びおの珠玉記事

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祝日ってなんだっけ?

※リニューアルする前の住まいマガジンびおから珠玉記事を再掲載しました。
(2014年04月30日の過去記事より再掲載)

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祝日がつづくゴールデンウィークに先立ち、2014年、「山の日」を新たな祝日にする祝日法の改正案が衆院で可決しました。8月11日が「山の日」として新たな祝日に。

日本の国民の祝日は、海の日をいれると年間16日となります。

現行の15日は、以下のとおり。ご存知の通り、ゴールデンウィークと呼ばれる、4月末から5月初旬にかけて、4日の祝日が集まっています。

元日 1月1日 年のはじめを祝う。
成人の日 1月の第2月曜日 おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます。
建国記念の日 政令で定める日 建国をしのび、国を愛する心を養う。
春分の日 春分日 自然をたたえ、生物をいつくしむ。
昭和の日 4月29日 激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす。
憲法記念日 5月3日 日本国憲法の施行を記念し、国の成長を期する。
みどりの日 5月4日 自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ。
こどもの日 5月5日 こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する。
海の日 7月の第3月曜日 海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う。
敬老の日 9月の第3月曜日 多年にわたり社会につくしてきた老人を敬愛し、長寿を祝う。
秋分の日 秋分日 祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ。
体育の日 10月の第2月曜日 スポーツにしたしみ、健康な心身をつちかう。
文化の日 11月3日 自由と平和を愛し、文化をすすめる。
勤労感謝の日 11月23日 勤労をたっとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう。
天皇誕生日 12月23日 天皇の誕生日を祝う。

日本人は働き過ぎ、などといわれますが、国民の祝日が15日もある国はざらにはありません。
祝日が休みではない人もいますし、長期休暇などの違いもありますから、休日として単純に比較するのは難しそうですが、むしろその祝日の中身に注目してみましょう。

アメリカ合衆国の祝日
新年
キング牧師記念日
大統領の日
戦没将兵記念日
独立記念日
労働祭
コロンブス・デー
在郷軍人デー
感謝祭
クリスマス
スペインの祝日
新年
聖金曜日
復活祭
メーデー
聖母昇天祭
国家祝日
万霊節
憲法記念日
聖母受胎祭
クリスマス
アルゼンチンの祝日
新年
聖金曜日
メーデー
革命記念日
マルビナス諸島記念日
国旗の日
独立記念日
ホセ・デ・サン=マルティン将軍の日
民族の日
聖母受胎日
クリスマス
アラブ首長国連邦の祝日
新年
犠牲祭
イスラム暦新年
モハメッド生誕祭
モハメッド昇天祭
ラマダン開始
ラマダン明け
連邦結成記念日
イスラエルの祝日
過ぎ越しの祭
独立記念日
七週祭
ユダヤ新年
職罪の日
仮庵祭
律法の感謝祭

いくつかの国を見て、日本と比べると気がつくことがありませんか?

祝日の由来

ほとんどの国の祝日は、建国の由来や宗教に基づくものばかりです。
上にあげた例でも、あえて違うものをあげればメーデーぐらいでしょうか。

そういう視点で、日本の祝日をもう一度見てみてください。
祝日法では、その祝日の意義も定められていますが、その中身をみた限りでは、建国・宗教に由来しそうなものは、建国記念の日、昭和の日、憲法記念日、天皇誕生日、ぐらいのように見えます。

でも、ほんとうのところはどうでしょうか。

祝日のもとをたどると、まだもう少し、建国や宗教に由来したものが出てきます。

春分の日
「自然をたたえ、生物をいつくしむ」とされているこの日は、元々、歴代の天皇・皇后・皇親の霊を祭る皇霊祭が行われていた日で、祝日ではなく祭日でした。「祝祭日」という言い方があるように、かつては「祭日」も存在していました(現在は祝日だけです)。
秋分の日は「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ」という点で、もともとの祭日の要素が少し残っているようにも見えます。こちらも春分の日と同じように、秋季の皇霊祭の日でした。
海の日
現在はハッピーマンデーで7月第三月曜日とされている海の日は、もともとは7月20日で、この日は明治天皇が巡航から帰港した日にちなんだものでした。
文化の日
11月3日は日本国憲法が公布された日であり、それをもとに文化の日とされた、ということになっています。ただ、この日はもともと、明治天皇の誕生日(天長節・のちに明治節)としての祝日でした。
勤労感謝の日
「勤労をたっとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」この日は、新嘗祭の祭日でした。新嘗祭は、五穀豊穣に感謝する収穫の祭りです。勤労感謝の日の目的も、この意味を多分に含んだものといえます。

どうしてこうなった

諸外国をみるかぎり、本来国の成り立ちを祝うための祝日が、どうしてこういうややこしいことになっているのでしょうか。
日本は敗戦後、アメリカの占領下でさまざまな施策をとることになりました。このときの政教分離は、いまもなお論争がつづく問題を抱えていますが、その方針によって国家神道の祭日は別の顔を持つことになりました。
憲法公布日の11月3日が憲法記念日にならなかったのは、明治節に憲法記念日をあわせることにGHQが強く反対したため、といわれています。

一方で、新し目の祝日には、またこれとは違うお国事情が盛り込まれています。「山の日」は、その日自体に歴史的背景を持っていません。
5月4日の「みどりの日」も、もともとは4月29日の昭和の日につけられていた名前でしたが、ゴールデンウィークの連休をふやしてしまおう、とつくられた、なんちゃって祝日です。
成人の日や敬老の日も、歴史的にはそれほど古くありません。体育の日は、もともとは東京オリンピックの開会式の日があてられていました。2020年のオリンピックに備えて、また祝日が出来たりするのでしょうか。

さらに、これらの祝日は、ハッピーマンデーという制度で日付も固定されず、祝日の意義よりも、「余暇を過ごしてもらおう」≒「連休をやるから遠出して金を使え」という観点も気になります。

日本ではなかなか長期休暇がとりづらく、お上が休日を設定しなければ休めるものも休めない、のかもしれませんが、それで祝日乱発も、どうかと思うのです。

かつての国家観、宗教観に異を唱える人もいれば、それを盛り立てたいと考える人もいます。どの国でも、意見は一様ではないのでしょう。もともとキリスト教国ではなかったところにキリスト教が入っていって、クリスマスや聖母受胎日などが祝日になっているところもあります。同じ国でも、州ごとに宗教由来の祝日が違ったりする場合もあります。
そういえば、「日曜日」だって、言ってみれば特定宗教による祭日ですよね。このぐらいオーソライズされていないと、日本人は「休み」と捉えないのかもしれません。

たとえば、静岡県では、2月23日を富士山の日(223がフジサン、という駄洒落ですが)として、県立の機関や学校などは休みになる一方で、市町の公立学校などは休みになっていません。県は市町に要請を出していますが、聞き入れない自治体もあります。全国的にお上がさだめなければ、休日分散化も難しいのでしょうか。
そういえば、富士山は、世界文化遺産には「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」として登録されていますから、これもやっぱり、宗教的背景を持つ祝日のひとつ、と解釈してもいいんでしょうか(駄洒落ですが)。
あえていうなら、「山の日」も、山岳信仰と言えなくもないのでしょうけれど。

とかく、祝日は多い少ないやら、労使間の考えの違いやらばかりが報道されて、ゴールデンウイークとなると、空港やら駅やらのラッシュ報道や、どこへも行けません、仕事です、なんていう恨み節がテレビに映ります。
ともあれゴールデンウィークも休むばかりじゃなくて、祝ってみようよ、せっかくの祝日!