里山の色

女郎花(おみなえし)

版画/たかだみつみ
2016年09月07日 水曜日

女郎花(おみなえし)

「女郎花(オミナエシ)」は、草の名であり、色の名でもあります。

女郎花は、ちょうどこの版画が表している、明るい緑みがかった黄色の花を咲かせます。花だけでなく、つぼみや茎も黄色くなって、花の色であり茎の色でもある、不思議な色です。

蟷螂も同じ黄色や女郎花 阿波野青畝

女郎花、という色を知っていれば、はたしてこのカマキリが、どんな黄色だったのかも想像できます。詩歌・文学にも、草花・自然に根ざした表現は少なくありません。そういうものを楽しめる感覚は、元になった草木を知っていてこそです。

壺の花をみなめしよりほか知らず 安住敦

活けられた花のうち、女郎花だけを知っている、という句です。
(女郎花は、「オミナメシ」と呼ばれることもあります。名称の由来の一つに、黄色く小さな花の数々が、女性の食事とされた粟のようにみえるから、という説があります。オミナメシ、というのは、まさにそこから来た呼び名でしょう)
さすがのネームバリュー、というべきかもしれませんが、女郎花を知っている、という人も減っていくかもしれません。

女郎花は、前回の「葛」と並ぶ、秋の七草の一つです。けれど、葛ほど目にする機会が多くありません。
葛がその生命力で各地に群生しているのとは裏腹に、女郎花の生息地は開発で激減しています。東京ではすで絶滅、埼玉、新潟、徳島では絶滅危惧Ⅰ類に指定されています。
環境省のレッドデータには指定されておらず、全国規模では絶滅危惧に至っていませんが、準絶滅危惧種としているところもあります。楽観は出来ません。

女郎花の仲間で、男郎花(オトコエシ)という種があります。白い花を咲かせることから、男性用の白い飯に例えて名付けられた、という説があります。科はどちらもオミナエシ科ですから、分類としては「女」のほうが先にありき、ということになります。この男郎花は、女郎花ほどには生息域を追われていなくて、比較的見つけるのが容易です。
この男郎花と女郎花が交雑すると、黄色と白が混ざって咲く、男女郎花(オトコオミナエシ)と呼ばれる自然交雑種が生まれます。人間のジェンダーを当てはめて考えると、男と女が交わって男女が生まれるなどと、不可解な名づけ方ではありますが、これは、あくまで植物のこと。植物の名付け方に想像を巡らせるのも、「色」と同じく、大きな楽しみの一つです。

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