色、いろいろ。

時雨

版画/たかだみつみ 文/小池一三
2011年10月24日 月曜日
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時雨 版画

秋になると、日本海上で発生した対流雲が次々と日本海沿岸にやってきます。
そうすると時雨が降り、雲が去ると、また晴れます。
日本海岸気候と太平洋側気候の境界に位置する場所、たとえば京都だとか、善光寺のある長野、高山、会津あたりでも、風とともに時雨がやってきます。
そのほかのところでは、季節を問わず時雨のような一時的に降る雨を通り雨と呼びます。仙台に嫁いだ娘から聞いた話では、仙台では、はこびあめ(運び雨)と呼ぶそうですが・・・。
時雨は、冬の訪れでもあって、俳句では冬の季語になっています。
時雨といえば、放浪の俳人・種田山頭火のあの句が頭に浮かびます。

うしろすがたのしぐれてゆくか

後姿は、自分では見えません。もう一人の自分が、それを見ているのでしょう。
この句の前に(自嘲)と文字が振られていますが、見えない後姿を見ている自分を表す言葉なのですね。同じ山頭火の句、

しぐるるやしぐるる山へ歩み入る

しぐるるや死なないでゐる

「しぐる」という動詞は、比喩的に涙を流すことを意味します。
山頭火は、山口県防府の人です。11歳のときに母親が自殺し、家業は破産し、弟と父親も自殺し、散々な生活苦を強いられ、熊本で寺男になります。大正15年(1926年)に寺を出て、雲水姿で西日本を中心に旅をしながら句作を行ないました。
自由律俳句の代表として、尾崎放哉と並び称されますが、二人共酒癖が悪く、身を持ち崩したところは似ています。これは前に書いたことですが、わたしは放哉のことを知りたくて、仕事のついでに、放哉が墓守をしていた小豆島のお寺を訪ねたことがあります。その寺に山頭火が訪ねていました。放哉は動かず、山頭火は動き回る人だという印象を持ちました。

春しぐれやみたる傘を手に手かな

こちらは、久保田万太郎の句で、しかも初冬の時雨ではなく、木の芽の萌え出す時期の春時雨を詠んだ句です。山頭火の句と比べると陰気なところがなく、華やいだ気分を満喫できる句です。傘を手に手に、春の雨上がりを行く人を詠んでいます。二人の俳人の生き方の違いと言うには、隔たりが大き過ぎます。

時雨を詠んだ子規の句を紹介しておきます。

牛つんで渡る小船や夕しくれ

しぐるゝや腰湯ぬるみて雁の声

しぐるゝや蒟蒻冷えて臍の上

鶏頭の黒きにそそぐ時雨かな

 

 

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  1. たかさんさんからのコメント

    2011/10/25(火)08:25

    種田山頭火のこと、ご紹介いただきありがとうございます。
    山口県防府市へ「移り住み」早11年。
    ここの地名はなかなか、ちゃんと読んで貰えません(「ほうふ」と読むんですが…笑)。
    市内のあちらこちらで種田山頭火に因んだ石碑や立ち寄ったとされる旧跡などが見られます。
    山頭火は、とても自由奔放に生きながらも「自然と自分」というものを静かに見つめていたのではないか、とおもいます。

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