里山の色

すだじい

版画/たかだみつみ
2016年12月07日 水曜日

すだじい

「どんぐり」という木はないのと同様に、「椎の木」というのもシイの総称で、いわゆる椎ノ木のうちの一つが、このスダジイです。

さて、このスダジイ、実は漢字でどう書くのかがわかりません。
植物を多く発見し命名したことで知られる牧野富太郎博士は、植物の漢字表記について以下のように述べています。

「ジャガタライモは、今世間一般の人が呼んでいるようにジャガイモと仮名で書けばよろしい。もしこれを漢字で書きたければそれを爪哇芋か爪哇薯かにすればよい。なにも大間違いの馬鈴薯の字をわざわざ面倒くさく書く必要は全くない。いったい植物の日本名すなわち和名はいっさい仮名で書くのが便利かつ合理的である。漢名を用いそれに仮名を振って書くのは手数が掛り、全くいらん仕業だ。例えばソラマメはソラマメでよろしく、なにも煩わしく蚕豆と併記する必要はない。キュウリはキュウリ、ナスはナス、トウモロコシはトウモロコシ等々で結構だ。胡瓜、茄、玉蜀黍等はいらない。」(『植物一日一題』より)

そういう意味では、スダジイの漢字表記も無くてもよい、ということでしょうか。スダジイを「頭陀椎」としている説もありますが、これも根拠がわかりません。スダジイは別名イタジイとも呼ばれますが、牧野博士も『牧野日本植物図鑑』の中で、「和名ノすだ・いた共ニ其意味不明」と記しています。

スダジイは、25mにも達する高木ですが、小ぶりでかわいいどんぐりを実らせます。
シイの実は、カシやナラなどのどんぐり類に比べるとタンニン(アク)が少ないので、アク抜きをしなくても食べられます。シイは大量に実をつけますから、木のたもとにはたくさんのどんぐりが落ちています。これを拾い集めたら、水洗いしてフライパンで炒れば、あらカンタン、木の実のデザートの出来上がり。

縄文時代の主食は、こうした木の実だったといわれています。シイだけでなく、アク抜きが必要なほかのどんぐりも食べられていました。縄文末期に稲作が伝来すると、弥生時代には全国的に稲作に切り替わった、と考えられてきましたが、たとえば北海道では寒くて(当時の)稲作は出来ず、摂取カロリーの多くがオットセイやイルカ、魚介類などの動物性のものだったことが発掘調査からわかっています。北海道以外でも、稲作伝来後も、シイ類などのどんぐり類も引き続き食べられていたようで、みんながいっぺんに同じものを食べるようになったわけではありませんでした。

もともとは、シイは照葉樹林を形成する樹種の一つでしたが、照葉樹林が里山に開梱されて、人里に近い木になりました。神社のご神木としてもよく見られ、なかには樹齢1000年を超えるというものもあります。シイノキとのおつきあいも、昔と同じまま、というわけには行かないかもしれませんが、たまにはそんな木の実を食べてみたり、その木がどんな歴史を刻んできたのか思いを馳せてみるのも、素敵な時間ですね。

    小 大
    ページ上へ