びおの珠玉記事

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旬のコラム
コンクリート

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2014年11月12日の過去記事より再掲載)

生コンクリート

生コン記念日

11月15日は、「生コンクリート記念日」だそうです。
建築・土木関係者なら「生コンクリート(生コン)」は馴染み深いものですが、一般的には「生コン」が、生でない「コンクリート」とどう違うのか、わからないかもしれません。

英語のコンクリート(concrete)は、材料としてのコンクリートの他に、「具体性」「具象性」といった名詞、「現実の」「具体的な」「明確な」という形容詞としても使われます。
語源は、ラテン語のcon(共に)とcrescere(育つ、成長する)を組み合わせたものです。
一般的なコンクリートは、セメントに水と砂などを加えて混ぜてつくられます。いろいろな材料が「共に」「育ち」、「具体性」を持つ、という、なかなか奥深いネーミングですね。

コンクリートの歴史は長く、そして近代までは現場で材料を混ぜ合わせて利用されてきました。現場でコンクリートを練るのはなかなか大変な作業で、工場で練り混ぜ、流動性をもったまま現場に出荷されるようになりました。これを「生コン」と呼び、1949年11月15日が、日本ではじめて工場から生コンが出荷された日なのだそうです。

戦後に生コンが作られるようになり、建築や社会インフラに多量のコンクリートが使われています。コンクリートのストックは国内で90億㎥といわれています。これは、日本の国土すべてを2cmのコンクリートで覆ってもまだ余る、という膨大な量です。

古代ローマのコンクリート建築

生コンとしては、まだ数十年の歴史ですが、コンクリートの概念は古く、古代ローマ帝国では、道路や港、水道設備、そして浴場や闘技場といった古代ローマを象徴するような建築物も、コンクリートがあったからこそ成立しました。古代ローマで用いられたコンクリートは、石灰と火山灰をまぜて作ったモルタルに、砂利などを混ぜたもので、現在のものとは配合は異なりますが、原理としては同様です。

現存するパンテオンは、西暦118年から128年にかけて建造されたものです。2000年近く前に、すでにコンクリートによる巨大建築が成立していたことに驚かされますが、2000年どころか、紀元前7000年、新石器時代に使われていたコンクリート系材料が出土しています。コンクリートは、決して新しい材料というわけではありません。

パンテオン

 

ところで、ローマはコンクリートによって栄えた反面、その維持管理が財政を逼迫するようになっていきます。建物やインフラは増えていきますが、年を経ればいつかは壊れます。結局、補修をあきらめて、コンスタンティノープルに遷都が行われます。

鉄筋がコンクリートの強さと弱点

コンクリートは腐食しませんが、その性質上、どうしても時間が経つと、内部に残された水分が影響して、ひび割れが生じることがあります。

コンクリートは圧縮に強いが引っ張りに弱い、という性質を持つため、その弱点を補うために鉄筋を内部に入れる鉄筋コンクリートが生まれました。この鉄筋が錆び、腐食してしまうと、引っ張り強度が弱くなり、破壊の原因となります。ひび割れから水分、塩分が侵入すると、コンクリートは健全であっても、内部の鉄筋がやられてしまい、そうすると想定していた強度は出ません。

他にもコンクリートの劣化・破損の原因はありますが、鉄筋の錆・腐食、というのが鉄筋コンクリートが持つ最大の悩みではないでしょうか。

こうやって書くと、コンクリートは問題のある材料に見えるかもしれませんが、そんなことはありません。適材適所という言葉があります。木造住宅であっても、基礎は鉄筋コンクリートで作ります。社会インフラはコンクリートなくてはなりたちません。

2000年前のコンクリートがあるんだから、長持ちするだろう、と思うのは大間違い。材料も違いますし、古代ローマのコンクリートには鉄筋が入っていません。

コンクリートの研究は今でも続いていて、耐久性が極めて高いものも登場してきています。将来はコンクリートの寿命はより長くなるかもしれません。しかし、今ある90億㎥(の中には、ほとんどの人の住まいにも使われているものも含みます)のコンクリートは、メンテナンスが必要である、ということです。

けれど、必ずしもコンクリートのメンテナンスは進んでいません。社会インフラにもコンクリートは多く使われていますが、どこも予算は限られていて、過去につくった多くのものを維持する力が弱くなっているのです。

そういった面では、古代ローマと似た状態が起こっています。コンクリートはメンテナンスフリーではない、という社会的な認識が必要です。

縁の下の力持ちにも目を向けて

コンクリートは、木造住宅では、その名の通り「縁の下の力持ち」です。
普段の生活で、基礎のコンクリートを意識することは、まずありません。
けれど、「基礎」という言葉が示すように、基となり、いしずえとなる部分でもあります。コンクリートは、配合、練り方、打設(詰め方)、打設後の養生などで、性能が変わってきます。

結局のところ、しっかりした施工を行うことと、メンテナンスが大切、という点では、他の材料となんらかわるところはありません。
一般的な住まいの点検項目には、基礎のひび割れの確認、という項目も含まれています。
雨に打たれ、日に照らされ、家の重量を支えています。時折、コンクリートのことも気にかけてあげてください。

参考書籍
コンクリートの文明誌
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小林 一輔 岩波書店 2004-10-28
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コンクリート崩壊 危機にどう備えるか (PHP新書)
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posted with ヨメレバ
溝渕 利明 PHP研究所 2013-07-14
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