里山の色

黐の木(もちのき)

版画/たかだみつみ
2016年11月22日 火曜日

黐の木(もちのき)

「モチノキ」からは、その名のとおり「とりもち」がとれます。
前回「真弓(まゆみ)」で紹介したのに続き、モチノキもまた有用樹のひとつです。

とりもちは「鳥黐」と書き、鳥を捕まえるための黐(もち)です。「黐」は「餅」の語源になったという説もある、ようするにネバネバと粘着性がありくっつくものを指します。

けれど、この鳥黐も、鳥獣保護法によって規制され、鳥を捕獲するのには使えなくなりました。鳥黐、というジャンル自体が少なくとも鳥向けには絶滅状態です。ねずみ取りやゴキブリ取りなどには、やはり粘着させて捕まえる種類のものもありますが、これも化学合成品によるものです。とりもちとモチノキもまた、真弓と弓の関係のように、使われなくなった有用樹、といえるでしょう。

モチノキには赤く小さな実がなります。この実をめがけて野鳥がやってきます。木の実が赤などの目立つ色をしているのは、鳥を引き寄せるためです。まあこれも、ある意味、鳥黐といえるでしょうか…?

そうして、鳥に食べられた実は、どこか別の地で、ふんに混ざって排出されます。消化されずに残った種子が発芽し、植物のテリトリーが広がっていく、というわけです。

モチノキは庭木にもよく使われます。
モチノキを植えれば、その実を求めて野鳥がやってきます。野鳥は、モチノキの実を他所に運ぶと同時に、別の場所で食べた種子を、その場所に落としていきます。

つまり、モチノキ(などの野鳥が好む木の実の樹種)を植えると、庭に鳥がやってくる上に、鳥が運んできた新しい植物が増えるという楽しみがまっているわけですね。

庭は、図面に書いてあるとおりに停止した状態あるわけではなくて、いつも動いています。鳥や虫がやってきます。新しい植物も増えていきます。なんて楽しいんでしょう。
「使われなくなった有用樹」などと評価をしましたが、モノに満たされた私達の生活にとっては、むしろ、現代のモチノキのような役割こそが、生活の楽しさを増してくれるという面で、本当の有用樹、といっていいと思います。

    小 大
    ページ上へ