里山の色

藪柑子(やぶこうじ)

版画/たかだみつみ
2017年01月20日 金曜日

二十四節気はいよいよ24番目の節気「大寒」です。
暦便覧には「冷ゆることの至りて甚だしきときなれば也」と称される、とにかく寒い時期、とされています。

二十四節気という考えは中国からもたらされ、日本独自の形式として採用し、今に至っています。当時の暦は旧暦で、今とはずれがありますが、実際に平均気温を見てみると、多くの地域では1月がもっとも寒い、という統計があります。

先ごろ、国土交通省が、住宅の断熱改修前後で、住まい手の健康にどのような影響を与えるか、という調査の中間報告概要を発表しました。
それによると、住宅室内環境と健康関連事象には、以下のような知見が得られつつあるとのことです(サンプル数1,753人)。

1.冬季において起床時室温が低いほど、血圧が高くなる傾向がみられた。
2.高齢者ほど、室温と血圧との関連が強いことが認められた。
3.断熱改修によって室温が上昇し、それに伴い居住者の血圧も低下する傾向が確認された。
4.居間または脱衣所の室温が18℃未満の住宅では、入浴事故リスクが高いとされる熱め入浴の確率が有意に高い。

厚生労働大臣が2012年に告示した「21世紀における国民健康づくり運動」では、2022年までの10年間に国民の収縮期血圧平均値の 4mmHg低下を目標に掲げ、循環器疾患死亡者数が15,000人減少すると推計しています。4mmHg低下の対策として、栄養・食生活、身体活動・運動、飲酒、降圧剤服用対策が挙げられていますが、住環境対策に関する医学的エビデンスは不足していて、この対策の中には含まれていません。

しかしながら、住宅の断熱性向上は、省エネルギーだけでなく、住まい手の健康にも寄与するのではないか、と考えた今回の調査の中では、住環境は血圧との関連性があるという傾向が見られています。有り体に言うと、暖かい家に暮らしていたほうが長生きできる、といって良さそうだ、ということですね。

たとえば、先に掲げられた4の項目は、室温が低い場合のでせめてお風呂で温まりたい、ということが想像できます。しかしながら、低い温度から高い温度への急激な変化は、ヒートショックを引き起こし、脳卒中や心筋梗塞、またそれによる浴槽内での溺死の原因となります。寒いからといって、暖かすぎる場所をつくると、そのギャップに身体が耐えられなくなるのです。過ぎたるは及ばざるが如し。家の中の各所を、緩やかな温度変化に留める工夫が欲しいですね。

今回のたかだみつみさんの版画は、雪に実の映えるヤブコウジです。ヤブコウジは、別名「山橘」と呼ばれ、万葉集でも幾つかの歌に詠まれています。

この雪の 消残る時に いざ行かな山橘の 実の照るも見む(大伴家持)

まさにこの版画のような光景を、雪が消える前に見に行こう、と誘う歌です。この冬は、日本各地で思わぬ大雪に見舞われました。
「この雪の 消残る時にいざ行かな」というような、のどかなものばかりではなく、改めて自然の猛威を感じます。
建物は、外にひらくと同時に、厳しい自然から閉じるシェルターとしての機能も持っています。閉じるは技術、開くはデザイン。この相反するように見える二つを高次に取り入れることが、今の住まいに求められています。

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