないものですね…。

今日から二十四節気は「立夏」です。もう夏だなんて、ちょっと早いようにも思えますが、環境省の主導するクールビズは、5月1日から始まっています(9月30日まで)。5ヶ月がクールビズ期間ということで、1年の大半が夏になってしまったようです。
クールビズとは、有り体に言えば、ネクタイを外し、軽装にして、冷房の設定温度を上げて、冷房負荷を下げよう、というものです。

スーツにネクタイ、というのは、もとを正せばイギリスの正装です。イギリスの夏は短く、湿度が低く、カラッとしています。日本の夏には明らかに適さない格好だなあ、と思いたいところですが、定家の生きた平安時代から鎌倉時代にかけても、当初は唐から入ってきた服装だったのが、時を経て日本独自の様式に変わっていっています(もっとも、当時はいまのようなヒートアイランド現象もなく、夏も今よりずっと過ごしやすかったはずですが)。

住まいが地域にねざしてあるように、服装も本来はそうあるのが自然なのでしょうね。
さて、今年の夏はどんな夏になるのでしょうか。

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