里山の色

藪椿(やぶつばき)

版画/たかだみつみ
2017年02月18日 土曜日

二十四節気は「雨水」、暦便覧に「陽気地上に発し、雪氷とけて雨水となればなり」とあり、雪が雨に変わるころ、とされています。みなさまの地域ではいかがでしょうか。

ヤブツバキは、ツバキ属ツバキ科のいわゆる「椿(ツバキ)」です。ツバキの仲間には園芸品種も多く、どれもツバキと総称されますが、このヤブツバキが元祖といってもいいでしょう。
常緑樹のヤブツバキは、照葉樹林の代表的な樹種です。広域に分布し景観を特徴づけている自然植生によって植物社会学的に定義する「クラス域」という区分では、日本の植生は4つにわけられます。
ひとつは「高山帯域」。本州中部では2400m以上級の山岳に見られる植生域です。
もうひとつは「コケモモ-トウヒクラス域」。コケモモとトウヒがよく見られる、本州中部では1500m〜2400mほどの標高に発達します。
みっつめは「ブナクラス域」。落葉広葉樹林域です。本州中部では600〜1500mほどの標高に見られます。
そしてよっつめが「ヤブツバキクラス域」。本州中部では標高700m〜800m以下に発達するクラス域で、高度も低いことから、植生域としてはもっとも身近な存在で、その中でも代表的な樹種であるヤブツバキが、クラスの名につかわれています。
南に行けばヤブツバキクラス域の高度は上がり、九州では1000mほどに、北に行けば高度は下がり、東北北部では海岸寄りまで下がります。北海道には自然植生としてのヤブツバキクラス域は見られません。関東の平野部と、関西以西(一部山間部を覗いて)は、ほとんどがヤブツバキクラス域に属します。

ヤブツバキの種からは、椿油がとれます。かつては、食用、灯用、髪油や医薬品など、様々な用途に使われ、年貢や献上品としても用いられました。
柱を磨くのにも椿油が使われます。古い大黒柱などで、黒々とした艶やかなものは、椿油で手入れをされているものも多いようです。庭木としてもツバキは根強い人気で、自宅の庭から取れた種で椿油を楽しむ人もいます。

家庭の庭にあるヤブツバキは、壮大な植生区分の名称になっているとは思えないほど慎ましいものですが、その姿から「かつてわが家の庭も照葉樹林だったのだ」と想像するのも愉しいではないですか。

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